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235センチの淑江さん ―真倜䞭のコむンランドリヌ

    結衣は、也燥機が回るのをがんやり眺めおいた。

    高枩の颚にさらされ、「くるん」ず持ち䞊がっおは、「ずさっ」ず萜ちる掗濯物たち。

    淡く、色ずりどりの衣類が回るのを芋おいるず、結衣の気持ちは、なにかのセラピヌのように、癒やされおいくのだった。

    地元の銭湯に䜵蚭された『コむンランドリヌ しもの湯』。

    湯掗いの芳銙に包たれながら、ここで週末のたずめ掗いをするのが、圌女の習慣になっおいた。

    しかし、今日の結衣はい぀もず少し違っおいた。

    倱恋の悲しみが、ただ胞に深く残っおいたのだ。

    圌女は、ひざの䞊に目を萜ずした。

    䞞めた手のなかには、掗濯前に取り出した玙くずがあった。

    くしゃくしゃに握り぀ぶされた玙を、未緎がたしく広げおみる。

    それは、恋人の涌介ず行くはずだったコンサヌトのチケットだった。

    ・・・・・

    也燥機の残り時間の衚瀺は、れロになっおいた。

    耳鳎りのような、わずかな機械ノむズだけを残しお、ランドリヌは静けさを取り戻した。

    涌介 

    ドラムの窓の向こうで、重なりあっおいる衣類を、結衣はしばらく眺めおいた。

    最埌に圌ず亀わした蚀葉、衚情の䞀぀䞀぀が再び蘇り、胞を鋭く突き刺した。

    11時55分。閉店の時間だ。

    結衣は、あきらめお立ち䞊がった。

    倧きなランドリヌバッグを広げ、掗濯物を詰め蟌んで肩にかけた。

    アルミサッシのドアを開けお店を出ようずするず、『しもの湯』の䞻人が鍵束を握っおやっおきた。

    軜く䌚釈をしおすれ違った。

    その盎埌――。

    「あはははっ」

    切り裂くような笑い声が、䞀床だけ真倜䞭の䜏宅街に響き枡った。

    結衣は思わずギクリずしお足を止めた。

    どこかの家で、窓を開け攟しおお笑い番組でも芋おいるのだろうか  。

    もう、驚かさないでよ  

    ・・・・・

    結衣はひずり、暗がりの路地ぞ入っおいく。

    光明寺の墓地に沿っお、叀びたブロック塀が延々ず続く现い道。

    昌間でも薄暗いこの堎所を、真倜䞭に歩くのは決しお気が進たない。

    しかし、ここを抜ければマンションたでは数分の短瞮になる。

      早く、垰ろう

    そう思っお顔を䞊げたずき、結衣の芖界に、ありえない情景が飛び蟌んできた。

    えっ なにあれ 結衣は最初、それを匷颚に揺れる束の朚だず思った。

    いや、思い蟌もうずした。

    その人圱は、民家の垣根をはるかに超えお、あたりにも巚倧な䜇たいを芋せおいたからである。

    あんなに倧きな人が、いるはずがない。

    しかし、いくら目を凝らしおも、それはやはり動く人間の姿であった。

    路地の向こうの角を、いた明らかに、非垞に倧きな人圱が曲がっおこようずしおいるのだ。

    こっちぞ、来る。

    アフロのように膚らんで揺れる圓おすぎパヌマスタむル。右肘にかけたハンドバッグ。

    䞞く吊り䞊げたカヌテンのように、超芏栌倖のロングスカヌト。

    「バサリ、バサリ」ずいう衣擊れが急速に近づいおくる。

    その女性は墓のあるブロック塀の向こう偎に手を䌞ばし、なにやら぀ぶやいおいた。

    「タッチ、タッチ ぞいタッチ、タッチ」

     

    暗がりに慣れた結衣の目は、さらに芋たくないものを捉えおしたった。

    女性は指先で確認するように、

    墓堎のブロック塀からはみ出た“卒塔婆”の䞀本䞀本にタッチしながら、歩いおいるのだ。

    ぎゃ ぎゃあ 

    鉄柵のポヌルの䞀本䞀本すべおに指先が觊れないず気がすたない人なら芋たこずがある。

    ポヌルに傘の先を圓おおカンカンず鳎らしながら歩く人なら芋たこずがある。

    しかし、死者を匔う、戒名の曞かれた卒塔婆を片っ端から觊っお歩くずいう行動など、異様すぎお、これたで想像したこずもなかった。

    路地は二人がやっずすれ違えるほどの幅しかない。結衣は怖くなっお立ち止たり、ブロックを背に道を譲った。

    「ぞいタヌチッ」

    銖をすくめる結衣の真䞊に長倧な腕が䌞び、卒塔婆にタッチした。

    お願いそのたた行っお通り過ぎお 

    祈りが通じたのか、女性の衣擊れず吐息は少しず぀遠ざかっおいく。

    しかし結衣が安堵の息をもらしたずき、女性が銖をこちらに160床ほど曲げながら蚀った。

    「あはははっあなたもお掗濯」

    笑顔ずも呪いずも぀かぬ、口角を䞊げた女の異様な顔぀き。

    結衣は恐怖に絶句し、肩のランドリヌバッグをぎゅっず胞に匕き寄せた。

    「ははっ」

    女はもう䞀床、短く高笑いをしお、路地の向こうぞ消えおいった。

    ・・・・・

    結衣は、苔で湿るブロック塀に背䞭をべったりず圓お、ずるずるずその堎にしゃがみこんだ。

    怖かった。いたのおばさんちょっず怖かった。

    しかし、倧きなため息をひず぀぀いお、圌女はふず気づいた。

    倱恋の痛みが、い぀のたにか消えおいる。

    柔らかな倜颚が結衣の前髪を少しゆらした。

    結衣は、コンサヌトチケットをもう䞀床広げ、今床は散り散りに砎いた。

    結衣がその手をかざしたずき、街を突颚が吹き抜けた。

    手のひらにのせたチケットは、圌女を離れ、真っ暗な闇の墓堎に消えおいった。

    235センチの淑江さん
    ―真倜䞭のコむンランドリヌ完


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    lucky_turkey

     
     
    こんにちは🐈 通りすがりで倱瀌したす。 ショヌトストヌリヌ日々の雑感etc ナヌモア、シュヌルな日垞ファンタゞヌや近未来のSF短線などを曞いおいたす。

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