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Photo bykago_fishing

海

    10年以上前、中東和平プロジェクトのガイドをした。
    パレスチナとイスラエルの子供を日本に招待して友達として一緒に過ごすプログラム。

    両国から子供が5人と付き添いの大人が1人ずつ。
    毎年、続いているプログラムだそうだ。知り合いのはずなのに、久しぶりの子供たちは、来日当初は打ち解けない。

    付き添いのイスラエル人女性アリエラと気が合った。
    「大人になってから友情を築くのは難しい。だから子供の内に友達になる。友達と戦いたいとは思わないでしょう?」

    パレスチナから付き添いの男性は大学講堂で日本の聴衆に向けて話した。

    「復讐を繰り返すのは負の連鎖。私たちは、どんなに辛くてもその鎖を断ち切らなければならないのだ」

    それは彼自身の話だった。

    子供たちがホームステイ中、付き添いの二人と過ごした。

    パレスチナ人の男性は海を見たいと言った。
    お台場に行った。東京で砂浜がある場所だから。
    砂浜に座り海を眺める彼の背中を見て、アリエラが言う。

    「パレスチナでは海に行けないから、彼にとっては特別なのよ」

    それは、地理の話ではない。
    政治の話だった。
    彼はずっと一人で海を見続けた。

    一年後、イスラエルを訪れた。
    アリエラはBFの家に行くからと言って、アパートを明け渡してくれた。
    そのアパートがあるテルアビブは白い砂浜と青い海が有名な場所だ。

    あの子どもたちは今、何を思っているのだろう。

    レインボーブリッジからお台場の砂浜が見えると、海を見続けていた彼の背中を思い出す。

    あの数日間が、それぞれの心に残っていると信じたい。


    この連載「通訳ガイド奮闘記」の他の話はこちら
    前の話:16人のきつね丼|Maya
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    Maya

     
     
    通訳ガイド・裏千家準教授 趣味:旅行(80ヵ国)、茶道、仕舞、居合、刀剣鑑賞、仮名書道、読書、スキーなど。 Luxury Travel Curatorとして、旅行を解釈と編集の視点から再定義しています。

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