品性という言葉を知らない(第103話)連載小説
SNS社会の生々しさや、
主人公の人格のゆがみに迫る現代サスペンス
栗山杏奈は歯科クリニックで働く
いわゆるキラキラ女子を演じているが
実は夜職の顔がある
―――さらには2つのSNSで使い分ける顔
恋愛・友達・仕事・家族―――
友達は自分のSNSをいかに彩ってくれるか
男は自分の日常をいかに華やかに楽しませてくれるか
既婚者や彼女持ちの複数の男たちとの関係
杏奈はそういう関係こそが、
自分にとって都合のいいものだと思っていた
――すべて
杏奈自身うまくいっていると思っていた
仕事も、人間関係も、男との関係も、
「上から見下ろしていた」はずの世界が
少しずつ狂い始めていったある日
2つのSNSで使い分ける顔が
少しずつ明るみに出ていく――――
クレール山手デンタル 書庫
杏奈はスマートフォンを凝視している。
「ねぇ、絶対におかしいと思う!」
そうつぶやいた視線の先には
転職サイトから届いたメールがあった。
「もうさ、また書類で通らないって、どうゆうこと?
このサイトって偽サイトか何か?
だってさ、職務経歴書にはガールズバーのこと、書いてないよ?
ちゃんと歯医者で週4バイトですって書いてるし。
…まぁ、今は週3だけど…
こないだまで週4だったんだからいいでしょ!
こないだまでは、広報とかマーケティングがダメだったから、
職種変えたのに?それでもダメなの?
秘書とか営業企画ってさ、会社の中枢みたいなもんでしょ?
そこに私みたいに閃きとか、
夜職で磨いた愛嬌とか活用できるんですよって話。
てかさ、私のよさって絶対会わないと分かんないと思うんだよね。
書類選考ないとこ、ないのかなー。」
一向に転職活動が進まず、
これまでに応募した28社すべてが書類選考で不合格なのだ。
杏奈はデスクに突っ伏した。
「あーーー、しんどすぎ!」
手にしていたスマートフォンでXを開く。
『最近ついてないことばかりだ。
買取り査定ではビミョーな金額だし( ̄ー ̄)
まぁ貢ぎ物だからいいけどさ!キャリアアップのための転職活動も苦戦してるしな。日本って厳しい。女性のキャリアアップにまだまだ理解ないのが現状か…でもがんばる』
投稿。
スマートフォンに1件の通知がついた。
クレジットカードの次月請求金額のお知らせだ。
「あ!そっかー!
そこ、気付かなかったわー!私としたことが!
めちゃくちゃ頭いいかも!」
そう言うと、杏奈はクレジットカードのアプリを開く。
『キャッシング利用可能額』をタップする。
そこに表示された金額は
――― 30万円
「え!マジ?
やった!ベガス行けるじゃん!」
アプリを閉じて、Xを開く。
『さっきの訂正~~!まじ恵まれすぎてる人生でビビる!
今はキャリアアップ前に息抜きの時( ˘ω˘ )
ラグジュアリーな海外旅行でモチベあげてこ!!
刺激たくさん受けて、帰ってきたらベガスパワーで
転職もうまくいきそ!!そうだ!絶対そう!』
投稿。
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