
【架空書評#5】『そうか、キミは巨乳が好きなのか。〜ウォール街流 共感マネジメントの作法〜』
「共感が大事だ」「傾聴こそマネジメントの基本だ」
ビジネス書でも現場でも、共感マネジメントや心理的安全性が語られ続けています。
もちろん、とても大事なことだと思います。
けれど、誰も傷つけない代わりに、
深く踏み込まない会話が増えた気もしていました。
そんな時、KAKUNI booksにとんでもないタイトルの本が入荷しました。
『そうか、キミは巨乳が好きなのか。
〜ウォール街流・共感マネジメントの作法〜』
一見すると、最悪のタイトル。
でも、もっと最悪なのは、その内容が妙にちゃんとしていることだったのです。
第1章:巨乳をめぐる、ウォール街での1on1
著者はウォール街で勤務していた元証券マンであり、本書には上司・マイケルとのユニークなエピソードが数多く登場する。
中でも印象深いのが、
「巨乳が好きすぎて仕事が手につかない」
と悩んでいた著者とマイケルとの1on1の場面だ。
・著者:
「巨乳が好きすぎて、仕事が手につかないんです」
・マイケル(マネージャー):
「なるほど、それは文字通り大きな問題(Big Issue)と言えそうだね。
ところで、巨乳とは何なのか、君は定義したことがあるのかい?」
・著者:
「大体、Fカップ以上でしょうか?」
・マイケル(マネージャー):
「それは統計的基準? それとも個人的な感覚?
ちなみに私はGカップ以上と考えている。
ただ、日米ではブラのサイズ基準が違うんだ。君はそのことについて考えたことはあるのかな?」
マイケルの見事さは、
“感情の悩み”をそのまま論じるのではなく、
定義 → 統計 → 文化という別レイヤーへ引き上げている点にある。
これはハラスメントではなく、課題を再定義するアセスメントそのものだ。
なお、著者はこの時を振り返って「Appleの伝説的なキャンペーン”Think different”を初めて見たときと同じ衝撃が走った」と記している。
読みながら「何を言っているんだ?」と思いつつ、どこか納得してしまう自分もいた。
第2章:共感は、安全圏から生まれない
さらに著者は、悩みを持つ部下の心理的安全性を高める方法についても言及している。
処方箋として提示されるのが、マネージャー側からの「積極的な戦略的自己開示」である。
あらゆるハラスメントは、悪である。セクハラは当然、あってはならない。
しかし、一線を踏み越える勇気がなければ、本当の課題は引き出せない。
例えば、巨乳好きという悩みを抱えた部下に対しては、マネージャーが「いや〜私は胸よりお尻派でね」と、ある意味でタブーな領域にまで踏み込んだ自己開示を行うことが必要だ。
それは、強烈な心理的安全性とマネージャーへの信頼を生む。
もちろんこれは劇薬である。
相手・場面・関係性を見誤れば即アウトだ。
しかし著者はこう断言する。
「劇薬を一切使えないマネージャーは、お飾りでしかない」
正しいことだけを言い続ける上司は、安全かもしれない。
ただ、安全圏からの共感だけでは、人の本音に辿り着けない。
本書に書いてあることは危険なのに、どこかロジカルだ。
だから、困る。

第3章:共感マネジメントとは「寄せて、上げる」こと
共感マネジメントとは、相手の課題を一時的に自分のものとして抱え込み、解決に向けて「寄せて、上げる」ことである。
悩みの本質をたぐり寄せることから始め、より高い視座へと持ち上げること。
この積極的かつ建設的な行動こそが、私がマイケルから学んだ真のマネジメントの作法なのである。
「寄せるだけは優しさ。上げるだけは説教。
両方やって初めてマネジメントである」
と著者は言う。
理屈はわかる。
しかし、どう実践したら良いのか?
著者はこの問いに対して、3つのヒントを記載している。
【真の共感マネジメント:寄せて、上げるためのフロー】
性的嗜好と同様に、部下の悩みも、上司のリーダーシップの種類も千差万別だ。だからこそ、以下のフローを自分なりに咀嚼して実践してほしい。
1、沈黙と傾聴で「寄せる」:
部下の悩みを否定せず、まずは部下の悩みの感情の奥深くまで降りていく。
そうすることで、部下に寄り添う姿勢を示し、部下の悩みを収集する。
2、定義で「視座を上げる」:
悩みの本質を特定した後、それを別の抽象的な論点(統計、文化、本能的基準など)へ定義し直す。
3、戦略で「行動へと押し上げる」:
悩みを単なる感情的な問題で終わらせず、行動可能な課題へ変換し、具体的な戦略へ接続する。
部下の力を引き出すことは、上司による慈善活動ではない。
極めて負荷の高い営みである。
だからこそ、マネージメントは難しい。
そして、少しだけ危険を伴う職務なのだろう。
著者は最後に、日本の元環境大臣の言葉を引き合いに出して、全ての悩めるマネージャーへエールを送る。
「難しい問題ほど、セクシーであるべきなのだ」
📝KAKUNI books 店主の一言
会社の会議室では今日も、
「心理的安全性」という安全な言葉が大量に生産されています。
もちろん、誰かを傷つけるべきではありません。
性的な話題を軽々しく持ち出してハラスメントをするなんて、論外です。
ただ、
向き合うためには、ある程度踏み込むことも必要なのではないだろうか。
時には多少のリスクを冒してでも、飛び込む必要があるのではないか。
この本を読みながら、そんなことを考えてしまいました。
※なお、この本は実在しません。
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その奥にある社会への問題意識などを語ってもらう5分間の番組です。