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魔王の莖眪 第43話 少幎少女の通った道

    目次 / 前話

     次いでシュルツは、デュヌクのこずを教えおくれた。
     デュヌクに぀いおは、䌝蚘が残っおいた。
     圌ず同時代を生きた女の牧垫が蚘したものだ。
     デュヌクが圌女に語った、数倚くの懺悔の蚀葉。
     圌女がデュヌクにようやく打ち明けさせた、その過酷な人生。
     圌女はデュヌクの死埌にそれらを線纂した。
     デュヌクの故郷である゚ドラずいう名の広倧なスラム街。
     圌女は、そこに生たれおくる子䟛たちのために、英雄の䌝蚘を残した。
     
     シュルツは䜕床もその䌝蚘を読み返しおいる。
     そしおルドルフぱドラの出身だ。
     
     魔王蚎䌐の旅から垰還したデュヌク。
     圌は王ずの謁芋の堎で、開口䞀番、゚ドラぞの支揎を求めた。
     16歳の若者のぶっきらがうな口調に、王は苊笑いした。
     その埌の日刊勇者の取材に察し、デュヌクはこう答えた。
     
    「゚ドラでは、芪に捚おられお飢えお死んでいく子䟛がたくさんいたす。俺の魔王蚎䌐の賞金は、党郚その子䟛たちのために䜿いたす」
     
     魔王を蚎䌐した者には賞金が支払われる。
     普通の暮らしをするなら、䞀生働かなくおも枈むほどの額だ。
     それを故郷の飢えた子䟛たちのために぀ぎ蟌もうず蚀うのだ。
     
     デュヌクは続けた。
     
    「お願いがありたす。もし゚ドラの子䟛たちを助けようずいう気持ちのある人がいたら、少しでもいい、俺に寄附しおもらえないでしょうか」
     
     寄附は党く集たらなかった。
     人類の関心は、魔王蚎䌐や優しき魔人の存圚の真吊に集䞭しおいた。
     ゚ドラの子䟛たちのこずなど、誰も興味がなかった。
     
     しばらくしおデュヌクは賞金を受け取るず、䞀人王郜を発った。
     そしお゚ドラに隣接する小さな町に入った。
     ゚ドラずの境界から3キトラキロ皋手前に、客のいないパン屋があった。
     デュヌクはそこで特泚のパンを䜜らせた。
     
     味はどうでも良い。
     栄逊がしっかり摂れるもの。
     密床が高く、その分かさばらないもの。
     なるべく日持ちのするもの。
     それをできる限り安く。
     
     これがデュヌクの泚文だった。
     デュヌクはパン屋に前金を払い、パンを二癟個焌かせた。
     焌きあがったのは、黒く固い小さなパンだった。
     王郜の人類なら捚おる味だ。
     
     背負い袋には入りきらず、倧きな袋にもパンを入れ、肩に担いだ。
     そしお二本の剣を腰に携え、翌朝早くに゚ドラに入った。
     久しぶりの故郷だった。
     腐りかけた板ず瓊瀫ずごみが、街䞊みのほずんどを埋め尜くしおいる。
     生ぬるい颚が盞倉わらずの埃ず腐臭をたき散らしおいた。
     
     身寄りのない飢えた子䟛のいる堎所はよく分かっおいた。
     自分もか぀お、そこにいたのだから。
     
     デュヌクは入り組んだ裏路地や、ゎミが集められた空地の隅を回った。
     痩せこけお目が窪んだ子䟛たちに黒いパンを枡す。
     子䟛たちは急に我に返ったかのように目を芋開き、そのパンにかぶり぀いた。
     デュヌクはそれを芋お、嬉しくなった。
     
    「倧人に芋぀かるな。パンを奪われる」
     
     そう蚀い残し、デュヌクは駆け足で進んだ。
     䞀日でどれだけのパンを配れるか。
     たずはそれを詊す必芁があった。
     倕方たでかかったが、なんずか二癟個のパンを配るこずができた。
     
     デュヌクは数日、同じようにパンを配り続けた。
     そしお高い建物に挟たれた路地にいた子䟛にパンを枡した時だ。
     
     䞊から「お前か  俺たちの商売の邪魔しおるっおいう若いのは」ず声がした。
     
     芋䞊げるず、男が建物の䞉階蟺りの窓から顔を出しおこちらを芋おいた。
     男はデュヌクに向かっお蚀った。
     
    「飢えおるガキがいるっおこずは、俺たちの商売が䞊手くいくっおこずだ  飢えに怯える連䞭は食い物にどんだけでも金を出すからな」
     
     次いで男は、陶噚の酒瓶をデュヌクの足元に投げ぀けた。
     瓶は鈍い音を立おお砕け散った。
     
    「そい぀を配るのを止めろ。でなきゃ殺す」
     
     その男はそう蚀うず、倧きな音を立おお窓を閉めた。
     おそらく゚ドラを仕切る、マフィアず呌ばれる連䞭だろう。
     やはりこういうこずになった。
     デュヌクは子䟛ずずもに、足早に路地を去った。




     
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     デュヌクは翌日も、同じようにパンを配っお回った。
     昌過ぎ、现く長い裏路地を進むず、四、五歳の子䟛が䜕人か、その先の道端に暪たわっおいた。
     ひどく痩せ、がろ垃をわずかに纏っおいる。
     デュヌクは近づいおパンを枡そうずした。
     するず路地の奥から声がした。
     
    「どうしおもそのパン配り、止めおくれんのかなぁ、若き英雄さんよぉ」
     
     剣を腰に携えた䞉人の䞭幎の男が、悠然ずデュヌクに向かっおくる。
     その䞭の䞀人が䜎い声で蚀った。
     
    「どうしおも  止めおくれんのか」
     
     デュヌクは䜕も答えず、近づいおくる盞手をただ睚んだ。
     
    「そうかぁ  なら殺るたでだ」
     
     デュヌクはそれを聞き、剣を抜こうずした。
     
    「銬鹿が  お前じゃねえよ」
     
     そう蚀うずその男は剣を抜き、腕を倧きく䌞ばし、道端に暪たわる子䟛の䞀人の喉に剣先を圓おた。
     
    「止めろ」
     
    「お前がな」ず蚀いながら、その男は子䟛の喉を突き、裂いた。
     
     デュヌクは子䟛たちの方を駆け出しながら、改めお思った。
     自分は故郷に垰っお来たのだず。
     ここは間違いなく、俺が育った街だず。
     倚くの子䟛たちを飲み蟌む、逓死ずいう緩慢な死。
     それずは別に、䞀郚の子䟛たちに突然蚪れる、理由なき暎力による死。
     
    「どうする、魔王を倒した英雄さんよぉただパン配るかぁ」
     
     そう蚀いながら、その男は這っお逃げようずする子䟛の銖を萜ずそうずした。
     デュヌクは疟走しながら慌おお右の剣を抜き、その男の手を斬り萜ずした。
     剣ずそれを握っおいた手が地面に萜ち、血が広がる。
     デュヌクがさらに巊の剣を抜き、雄叫びを䞊げるず、男たちは逃げおいった。
     
     デュヌクは子䟛たちにパンを枡し、死ぬ気で逃げろず蚀った。
     
     次の日から、デュヌクはパンを配る地域を倉えた。
     ゚ドラは広倧だ。
     各地を回ろう。
     マフィアに目を付けられたら、別の地域に向かえば良い。
     ほずがりが冷めたら、元の地域に戻れば良い。
     
     だがデュヌクのこずは、すぐに゚ドラ党土に䌝わっおいった。
     どの地域を蚪れおも、早々ずマフィアに狙われるようになった。
     おそらく䜏民がマフィアに、デュヌクのこずを密告しおいる。
     でなければ、居所を掎たれるのが早すぎる  。
     
     デュヌクはマフィアを䜕人か殺した。
     耇数人を盞手にしお殺さずに枈たせられるほど、デュヌクに剣の技量はなかった。




     
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     ある日の垰路、デュヌクは突然、街の䜏民に取り囲たれた。
     二十人近い老人が、道の前埌から珟れたのだ。
     デュヌクがそこを通るず知り、埅っおいたに違いない。
     その䞭の䞀人が、掠れた声で蚀った。
     
    「お前はもうこれ以䞊、゚ドラに関わらないでくれ。身寄りのない子䟛は飢えお死ぬ。だがそれ以倖の者が死ぬわけじゃない  それがこの街の秩序だ」
     
     老人は続けた。
     
    「マフィアが食料を売っおくれるおかげで、この街の人間は生きおいける。飢えおいるのは身寄りのない子䟛だけじゃない。これ以䞊、マフィアを怒らせないでくれ」
     
     そしお老婆が䞋卑た声で蚀った。
     
    「子䟛は死んでも生たれおくる。どんどん、どんどん、生たれおくる。飢え死にしおも枛りはせん。だけど私らはそうはいかん」
     
     デュヌクは剣を抜こうずした。
     その老婆を、そしおその堎にいた老人を党員斬っおやろうず思った。
     だが歯を食いしばり、必死で堪えた。
     激しい怒りを抑え蟌もうずするず涙が出る。
     デュヌクはそのこずを初めお知った。

    次話
     


     
     
    WEB小説「魔王の莖眪」を投皿しおいたす。重く残酷で、悲しく切なく、けれどその先には救いず解攟があり、突き抜けおいく倧河ファンタゞヌ小説です。究極の魔王ファンタゞヌを、今、ここに。 【目次】 https://note.com/maouno/n/nd9ba4742e5a0

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