
お願い、迎えに来てね #016 (2-4) 貴樹にはもったいない
第1部 諦念編|第2章
Hello, again.
やさしい言葉が 刃に変わる
きみと ぼくを 奈落へ突き落とす
扉がしまる 壁ができる
きみと ぼくの 絶望
彼女という称号が得られなければ、貴樹くんに逢うことはできない。このまま何もしなければ、この恋は終わってしまう。
毎日逢いたいとか、毎日電話してほしいとか、そんな贅沢を求めているわけじゃない。ただ、逢いたいと願うわがままに、罪悪感を抱く辛さから解放されたかった。
どんな手段を使ってでも、貴樹くんの許可がほしい。だって、近づいたら避けられるかもしれない。嫌われるのが怖い。だけど、本人に電話をかける勇気なんてイチミリもない。
思い詰めた感情が暴走し、気づいたときには、貴樹くんの親友である結琉くんに連絡をとっていた。
結琉くんは、中学のときは野球部のエースで、今は遠くの強豪校で野球漬けの日々を送っている。貴樹くんとは高校の行き先こそ逆方向だけど、毎朝、駅で顔を合わせているはずだ。
自分のことは話さない貴樹くんでも、結琉くんに訊かれたら、本音を漏らすかもしれない。
「もしもし。結琉くん? 久しぶり。突然ごめんね。貴樹くんのことで、相談したいことがあるの」
受話器から聞こえる結琉くんの声は、思いもよらないわたしからの電話に驚いていた。
だけど、貴樹くんの話にはぜんぜん動じなかった。わたしが彼を好きなことも、手紙を渡したことも。彼が「ノーコメント」を貫いていることも、なんとなくわかるねって感じで。
「月桜は中学のとき、すげー人気あったんだよ。昼休みに教室のベランダから外眺めてたあれ、みんなして『オレのこと見てる』って言い合ってたんだから。でさ、『なんで貴樹? 貴樹にはもったいない』って、野郎はみんな言ってたんだよ」
……いや。違うんだよ。
人気女子のハートを射止めたオレすごい。貴樹くんはそんなふうに鼻高々に思うタイプじゃない。むしろ、そうやって茶化されるほど、オレとは不釣り合いだ、って自分から引いちゃう。
誰も、彼のことをわかってない。その「もったいない」が、どれだけ残酷な言葉なのか。
からかっちゃダメ。そっとしておいてくれないと、貴樹くんシャッター降ろしちゃう。
「オレから貴樹に訊いてみるよ」
結琉くんは、貴樹くんの気持ちを訊いてくれると言ってくれた。
わたしはずるい。自分が貴樹くんに言い出せないからって、健気な女の子のふりして、うまく結琉くんを利用している。
結琉くんのやさしさに甘えて、その結果を待つことに決めた。
だけど、これが後に、貴樹くんを諦めると誓う決定打になろうとは、このときのわたしには想像することさえできなかった。
「もったいない」は、誉め言葉とは限らないよね。
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