品性という言葉を知らない(第88話)連載小説
SNS社会の生々しさや、主人公の人格のゆがみに迫る現代サスペンス
栗山杏奈は歯科クリニックで働くいわゆるキラキラ女子を演じているが
実は夜職の顔がある
―――さらには2つのSNSで使い分ける顔
恋愛・友達・仕事・家族―――
友達は自分のSNSをいかに彩ってくれるか
男は自分の日常をいかに華やかに楽しませてくれるか
既婚者や彼女持ちの複数の男たちとの関係
杏奈はそういう関係こそが、自分にとって都合のいいものだと思っていた
――しかし
杏奈自身うまくいっていると思っていた
仕事も、人間関係も、男との関係も、
「上から見下ろしていた」はずの世界が少しずつ狂い始めていったある日
2つのSNSで使い分ける顔が少しずつ明るみに出ていく――――
杏奈はInstagramを開く。
「そうだ!お返事返そうかな」
まるで、さっきまでのAIとのやり取りや、
思ったような答えが返ってこなかったことへのイライラを、
別のことでかき消すかのように。
トーク履歴の中から『瑞鳳』をタップする。
『セレブな誕生日過ごしてたね!
ぜひ瑞鳳もご利用ください!笑』
杏奈は画面を見つめながら、ぷっ!と吹き出した。
「匠さんって全然ガツガツ来ないんだよねぇ」
今までの男なら、
もっと分かりやすく自分に食いついてくる。
ご飯に誘ったり、
プレゼントを贈ったり、
体に触れてきたり、
好きだと言ってきたり。
でも匠は、そういうことをしない。
「まぁ……だからこそ、こっちも気になるんだけど
今までにいないんだよね…ああゆう人。
それが育ちの良さとか?
だって、あの有名老舗旅館の三代目だもんなぁ。」
杏奈は少し考えた。
「うーーん……なんて返そう…」
少し考えてから、文字を打つ。
『ぜひ利用したいです!誕生日プレゼントは随時受付してます!笑』
送信。
「匠さんなんて返してくるかな。ふふ」
杏奈はスマートフォンを眺めながら、返事を待った。
すぐに匠から返信がきた。
『さすがだね!杏奈ちゃん、俺の予想どおり!笑
こないだ話した社員旅行って行けそう?』
「そうだ。匠さんの社員旅行に一緒に行かないかって言われたんだった。」
杏奈はその時のことを思い出していた。
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