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初恋はバンドマンの彼


    シャッフル再生していたスマホから懐かしい曲が流れてきた。その曲は、忘れもしない初恋の彼が歌うラブソングだった。



    中学生の頃、下校中に道端で歌っている人を見かけた。いわゆる路上ライブというやつだ。彼の周りにはおそらくファンであろう数人が集まっており、無意識に自分も立ち止まっていた。




    すぐに彼と目が合い、指を指された。




    その日からいつの間にか彼を追いかけるようになっていた。




    彼は私よりも15個上で、音楽一本で食べていくことが昔からの夢だと語っていた。関西生まれ関西育ちで、数年前同じ夢を持った友人の誘いで上京してきたという。

    今まで抱いていた関西人のイメージを覆すほど柔らかい声で穏やかな関西弁を話す彼に、私は一瞬で魅了され、その甘いルックスに心奪われた。



    今思えばなんて単純なガキだ、と恥ずかしくなるが、彼が私の初恋だった。


    彼との出会いが今でも私の恋愛観を狂わせている。




    彼はバンドマンだった。私からしたら彼の作る音楽は世界一だったが、全く売れていなかった。たまにローカルなイベントに呼ばれたり、小さいライブハウスでワンマンライブをやったり、その程度だ。


    毎回欠かさず参加するような熱狂的なファンは20人前後しかおらず、しかもそのほとんどが40〜60代の女性だった。かなり年齢層が高く、若いファンは私だけだった。


    当時はアメーバブログが流行っており、彼はよくブログのタイトルに好きな歌詞を引用していた。15個上の彼が好きな物は私からすれば初めて目にするものだった。いわゆるジェネレーションギャップだ。




    ブログのタイトルから彼の好きな曲を探し出し、プレイリストを作って毎日繰り返し聴いた。


    その時間だけはどうしても追いつけない彼との年齢差が、少しだけ縮まったような気がして嬉しかったのを今でも鮮明に覚えている。




    彼のことを話したらキリがないくらい、彼が私の初恋で、青春で、憧れだった。



    シャッフル再生で彼の曲が流れてきた数分間は、幼かったあの頃に戻った気分だった。あの頃の気持ちを、どこかに書き出したくなった。


    彼とのその後はこちら


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