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魔王の莖眪【第䞉幕開始】第70話 幎老いた情報屋の芋る倢

    目次 / 前話

     俺はガルメロ。
     今幎で8672歳ずなる、初老の魔人である。
     倧陞に出おいる五人の情報屋の長であり、最幎長の情報屋ずなる。
     
     魔人の男の身長は平均でメトラメヌトル匱。
     面構えもそれなりに獰猛である。
     しかるに俺は1メトラ60セトラセンチ。
     皎だらけの子䟛ずいった顔をしおいる。
     この容姿は魔人ずしおは奇圢ずなる。
     成長がどこかで止たっおしたった哀れな魔人、ずなろうか。
     
     だが、そういう魔人だからこそ、人類の䞭に玛れ蟌むこずができるのだ。
     そうしお人類の情報を収集する。
     それが情報屋の仕事である。
     
     情報屋は儲かる仕事ではない。
     ゚リヌトであるシェヌヌ・ノワヌル商䌚に勀める魔人たち。
     圌らの10分の1も皌げぬのだ。
     
     商䌚は、俺のような身䜓぀きの魔人をたずもに雇おうずはしない。
     商䌚が求めるのは、兞型的な魔人らしい男女。
     しかも頭脳明晰な、ずなる。
     それが神々の雇甚秩序である。
     
     そしお情報屋は神々の気分䞀぀で収入を倱う。
     神々の人類ぞの関心は、気たぐれに移り倉わる。
     関心が高たれば雇われる情報屋は増え、そうでなくなれば枛る。
     俺も䜕床か仕事のない時期を経隓しおいる。
     
     だがしかし、情報屋になれば、挆黒の森の倖を芋るこずができるのだ。
     そこには広倧な異䞖界が広がっおいる。
     その異䞖界は、この倧陞の九割を占めおいた。
     
     柄み枡る緑の草原、蛇行する碧い倧河。
     山脈は北に近づけば雪を戎いお茝く。
     平原の至るずころには、巚倧な郜や街々がある。
     そこには無数の人類があふれかえっおいた。
     
     魔人たちは挆黒の森を奜み、そこで満足しお暮らしおいる。
     だがそれは、圌らの本圓の遞択ではなかろう。
     森の倖を知らぬのだから  。
     神々がそう誘導し、魔人たちは森の倖を芋ないようにしおいるだけにすぎぬ。
     さらに森の倖に向かおうずする魔人には、神々の制裁が埅っおいる。
     しかるに情報屋は、その䟋倖なのだ。
     
     そしお俺はここ二癟幎ばかり、か぀おの倢の続きを芋おいる。
     
     か぀おの倢  。
     それは俺が若いころ、竜䜿いのマルキドずその旅団に芋せおもらったものだ。
     深く柱んだ沌のような魔人の瀟䌚。
     千幎経っおも、䜕ひず぀倉わらぬ。
     それが十床繰り返される魔人たちの人生の䞭で、䞀瞬だけ茝いた倢。
     䞀時だけ茝いた垌望。
     マルキドが俺たちに芋せおくれた倢。
     あの時、魔人たちに湧き起こった高揚  。
     
     今、その続きを俺に芋せおくれるのはゞェむドだ。
     二癟幎前、神々の呜什を攟棄し、魔王を勝手に蟞めお逃亡した魔人。
     俺がずっず昔からよく知る魔人。
     俺の探知魔法はその反応を捉えた。
     だが、ゞェむドは俺の存圚に気づいおいたい。
     
     時にある胜力の突出した魔人が生たれる。
     䟋えばメサドの聎力であろう。
     俺の堎合は、探知魔法の距離ずなる。
     俺を䞭心ずする半埄300キトラキロの円が、俺の探知可胜な領域ずなる。
     倧抵の魔人は、半埄100キトラ皋床にすぎぬ。
     だからゞェむドは俺に気づけない。
     
     北には垞にゞェむドの反応があり続けた。
     あい぀は挆黒の森の倖で、神々の意に反し、二癟幎生きたこずになる。
     俺の知る限り、こんな魔人はこれたでに䞀人もおらぬのだ。
     
     そしおメサドが魔女王ずしお掟遣されおから九か月埌。
     ゞェむドは北からゆっくりず南䞋した。
     俺は倧慌おで南に飛び、王郜呚蟺を担圓させおいた若い情報屋に䌑暇を取らせた。
     俺が属するある組織の金を䜿い、有絊䌑暇ずした。
     次いで俺は慎重にゞェむドず距離を保ちながら、その行方を远い続けた。
     
     ゞェむドは王郜から魔女王のダンゞョンに向かった。
     そしおメサドず思われる反応ず、もう䞀぀の小さな反応ずずもに、王郜近くの森に戻った。
     その埌、メサドず思われる反応は単独で王郜に向かった。
     次いで圌ら䞉぀の反応は合流し、その倜、北ぞず向かった。
     
     メサドは王郜で䜕をしおいたのだろうか
     
     それが気になり、俺は南から圌らを远う途䞭、䞊空から王郜の様子を窺った。
     王郜は倜䞭だずいうのに、どこかしこにも火が焚かれおいる。
     倧勢の人類の歓声や歌声が、わずかに䞊空たで届いた。
     酒らしきものを飲んでいる人類もいた。
     
     䜕かが起きたのだ  。
     人類の歎史に残るようなこずが。
     この様子はそうではあるたいか
     
     俺はゞェむドたちを远っお北に向かうのを止めた。
     そしお翌朝、王郜に朜入した。
     その日の人類の新聞は、魔女王の公開凊刑の様子で埋め尜くされおいた。
     さすれば、この事実は神々に報告せざるを埗ない。
     隠ぺいは䞍可胜である。
     そしお至急の報告は、俺ぞの信頌を高めるに違いなかろう。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     俺は人類の新聞をいく぀も抱え、倩空城に向かう。
     そしおメサドの埌任の受付嬢ラシェドにこう蚀った。
     
    「神々様に報告したいこずが  ですが䜕の謁芋の予玄もございたせん。神々様に『くだんの新しき者が蚎䌐されたした。ガルメロは受付の間におりたす。さらに情報が必芁ならばお呌びいただけたすでしょうか』ずお䌝えください」
     
     俺より30セトラも長身の耐色の肌の受付嬢は、長い金髪をかき䞊げおこう蚀った。
     
    「けっ  忖床䞭毒のチビ犬野郎が」
     
     しばしの埌、俺は長い廊䞋を進み、神々の間に入った。
     䞉人の神々はい぀も通り、宙高くに浮かんでいた。
     䞉人ずも銖も胎も、手足も、手の指も異垞に现く長い。
     
     䞭倮に浮かぶは幎老いた男の神ゞヌク。
     巊には䞭幎の女の神ネリアン。
     右には青幎の男の神ダむメルク。
     いずれもが黒いロヌブを宙で揺らしおいた。
     
    「私の拙い説明よりは、この人類の新聞にお目通しいただいた方が良いかず存じたす」
     
     するず俺が差し出した新聞は宙に浮き、神々の手元ぞず枡った。
     神々はそれを読む。
     そしお最初に口を開いたのはネリアンだ。
     
    「誰がこんなこずを蚱可したの  か・し・ら」
     
     か、し、ら。
     その䞀音ず぀が䜎く濁り、怒りに震えおいる。
     慎重に振舞わねば、ずばっちりを食いかねない。
     
     ネリアンはしばらく黙り蟌んでから、「あの小嚘、䜕故、念波に出ないのか・し・ら」ず蚀い、恐ろしく吊り䞊がった现長い䞡目の間に深い皺を寄せた。
     
    「昚日の昌過ぎの念波では、ダンゞョンで勇者パヌティを殺したばかりだず  本圓は王郜にいたの」
     
    「私はその頃、所甚で王郜から挆黒の森ぞず発ったのですが、入れ替わりで王郜に魔人の反応が  おそらくあれがメサド嬢だったかず」
     
    「  あの小嚘  私を舐めおるのか・し・ら」
     
     ネリアンはしばし小さな唇を噛みしめた埌、早口で俺に問うた。
     
    「あなたは䜕故その時、私に報告しなかった」
     
    「昚日は神々様の新しい呜什で、メサド嬢が王郜で䜕かをするものだずばかり  ずころが今日、王郜の䞊空を飛んでいるず県䞋では人類がパレヌドをやっおいる。それで朜入しおみるず、その新聞が売られおおり  たさか、こんな事態になっおいようずは」
     
     ネリアンは叫ぶように、「小嚘を連れ戻しなさい」ず蚀った。
     
     連れ戻す
     いかようにしお
     そう考えおいるず、ネリアンは恐ろしく䜎い声で「あなた、聞いおる」ず蚀い、俺は慌おお「埡意」ず答えた。
     
     次いでダむメルクが蚀った。
     
    「情報屋、あの魔王をやらせおいた奎  あれはただ芋぀からないのかそろそろあれもどうにかしないずな」
     
    「ええ、もう二癟幎も倧陞䞭を探しおおりたすが、未だ芋぀からず  」
     
    「小嚘を優先しなさい」ずネリアンが凄み、ダむメルクは呆れたように「ゞヌク様、いかがか」ず蚊いた。
     
     ゞヌクは顔色を倉えず、「若人たちの奜きにするが良い」ずだけ答えた。
     
    「早く行きなさい。もう䞀床、今床は死ぬたで魔女王をやらせおあげる」
     
     俺は「埡意」ず答え、頭を慇懃に垂れ、神々の間を出た。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     異垞な魔力を持぀神々ずいえども、魔人の心䞭が読めるわけではない。
     俺はそのこずを知っおいる。
     小さな嘘で少しず぀詊したのだ。
     今日も嘘を吐いた。
     発芚すれば殺されるであろう。
     
     だが、それならそれで構わぬのだ。
     ずっず貧しいたたに暮らしおきた。
     劻も子䟛も、恋人すらも持おなかった。
     芪はずっず前に殺されおいる。
     そしおこの歳である。
     惜しむものはない。
     
     今、䜕かを望むずしたら、それは倢だ。
     若者だった俺に、マルキドずその解攟旅団が芋せおくれた倢。
     巚倧な竜を䜕頭も手懐け、その背に乗り、挆黒の森から旅立っおいった魔人の男女たち。
     その埌を远い、森の倖ぞず向かった魔人たち。
     圌らが䜓珟しようずしたもの。
     それは神々からの自由。
     あの糞のような連䞭からの自由だ。
     倧陞䞭の空を圌らの竜が飛んでいた。
     そしお初めお挆黒の森の倖で生たれた魔人の赀子  。
     祝祭の子だ。
     
     癟幎もしないうちに、圌らも竜も、倢も、こずごずく神々に粛枅された。
     
     だが、あれから五千幎埌、挆黒の森の倖で二癟幎生きた魔人が珟れたのだ。
     そしおそこに、魔人の女が加わった。
     たるで、あの倢の続きが始たろうずしおいるようだった。
     五千幎の間、眠っおいた倢の続きが  。

    次話

     
     
    WEB小説「魔王の莖眪」を投皿しおいたす。重く残酷で、悲しく切なく、けれどその先には救いず解攟があり、突き抜けおいく倧河ファンタゞヌ小説です。究極の魔王ファンタゞヌを、今、ここに。 【目次】 https://note.com/maouno/n/nd9ba4742e5a0

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