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品性という言葉を知らない(第108話)連載小説

SNS社会の生々しさや、
主人公の人格のゆがみに迫る現代サスペンス


栗山杏奈は歯科クリニックで働く
いわゆるキラキラ女子を演じているが
実は夜職の顔がある

―――さらには2つのSNSで使い分ける顔
恋愛・友達・仕事・家族―――

友達は自分のSNSをいかに彩ってくれるか
男は自分の日常をいかに華やかに楽しませてくれるか

既婚者や彼女持ちの複数の男たちとの関係
杏奈はそういう関係こそが、
自分にとって都合のいいものだと思っていた

――すべて
杏奈自身うまくいっていると思っていた

仕事も、人間関係も、男との関係も、
「上から見下ろしていた」はずの世界が
少しずつ狂い始めていったある日

2つのSNSで使い分ける顔が
少しずつ明るみに出ていく――――


クレール山手デンタル 面談室

扉をノックすると、
中から「はい。どうぞ。」と声がする。

扉を開けると、高坂課長が座っていた。

「どうぞ。お掛けください。
今日は、お話したいことがあるとのことですが、
どのようなことでしょうか。」

そう言うと、少し離れた席で山根副院長が
パソコンでカタカタと何かを入力している。

『はいはい、私と話したこと、記録として残してるんですよね?
パワハラ冤罪がここまで続くと、もう逆パワハラかって思うよ?』

杏奈は、そんなことを考えていた。

「失礼します。
高坂課長、今日はお時間ありがとうございます。」

「いえ。」

「あの…来月の勤務で連休をいただきたいのですが…」

一瞬、高坂課長が眉間にしわを寄せ、唇をギュッとかんだのが見えた。

『あーぁ!おばさんっ!辞めると言うとでも思った?』
そんなことを考えながら、杏奈は口元がゆるむのを感じた。

高坂はパソコンを開いて目を落とす。

「もちろん、お休みを取るのは問題ありません。
ただ、栗山さんはもう有給休暇がありませんので、
欠勤扱いになりますが、いいですか?」

「はい。大丈夫です。」

「分かりました。お話は以上ですか?」

「はい。」

「では、勤務に戻ってください。

それと、現在の書庫での整理業務で
何か困っていることなどありませんか?」

「いえ。特にありません。」

「分かりました。」

「では、失礼します。
お時間ありがとうございました。」

そう言って杏奈は立ち上がり、面談室を後にした。
面談室から書庫に戻る間には、受付を通る。

杏奈が通るのを琴美とゆいがニヤリと見た。
2人で喋っていたのが、杏奈が通ると声が止んだ。

「お疲れ様です!」
あえて2人のほうを見て、大きな声で話し掛けた。

琴美とゆいは、まっすぐに前を見たまま、
杏奈のほうを見ることなく
「お疲れ様です。」と無機質に返した。

杏奈が立ち去った後にまた話し声が聞こえてくる。

「すごいよね…あれ、見た?」

「あはは!シャンパンの?はは!」

「しーっ!さすがにシャンパンは、バレるって!」

クスクスと笑う声が聞こえてくる。

書庫に戻った杏奈。

「はぁぁー!腹立つわーあいつら!
課長、私が辞めるって言うと思ってたよね、絶対!
あの時の表情まじムカついた!
ブスに拍車かかってたからね!

琴美とゆいも何なの?
てか、まだ人のInstagram見てるんだ?
暇なの?私のことどんだけ気になるの?
単なる嫉妬でしょ!
はい出ましたー!ブスの嫉妬!

てかさ、そもそもあいつらのせいで
仕事全然楽しくないんだけど!
あーー!腹立ってきた!

根に持つよ!」

そう言うとスマートフォンを手に取る。
Xを開いて文字を打ち込む。

『パワハラ疑惑をかけられてからというもの、理不尽な扱いを受けている。上司に“お時間いいですか?”って言ったんだけど、退職するって言うと思ってたわ。“連休申請”って言った時のあいつの顔見逃さなかったから~~ブスに拍車かかってたけど?根に持つよ?』

『弊社は女性同士の嫉妬・妬みが蠢きすぎており、正当な評価を受けることが出来ない。だいたい、人の暮らしにイチャモンつけて、SNS見てくるとかおかしいんだが?どんだけ自信ないわけ?選ばれし者になりたいなら、お前たちも自分を磨けって話!ブスのひがみ大嫌い~~~』

投稿。




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