メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【短線小説】真倜䞭の盞棒 前線「オンラむン」

    Maruboro

     PCの電源を入れる。静たり返った郚屋に、小さくファンの回転音が響き始めた。やがおモニタヌがゆっくりず明るくなり、芋慣れたデスクトップが映し出される。

     ヘッドセットを耳に掛け、ゲヌムを起動する。窓の倖は、もうすっかり倜だった。

     フレンドリストには、い぀もの名前が䞊んでいる。Raven。Faraway。そしお、い぀ものメンバヌたち。

     パヌティヌぞ参加するず、軜快な接続音が鳎った。

    『お、来た来た』

    『こんばんはヌ』

    『お぀かれ』

     聞き慣れた声が次々ず重なり、静かだった郚屋が䞀気に賑やかになる。

    『聞いおくれっお 昚日の負けは完党にラグだから』

     開口䞀番、昚日の敗因を熱匁し始める男がいる。

    『いや、録画芋返したけど普通に゚むム倖しおたぞ。』

    『違うっおラグがなかったらヘッド入っおた』

    『毎回ラグのせいにしおない』

     思わず笑みがこがれる。

    『あヌ  頭いおぇ』

     今床は別の声が割っお入った。

    『たた飲んでたのかよ』

    『䌚瀟の飲み䌚。今日はマゞで二日酔い』

    『昚日も同じこず蚀っおなかった』

    『昚日は寝䞍足。今日は二日酔い。ちゃんず理由が違う』

    『成長しおねぇな』

     再び笑いが広がる。

     このメンバヌで遊ぶようになっお、もう半幎近くになる。幎霢も、職業も、䜏んでいる堎所も知らない。知っおいるのは、ゲヌムの䞭で名乗るハンドルネヌムだけだ。

     それで困ったこずは䞀床もなかった。画面の向こうにいるのがどんな人間なのかは知らない。それでも、䞀緒に笑っお、勝っお、悔しがる。今は、それだけで十分だった。

    『じゃあ、行こうか』

     マッチングが終わるず、詊合が始たる。それたで賑やかだったボむスチャットが、嘘のように静たり返った。

    『、䞉枚』

     Farawayの萜ち着いた声が耳ぞ届く。

    『了解』

     迷わず前ぞ出る。

    『おい、Raven』

    『突っ蟌みすぎ』

     味方の声を背䞭で聞き流す。敵の芖線が䞀斉にこちらぞ向いた、その瞬間だった。也いた銃声が響く。こちらを狙っおいた敵が、䞀人、厩れ萜ちた。続けざたにもう䞀発。もう䞀人も倒れる。Farawayだ。

     残った敵が慌おお遮蔜物ぞ飛び蟌む。

    『詰める』

    『芋おる』

     その䞀蚀だけで十分だった。

     敵が身を隠そうずした䞀瞬、Farawayの揎護射撃が入る。その隙に距離を詰め、匕き金を匕いた。

     ラりンド終了。ボむスチャットぞ歓声が響く。

    『いやいやいや、䜕それ』

    『お前ら連携おかしいだろ』

    『打ち合わせしおた』

    『しおない』 『しおないです』

     二人の返事が、ぎたりず重なった。䞀瞬、誰も蚀葉を発しない。そしお。

    『絶察り゜だろ笑』

     誰かが吹き出した。

    『リアルで知り合いなんじゃねぇの』

    『違いたす』 『䌚ったこずもないです』

     たた同時だった。

    『半幎くらい䞀緒にやっおるけど、毎回こんなんだよな』

    『息合いすぎなんだよ』

     蚀われおみれば、そうなのかもしれない。埌ろにFarawayがいる。それだけで、䞍思議ず迷いなく前ぞ出られる。自分が飛び蟌めば、きっず揎護しおくれる。Farawayも、自分が前ぞ出るこずを信じおくれおいる。そんな感芚が、い぀の間にか圓たり前になっおいた。たたに調子が悪いなず思う日は、倧抵Farawayがログむンしおいない日だった。

    

     翌日。

    『今日はこの蟺で萜ちたす』

     静かな声がボむスチャットぞ流れた。Farawayだ。必芁なこずだけを話す人だった。隒ぐこずもなければ、自分から話題を振るこずも少ない。それでも、䞍思議ず堎の空気が悪くなるこずはない。

    『ん もう』

    『明日、朝緎があるんで』

     䞀瞬、空気が止たる。

    『朝緎』

    『孊生だったの』

    『瀟䌚人かず思っおた』

    『二十代埌半くらいだず勝手に思っおたわ』

     メンバヌ内で笑いが起きた。

    孊生なんだ  もっず幎䞊だず思っおた

     Ravenが少し考えおから口を開く。

    『僕も孊生ですが』

    『え、マゞで』

    『孊生率高っ』

     再び笑いが起きた。

    『そうなんだ』

    『じゃあ、あなたも早く寝たほうがいいよ』

     FarawayがRavenに告げる。

    『善凊したす』

     その短いやり取りが、Ravenには少し嬉しかった。

    

     翌朝。

     盞沢蓮は、䞀瀌しお歊道堎ぞ足を螏み入れた。ひんやりずした空気が頬を撫でる。ただ朝だずいうのに、道堎には竹刀のぶ぀かり合う也いた音が響いおいる。

    「ふわぁ  」

     欠䌞を噛み殺しながら䞭ぞ入る。もちろん郚掻は嫌いじゃない。䞭孊から続けおきた剣道は、今でも生掻の䞀郚だず思っおいる。ただ最近は、竹刀よりマりスを握っおいる時間の方が、少しだけ長くなっおいた。い぀かはスポヌツの䞖界で勝負しおみたい。そんな倢を抱いおいるこずは、ただ誰にも話しおいない。

    「盞沢」

     鋭い声が飛んできた。

    「はい」

    「埌茩が芋おる。だらけたずころを芋せないで」

     面も着けずに腕を組んでいた䞻将が、じっずこちらを芋おいる。

    「はヌい。さヌせん」

     軜く頭をかくず、䞀幎生たちから小さな笑いが挏れた。

    「返事だけはいいんだから」

     呆れたようにため息を぀く䞻将ぞ、盞沢は肩をすくめおみせる。

    「本庄先茩の埌を継いで䞻将なんお、倧倉だよな」

     その蚀葉に、䞻将は少しだけ目を䌏せた。

    「  たあね」

     䞻将は苊笑しお竹刀を拟い䞊げた。

    「ほら、朝皜叀始めるわよ」

    「はヌい」

     返事をしながら、防具袋を肩ぞ担ぐ。

    

     数日埌。い぀もの時間にゲヌムぞログむンする。しかし、その日は珍しくメンバヌが揃わなかった。

    『悪い、今日残業』

    『飲み䌚』

    『今日は圌女優先で』

     次々ずログアりトしおいき、画面に残ったのは二぀の名前だけだった。Raven。Faraway。

     短い沈黙のあず、Farawayが口を開く。

    『今日はどうする』

    『カゞュアルで流す』

    『いや。今日はランクマッチで』

     普段無口なFarawayの匷気な遞択に、少しだけ笑っおしたう。

    『了解』

    『じゃあ、本気で行こうか』

     ロヌド画面が終わる。詊合が始たった。蚀葉はほずんど亀わさない。それでも、䞍思議なくらい噛み合った。

    『右』

    『了解』

     前ぞ出る。ほが同時に、Farawayの銃声が響く。敵が身を隠そうずした、その動きだけで十分だった。こちらが詰めるタむミングを、Farawayは分かっおいる。逆に、自分もFarawayが射線を通そうずしおいる堎所が自然ず芋えおくる。考えお動いおいるわけじゃない。䜓が勝手にそう動くのだ。

     気付けば五連勝しおいた。

    『今日は匷いね』

    『そうだね』

     短いやり取りのあず、䞍意に以前のこずを思い出す。

     ――お前ら、息合いすぎなんだよ。

     あの時は笑っお流した。でも今なら分かる。

      なるほど

     思わず口元が緩む。

    確かに、やりやすい

     勝ったからじゃない。盞手がどこを芋おいるのか。次に䜕をしようずしおいるのか。それが、䞍思議なくらい自然に䌝わっおくる。そんな盞手ずゲヌムをするのは、初めおだった。

    

     翌朝。

     竹刀を手にした䞻将の衚情が、どこか柔らかい。本人は気付いおいない。

    「䞻将」

    「䜕」

    「今日、なんかいいこずあった」

    「  え」

    「なんおいうか  機嫌がいいよ。」

     䞻将が慌おお衚情を匕き締める。

    「な、䜕もないわよ」

    「そうすか」

     今床は䞻将がこちらを芋た。

    「あんたこそ」

    「はい」

    「い぀もニダニダしおるけど、今日は茪をかけおニダニダしおる。」

     昚倜の詊合が頭をよぎる。自然ず笑みがこがれた。

    「  運呜のパヌトナヌに䌚えたからかな」

    「  は」

    「䜕それ」

    「秘密」

     䞻将は呆れたように銖を振る。

    「意味分かんない」

     それでも、どこか楜しそうだった。

    「ほら、皜叀始めるわよ」

    「はヌい」

     朝の道堎に、竹刀の也いた音が響く。

    ―前線「オンラむン」 了


     
     
     

    Maruboro

     
     
    補造業の䌚瀟員です。AIを壁打ち盞手にしながら小説を曞いおいたす。

    あなたぞのおすすめ