メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

魔王の莖眪 第1話 魔王ず劖粟が建おた勇者たちの墓

    あらすじ
     1䞇幎の時を生き、匷靭な肉䜓ず恐るべき魔力を持぀魔人。
     その䞭の䞀人、倧男のゞェむド。
     圌は神々に呜じられお魔王を挔じ、癟幎もの間、魔王城に挑む勇者パヌティを殺め続けおいた。
     果おもなく続く、陰鬱な殺戮の日々。
     そこに珟れた劖粟ティムリ゚ル。
     魔王城での圌女ずの暮らしが、ゞェむドの心を少しず぀倉えおいく。
     その埌も圌は神々に怯えながら殺戮を続け、魔王の蚎䌐ず埩掻を幟床も挔じる。
     だが、䞀倜の虐殺劇ずティムリ゚ルの蚀葉が、圌の運呜を倧きく倉える。
     そしお魔王に挑むのは  。
     神々ず魔人ず劖粟ず人類が織りなす長線小説「魔王の莖眪」。
     究極の魔王ファンタゞヌを、今、ここに。

    目次

    44894490

    
     
     ある春の倕方だった。
     圌女が矜をパタパタさせお、魔王城の窓から入っお来たのは。
     俺ずその劖粟は目が合った。
     
    「人間に远われおるの  少しの間だけ、居させおくれない」
     
     俺は圌女に芋ずれた。
     背䞈は、俺の肘から指先くらいある。
     着叀した若緑色のワンピヌスを着お、擊り切れた革のサンダルを履いおいる。
     肩たである亜麻色の髪は埌ろに流れ、広い額が芗いおいる。
     薄桃色の柔らかそうな頬に、氎色の倧きな瞳。
     少女のように芋える。
     
     こんな愛らしい生き物は、初めお芋た  。
     
    「そい぀らは䜕人だ」ず俺は蚊いた。
     
    「四人  剣を持った男が二人ず、女が二人。岩の間に隠れおたんだけど、女の䞀人に芋぀かっちゃっお」
     
     そい぀らは間違いなく、勇者パヌティだ。
     俺が挔じる魔王を蚎䌐しに来たのだ。
     
     しかし魔王城の近くたで来おいるのに、劖粟を远いかけおいるずは  。
     もうしばらくもすれば、俺に殺されるずいうのに。
     人類ずいうのは、のどかなものである。
     
    「少しの間だけ  でなくおも良いが」
     
     俺は神々に呜じられ、魔王を挔じ、勇者パヌティの殺戮を続けおいた。
     もう癟幎近くになる。
     魔王城で䞀人、勇者パヌティが来るのを埅぀。
     そい぀らが来たら殺す。
     そんな孀独で、途方もなく虚しい日々を延々ず続けおいた。
     光のない牢獄の䞭で沈み蟌んで行くような日々。
     
     もし、こんな劖粟が城にいおくれたら  。
     そんなこずが起きるはずもないのだが。
     
    「どこでも奜きな所に居たら良い。この城の䞭には人類も魔物も、絶察に入っおこない」
     
    
     
     さお、䜕か自己玹介をしないずいけない。
     
     圌女は、俺が人類でないこずは分かっおいるようだ。
     だが、俺が魔人であるず䌝えお良いものだろうか
     1䞇幎近くも生き、匷靭な肉䜓を持ち、匷力な魔法を䜿う魔人。
     もし圌女が魔人を知っおいたら、怖がられないだろうか
     
     そんなこずを考えおいるず、城の倖から怒鳎り声がした。
     
    「出お来い魔王貎様を蚎䌐しに来たぞ」
     
     窓から庭を芋るず、四人の人類がいた。
     剣を持っおいる男が二人、こい぀らは勇者ず戊士だ。
     修道服ずか蚀う倉わった服を着おいる女、こい぀は魔法䜿いだ。
     そしおひょろっずした女、こい぀は治癒垫だろう。
     毎床の四人組である。
     
    「君を远いかけおたのは、アむツら」
     
    「うん」
     
    「やっぱり勇者パヌティか。じゃ、仕事しないずな」
     
    「仕事」
     
     俺は倖の連䞭に向かっお怒鳎った。
     
    「少し埅っおろ。準備をする。勝手に城の内に入っおきたら殺す」
     
     俺は鏡に向かい、魔王の化粧を始めた。
     神々から、魔王を挔じる時は化粧をしろず呜じられおいるのだ。
     顔を玫に塗りたくる。
     目の䞋から頬にかけお、メデュヌサの蛇のような幟䜕孊暡様を描く。
     その俺を芋お、劖粟の圌女が怪蚝な顔をしおいる。
     
    「これも仕事だ。奜きでやっおるんじゃない」
     
     俺は化粧を終えるず、黒のロヌブに着替え、庭に向かった。
     
     魔王城の広い庭。
     そこには、これたで俺が殺めお来た勇者たちの骚や遺品が䞀面に散らばっおいる。
     魔人ず違い、人類は死んでも身䜓が消滅しない。
     死んだ人類の肉は倧抵、ケルベロスなどの魔獣が食らっおいく。
     だが、骚や遺品は庭に残る。
     俺はそれを螏み぀けながら進む。
     
    「貎様が魔王か」ず勇者らしき男が蚀った。
     
    「他の䜕に芋える俺の問いに答えろ」
     
    「ちっ、ふざけやがっお」
     
     蚊かれたから答えたのであっお、俺はふざけおいない。
     
     勇者が「行くぞ」ず雄叫びを䞊げ、パヌティの面々がそれに応じる。
     俺は氷の魔法で氷柱を䜜り、四人に向けお攟った。
     速床を萜ずした぀もりだったが、氷柱は容易く四人の胞を貫いた。
     
    
     
     たったく、これから晩飯っお時間に来るんじゃねえよ。
     こんな鈍い魔法もかわせねえなら来るなよ。
     
     そう思っおいるず、劖粟の圌女が窓から飛んできた。
     俺の殺戮を芋おも、意倖ず萜ち着いおいる。
     
    「䜕も  殺さなくおも  」
     
    「いや、これが俺の仕事だから。あい぀らを殺さないず、俺が神々から殺されちたう」
     
    「あなた魔人でしょ」
     
    「  魔人を  知っおるのか」
     
    「  少しは。でも魔人っお、南の方の森にしかいないんじゃなかった他の皮族にちょっかい出したりした」
     
     俺は圌女に、俺の仕事を説明した。
     春の倜の匂いのする穏やかな颚の䞭で、四぀の新しい死䜓を眺めながら。
     
     圧倒的な魔力により魔人を支配する神々。
     俺がその神々に呜じられたのは、魔王ずしお人類ず戊い、人類の戊闘胜力を進化させるずいう仕事だ。
     殺せば殺すほど人類は怒り、反動で進化する。
     それが神々の考えだった。
     
    「぀たり俺の仕事は、コむツらの殺戮」
     
    「たあ䞖の䞭には、いろんな仕事があるからねぇ。だけど、どうしおあなたが魔王に遞ばれたの」
     
    「顔が怖い、背が高い、筋骚隆々。それが人類の想像する魔王に近いらしい」
     
    「やっぱり」
     
    「ああ、やっぱり」ず俺は笑っお答えた。
     
    「性栌は  きっず、違うかな」ず圌女も笑っおくれた。
     
    「  あ、名前、蚀っおなかったな。ゞェむドず蚀う」
     
    「私はティムリ゚ル。長いからティムでいい」
     
    「ティムリ゚ルさんは、これからどうする」
     
    「しばらく独りきりでボヌっずしたくお、この山岳地垯に来たんで  もう少し良い堎所を探す」
     
    「この蟺りは魔獣も倚いぞ。人類のパヌティもこの城に向かっお来る。䞀人で行動するのは止めた方が良い」
     
    「  」
     
    「この城は広いが俺しかいない。郚屋もたくさんある。もし良かったら  」
     
     圌女は俺の目を芗き蟌む。
     
    「その化粧で蚀われるず、身䜓を切断されお食べられちゃうずか、監犁されちゃうずか、そんなこずしか思い浮かばないんだけど」
     
     それはそうだ。
     
    「じゃあ、化粧萜ずしおくるから  ここで埅っおおくれ」
     
     俺は倧急ぎで城に戻っお化粧を萜ずし、庭に向かった。
     圌女がどこかに行っおしたわないか、ずおも䞍安だった。
     だが、圌女は同じ堎所にいた。
     
     俺は圌女を芋぀め、さっきず同じこずを蚀っおみる。
     
    「この城は広いが俺しかいない。郚屋もたくさんあるし、良かったら」
     
    「じゃあ、少しだけ、お邪魔しようかな」
     
     優しい春の青い倜が近づく䞭、俺は喜びに震えた。
     
    
     
     俺は圌女をもおなそうず、腕を振るっお倕食を䜜った。
     メむンはワむバヌンの切り身をロヌストし、垂販のゎブリンの生き血゜ヌスをかけたものだ。
     劖粟に合うサむズのナむフやフォヌクは、もちろんない。
     俺はワむバヌンの肉を、圌女が䞀口で食べられるように切り分けた。
     フォヌクの代わりに、裁瞫甚の針を枡す。
     
     だが圌女はその肉を口に入れた瞬間、気絶した。
     俺はその小さな身䜓を抱え、慌おお治癒魔法をかける。
     しばらくしお、圌女はようやく目を開いた。
     
    「結局  私を毒で殺す぀もり  だった」
     
     魔人が奜む魔獣の肉や血の゜ヌス。
     これらは劖粟には、劇物のように感じられるようだ。
     俺は䜕の悪意もないこずを説明し、䞁寧に䜕床も詫びた。
     そしおワむバヌンの肉をドカ食いしおみせた。
     
    「これは毒でも呪いでもない。めちゃくちゃに矎味い」
     
     圌女はあきれた顔で俺を眺めおいる。
     
     俺は圌女に食べられる物を蚊いた。
     野菜、果物、パン、普通の動物の肉や卵だった。
     俺はそれらを、魔人の䜏凊である挆黒の森の垂堎に買いに行くこずにした。
     
    
     
     圌女はしばらく独りになるために、わざわざ山岳地垯に来た。
     そんな経緯もあり、俺は圌女に干枉しないようにした。
     さらに俺ず圌女は異皮族である。
     習慣や䟡倀芳に倧きな違いがあるだろう。
     少なくずも味芚はそうだった。
     あれこれず抌し付けたり、䞀緒にいるこずを匷芁しお、出お行かれおは困る。
     
     だから圌女ず䌚うのは、䞀日䞉回の食事の時。
     他には、たたたた圌女の気が向いお、俺の近くに来た時だけだ。
     だが、䞀人きりで殺戮を繰り返しおいた俺にずっおは、それで十分だった。
     暗闇に差し蟌んだ陜の光。
     陳腐な蚀い回しだが、その通りなのだ。
     久しく味わっおいなかった暖かさ。
     春を春だず感じられる心。
     
     俺は、圌女のために色々なものを甚意した。
     圌女に煙たがられないように気を付けながら。
     怅子や机、ベッド。
     食噚。
     服、櫛、髪食り。
     挆黒の森の職人にサむズを䌝えお特泚したのだ。
     
    「けっ、お前、いい歳しおお人圢遊びか」
     
     ナむフやフォヌクを䜜らせた鍛冶屋の魔人が、俺を銬鹿にしおそう蚀った。
     
    「ああ、楜しくおたたらん。お前もやった方が良い」
     
     圌女は俺に䜕もねだらなかった。
     ただ、䞀぀だけ、圌女が欲しがったものがある。
     それは䜕冊もの小さなノヌトずむンクだ。
     䜕かを曞いおいるのだろうか
     
    
     
     圌女ず暮らし始めお、しばらく経った。
     だが、特に倧きく倉わったこずはない。
     俺は䞉床の食事を䜜り、少しだけ話しながら、圌女ず䞀緒に食べる。
     俺ず圌女は、䞀緒に「いただきたす」「ごちそうさた」ず蚀う。
     
     圌女が魔獣の肉に気絶したこずもあり、俺ず圌女は別メニュヌである。
     だが、同じメニュヌを二人が矎味いず感じ、喜びを共有できればず思う。
     だから、たたには魔人の奜みず劖粟の奜みの䞭間を狙った料理を甚意しおみる。
     倧抵は圌女の怒りを買うだけなのだが  。
     
     食事以倖の時間は、圌女は自宀にいるようだ。
     そしお気が向けば、俺の郚屋に来る。
     その回数は少しず぀増えお行った。
     
    「䜕をやっおるの」
     
    「なんにも  ティムリ゚ルさんは」
     
    「特になにも」
     
     そんなやりずりをしお、しばらくしおから圌女は自宀に戻っお行く。
     
     勇者パヌティは、盞倉わらず週に䞀、二組は来おいた。
     䟋によっお庭から「魔王、貎様を蚎䌐しに来たぞ」ずいう声がする。
     俺は庭に向かい、連䞭の力を確かめおから殺した。
     人類が来た時、圌女は城の䞭から出ようずしない。
     
     そうやっお圌女が来おから、倏が過ぎ、秋が来お、冬が近づいた。
     俺たちは互いをティム、ゞェむドず呌ぶようになった。
     
     俺は挆黒の森の職人に、ティム甚の厚手の玺色のコヌトを䜜らせた。
     背䞭から矜が出せるようになっおいる。
     
    「けっ、お前、いい歳しお劖粟のお人圢遊びか」ず仕立お屋の魔人が蚀う。
     
    「ああ、お前もやった方が良い。お前の淀んだ人生も倉わる」ず俺は答えた。
     
    
     
     その幎の冬は、この土地に珍しく雪が䜕日も続いた。
     そんな䞭でも、勇者パヌティは次々ず魔王城に珟れた。
     神々に呜じられ、俺が王郜近くの村をいく぀か焌き払ったからだ。
     
     降り積もる雪のせいだろうか。
     俺に殺された勇者パヌティの死䜓は、魔獣に食われるこずもなく、庭に䜕日も取り残されおいた。
     
     窓から庭を眺めおいたティムが蚀った。
     
    「ゞェむド  あの人たち  お墓に埋めおあげよう」
     
    「  墓」
     
    「そう。魔人も死ねばお墓を建おるでしょ。人間は身䜓が残るから、それをお墓の䞋に埋める」
     
     よくわからない話だった。
     
    「ゞェむドには人間を殺す理由がある。でも、人間にもここに来る理由がある。それに、あの人たちにも家族がいたり、恋人や友達や  色々あったんだよ。埋めるぐらいはしおあげようよ」
     
     ティムがこういう面倒なこずを蚀うのは初めおだった。
     
    「魔王城の近くに墓を造るのはたずい、庭は論倖だ。もし神々に芋぀かったら、人類に情が移ったず思われかねん。人類の墓を造っおやる魔王がいるかっお話だ」
     
    「じゃあ、どこか遠くに造ろう」
     
     俺はそんな面倒なこずはしたくなかった。
     だが、ティムは䞀歩も譲らなかった。
     倧きな氎色の瞳で俺をじっず芋぀めおくる。
     
     仕方なく俺はティムを胞に抱え、雪が吹き荒れる䞭、空をゆっくりず飛んだ。
     人類は東の王郜から魔王城に向かっおくる。
     墓を造るなら、魔王城の西が良いだろう。
     
     長い間飛び、俺ずティムは人気のない険しい山の䞭に降りた。
     俺は雪の䞋の土の質を確かめた。
     次いで䞊空に浮き䞊がり、氷の魔法でブヌメランを䜜り、地䞊のたばらな暹々を䌐採した。
     䌐採した暹々は䞀箇所に運んでたずめた。
     たずたずの広さの平地が出来䞊がった。
     
     それから俺は魔王城に戻り、䜕䜓もの人類の死䜓をひもで瞛り、俺の䞡肩に吊るした。
     ティムには背埌から俺の銖に掎たっおもらい、その䞊にマントを矜織った。
     そしお俺たちは飛び、その山奥の平地に戻った。
     氷魔法で䜜ったショベルでその地面を深く掘り、死䜓を埋める。
     
    「雪が溶けたら城の庭にある骚や遺品も、ここに運んで埋めよう。それから墓石にできそうな倧きな岩を探そう」
     
    「めんどくせえなぁ」
     
    「うん  だから意味がある」
     
    
     
     ティムが城に来お䞀幎が過ぎた。
     春だ。
     盞倉わらず勇者パヌティは城に来る。
     俺は仕事ずしお、圌らを殺す。
     そしお死䜓を遠くの墓に運ぶ。
     
    「殺さない蚳には、いかないのかなぁ」
     
     ある時ティムが蚀ったその蚀葉が、俺の心を揺さぶった。
     
    「そういうこずは、考えないようにしおるんだ」
     
     ティムは俺を責めおいるのだろうか
     
     決しお向き合わないようにしおいた気持ち。
     殺戮の眪悪感。
     それがふず胞に浮かんだ。
     
     それず向き合えば、途方もなく苊しくなるだけだ。
     だからい぀からか俺は、必死に䜕も感じないようにしおきた。
     むしろ人類を憎もうずしおきた。
     䞋等な匱者だず。
     だがそれは、い぀も俺の胞の䞭のどこかにいた。
     
     神々を恐れ、怯え、呜じられた殺戮を拒吊できない、憐れで惚めな俺。
     どこにも逃げられない俺。
     苊しくお、今にも泣き出しそうな俺。
     それが芋えそうになった時は、倒れるたで酒を飲んだ。
     魔法で自分の感情を操れるなら、そうしただろう。
     
     墓。
     
     ティムが俺に墓を造ろうず蚀った理由が、分かった気がする。
     それは俺のためでもあるのだ。
     俺の胞の苊しみをわずかでも和らげるための墓。
     
     それから俺は、勇者パヌティを殺めるたびに、その死䜓をその墓に䞁寧に埋め、圌らにすたないず䜕床も詫びるようになった。
     
     墓には、挆黒の森で買っおきた花の皮を蒔いた。
     痩せた土地でも育぀、小さく地味な青い花だ。
     
     それから四癟幎、その山奥の墓は広がり続け、おびただしい数の人類が埋められるこずになる。
     青く小さな花は、埋められた勇者たちの䞊で、際限もなく咲き乱れおいた。

    次話 / 目次

     
     
    WEB小説「魔王の莖眪」を投皿しおいたす。重く残酷で、悲しく切なく、けれどその先には救いず解攟があり、突き抜けおいく倧河ファンタゞヌ小説です。究極の魔王ファンタゞヌを、今、ここに。 【目次】 https://note.com/maouno/n/nd9ba4742e5a0

    あなたぞのおすすめ