
お願い、迎えに来てね #008 (1-8) リベンジ合唱コンクール
第1部 諦念編|第1章
Hello, little girl.
澄み渡る白だけが 美しいわけじゃない
暗く 濁った色たちは 命を燃やして 色を重ねた証
光が 強ければ 影が 濃くなるのは
きみが 生きているという ただ一つの法則
その不完全なグラデーションこそ
唯一無二の たったひとつの きみなのだから
Hello, little girl.
今のきみになら わかるはずさ
どの教室からも、合唱コンクールの歌声が響き渡っている。 わたしたち五組にとっては、昨年惜しくも準優勝に終わった雪辱のリベンジコンクールだ。
本番まで残り日数が半分を切った。連日の練習で疲れも不満も溜まる頃だ。
波長が合わない。声が出ない。リベンジだと意気込んでいたはずの合唱コンクールは、いつのまにかただ歌わされている人たちの集まりになっていた。
指揮者の結城くんとピアノの里緒が顔を見合わせて頷く。もう一回の合図だ。焦っちゃダメだよ。わたしなら、ここで一旦止める。続ける、はない。
まとまらないクラスに耐えきれなくなった、学級委員の幸冬が爆発した。
「男子! なんでちゃんと歌ってくれないの? ちゃんと歌ってよ。ねぇ。ちゃんと歌ってよぉ」
幸冬が泣きわめきながら、前列の男子の胸をひとりずつ叩いていく。クラス全員が呆気にとられるなか、幸冬と仲がいい洋雨が止めに入った。
これだから女のヒステリーは!
そう言わんばかりに、男子諸君は薄笑いを浮かべている。
その瞬間「勝った」と思った。
これじゃもう収拾つかないわ。
幸冬には、クラスをまとめる力なんてないね。
いい気味だよ。
そう思うよね?
貴樹くんも。
貴樹くんの顔を見た瞬間、さっきまでの勝ち誇った優越感は消え失せ、後悔の念だけが浮かんできた。降りるんじゃなかった。築き上げてきたクラスの絆が、今ボロボロに崩れていく。
月桜が学級委員だったら上手くいったのか? そんな保証はないけど。 だけど、子どもみたいに拗ねて、大好きな五組を蔑ろ(ないがしろ)に扱ってしまった。それだけは紛れもない事実だ。
ねぇ。貴樹くんは今、何を思っている?
後悔とともに思い出すよ。あの頃の景色。
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