
Tiramisù 『私を引き上げて』
初めの一口で幸福へ導いてくれる
イタリアンドルチェ
ティラミス。
その名前の語源は
「私を引き上げて (私を元気づけて)」。
そんな愛おしいストーリーが込められた
スイーツを心から欲した日がありました。
新年度2ヶ月目。
ニュースでは新社会人の初任給に関する
トピックがよく取り上げられました。
「人気企業の初任給は30万円。
その使い道は…?」
そんな特集を見る度に、
不覚にも胸が締め付けられる思いでした。
なぜなら、
ライフイベントに伴う旅を終えた
復職後の私が手にしたのは
実質、約5万円の減給だったからです。
以前のようなポジションで
これまでと同様な働き方が不可能だと
理解した上での復職のはずでした。
しかし、
実際に数字で結果を示されると
想像以上に心が傷みました。
たった4ヶ月のブランク。
「業務上のスキルは以前と大差がない」
と自負していても
権限を失ってしまっては
出来るはずのことも、手に負えないのです。
困っている同僚やお客様が目の前にいても
自ら迅速な対応ができないもどかしさ。
まるで
翼を折られた鳥になったような気分でした。
それに加え、
ご自身の不機嫌を当てつけるカスタマーや
非建設的なクレームに耳を傾ける日々。
着実に心が荒んでいくのを感じました。
そんな日々の果てに突きつけられた
「マイナス5万円」という数字。
私のこれまで培った経験やスキル、
社会的価値さえも失われたかのような
冷たい一撃でした。
それでも、
これまでの経験で得た知見は
簡単に消えるものではありませんでした。
一人ひとりのお客さまに寄り添うべく
身体が自ずと動き
時と場合に応じ、最善を尽くしました。
それがカスタマーサービスを提供する
プロとしての誇りだったから。
自身のパフォーマンスと
報酬のギャップを惨めに思い
気持ちが下がりかけていた時、
あるお客様の言葉に報われました。
金曜日の午後。
週末の賑わいに溢れる店内で
私はいつも通り
笑顔と丁寧な言葉づかい、立ち振る舞いで
接客をしていました。
順番を待っている方には視線を交わし、
「まもなくご案内します。」
とアイコンタクトで伝える。
目の前の方を見送り、
次の方を迎える。
そんなルーティン化されたアクションを
そつなくこなす私を目覚めさせてくれた方が
目の前にいらしたのです。
「ここで働かれている人は、
社員さんが多いんですか?」
あまり聞かれることのない質問に
戸惑いを感じつつも
「多くの者がパートタイムですよ。」
といつもの笑顔で答えました。
すると
その方は私の名札に目を留め、
「Tamaさんは社員さんなんですか?」
と質問を続けられたのです。
自身の雇用形態に対して
劣等感を抱いている私には
少し胸が痛む問いかけでした。
答えに躊躇いを感じながら
非正規である事実を伝えると、
その方は
少し驚かれた様子で仰ったのです。
「そうなんですか?
すごく、ラグジュアリーですね。」
何気なく放たれた一言が
私の仕事に対する後ろめたさを
鮮やかに吹き飛ばしました。
なぜなら、
その方が私の接客に対し
確かな価値を見出して
掛けてくださった言葉だったから。
これまでの経験が少し報われた気がしました。
数字やポジションによる物質的証明がなくても
価値のあるものは存在する。
私が提供する付加価値は
現在のポジションには収まりきらない。
あの一言は
そんな真実を伝えてくれたように感じたのです。
私はあのお客様を見送る時
心の中で深く感謝をすると同時に、
まだ見ぬ遠くの空へ
そっと手を伸ばしました。
「私を引き上げて!」と…
あの甘くほろ苦い
ドルチェの名前を心で呟いて…
最後までお付き合いいただき、
ありがとうございます。
どんな選択をするにしても、結局は自分次第。
現状に折れず、
更なる飛躍を目指し未来を築いていきます。
1人でも多くの人の心に届きますように。
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Good luck💫