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Photo bystarwalker0202

【もしもミュージアム】#4 第2回企画展「浦沼の生きものと暮らし」(前編)

    祖父の見舞い帰り、病気近くの公園にナオトが立ち寄ると、川辺りに白い箱のような建物が建っているのに気づいた。
    新しい店でもできたのだろうか。入口に近づいてみると、真新しい木の看板が吊り下げられていた。
    『もしもミュージアム』
    中の様子はよく分からない。不審に思い立ち去ろうとすると、裏側の扉が勢い良く開き、Tシャツ姿の小さな子どもたちが三人飛び出してきた。一人の子どもが、持っていたバケツに手を突っ込んで高々と持ち上げた。
    「これ、ニホンザリガ二だよ!」
    「こっちはでっかいタニシ!」
    子どもたちは捕まえた生き物を観察して大騒ぎしていた。
    すると、裏口の扉が開いて、長靴と作業着姿の男が走ってきた。
    「お前たち!また養殖池で釣りをしていたのか!」
    「やばい、ハカセが来た」
     怒鳴り声を聞くと、子どもたちはバケツを置いて、一目散に建物裏に逃げていった。
    「あいつら、逃げ足は早いんだよな⋯⋯まったく、こんなに勝手に捕まえて」
     ぶつぶつ言いながら男はバケツの中身を確認している。
     ナオトは、思わず声をかけた。
    「あの、この辺りに池なんてあるんですか」
     声に気づいて、男は顔を上げた。

    展示室A・浦沼の生きもの


    少し薄暗い入口を抜けると、川のせせらぎが聞こえてきた。水中をイメージした展示室には、植物の封入標本と、透明な筒がたくさん並んでいる。透明の筒には薬品漬けの魚や爬虫類が揺れていた。
    「みんな、浦沼に住んでいる生きものですよ。これは、百年前のウナギの標本です」
     先程、子どもたちを叱っていた男が、説明をしてくれた。彼は、この館の学芸員だという。
    「浦沼って、宅地開発のために埋め立てられたんじゃなかったですか。まだ僕が小さい時、祖父母から聞いたことがあります」
     ナオトが驚くと、男は少し笑った。
    「はい。『向こう』の世界ではそうでしたね。でも、こちらはもう一つの世界ですから」
     男は、こんこん、と壁を叩いた。壁が開き、透明な板でつくられた引き出しがゆっくり出てきた。中には魚やチョウ、白い花が展示されていた。
    「これらは、絶滅危惧種の中でも特に貴重なものです。貴重な標本のため、普段は公開していません。今日は特別です」
     そこには、小さなフナやシジミチョウのような生き物が、生きていた時のままの姿で眠っていた。
    「一見、地味な姿をしています。でも、絶滅の危機に瀕したものたちばかりですよ」
     男は、もう一度壁を叩いた。標本の入ったケースは壁に沈んでいった。
    「埋め立ての時に発見されていなければ、この国から消えていたでしょう。そうじゃなくても、最近は外来種の影響や沼の乾燥化で、確認が難しくなっていますが」
     男は寂しそうにつぶやいた。
    「目立たない、ありふれたものほど気づくと静かに消えていますから」
     ナオトは何も言えなかった。

    (つづく)


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    北方のアマチュア作家。創作、雑草雑記、エッセイ。一部の作品は無償利用に限り利用許諾してます。

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