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勘当ガイドブック #毎週ショートショートnote

    牧原加奈

    「さとし、か?」
     病室にフラリと現れたのは、三十年前に勘当した息子だった

    「ああ。……親父が死んじまう前に頼みがあってきた」
    「金か?」
    「そういうとこ変わらないな。金はいらねえ。勘当ビジネスで儲けてるから」
     さとしが口を歪めて笑う
    「数年前、勘当されたガキ率いて町をおこした。あ、これ勘当ガイドブック」
     ぽいと放られたそれは分厚く重い
    「ありていにいえば公金ビジネスだ。成功してる。国からの補助金はでかいからな。……だがよからぬ輩もわいた。勘当されてもいないのにあやかろうとする奴らだ。で、政府は今年から親の『勘当証明書』を必須にした。要は今日、お前にサインをもらおうと思ってきたんだ。組織代表の俺に勘当証明がないのは致命的だからな」
     差し出された紙をじっと見つめる
    「……悪いがこれにサインはできない。お前の勘当はなしだ。会いに来たら取り消そうと思っていた」
    「まて……それは困る」
    「なら毎日ここに通い、お願いするんだな」
     にやりと笑う
     さとしが真っ赤な顔で「くそ親父」と言い捨て、病室をでていった

     さとしが書いた勘当ガイドブックをやさしくなでる

     政府高官のおれは長年勘当事業をサポートし、今年全ての権力を使い、親の証明書制度を導入した

     これであいつはサインほしさに毎日来るだろう

     最期の我儘というやつだ

    了

    (543文字)

     田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加しました。

     ラッキー7賞いただきましたっ!
     うれしい♡


     
     
     
    大阪府在住 / ショートショート好き / 観葉植物大好き

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