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原因がはっきりしない腰痛、結局どうすればいい? 非特異的腰痛の原因と治し方

    こんばんは。整形外科専門医です。専門医試験は91/100点で合格しています。6割で受かる試験なのでこれは実は結構すごいです。笑

    さて、今回はかなりの人が気になっている事じゃないかな、と思います。
    期待に沿えるように頑張ります。


    原因がはっきりしない腰痛、結局どうすればいい? 非特異的腰痛の原因と治し方

    「レントゲンでは大きな異常はありません」

    「危険な腰痛ではなさそうです」

    そこまでは分かった。

    でも患者さんからすれば、

    「いや、じゃあ何でこんなに痛いの?」
    「結局、どうしたら治るの?」

    という話ですよね。

    結論からいうと、非特異的腰痛は“何も悪くない腰痛”ではありません。

    非特異的腰痛とは、骨折や感染症、腫瘍、明らかな神経圧迫など、痛みの原因を1つの病気や場所に特定できない腰痛のことです。

    WHO(世界保健機関)によると、腰痛の約90%がこのタイプとされています。

    では、なぜ痛いのか。

    そして、どうすればいいのでしょうか。


    なぜ痛い?「原因不明」とは少し違う

    腰には、筋肉、靱帯、椎間板(背骨の間にあるクッション)、小さな関節など、痛みを感じる可能性のある組織がたくさんあります。

    長時間同じ姿勢を続けた、重い物を持った、普段しない運動をした、といった負荷によって、こうした組織のどこかに刺激が加わって痛みが出ることは十分考えられます。

    ただ、

    「この筋肉が70%、この椎間板が30%悪い」

    というように原因を正確に切り分けることができない。

    これが非特異的腰痛です。

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    さらに痛みは、単純に「組織がどれだけ傷んでいるか」だけで決まるものでもありません。

    睡眠不足、ストレス、仕事環境、運動不足、過去の痛みの経験なども、痛みの感じ方や長引きやすさに影響します。

    これは「気のせい」という意味ではありません。

    現在の腰痛診療では、体の状態だけでなく、神経や生活環境なども含めて考えることが重要とされています。


    まず大切なのは「寝すぎないこと」

    腰が痛いと、

    「動いたらさらに悪くなるのでは?」

    と思って、なるべく動かないようにする人がいます。

    昔は腰痛になると安静を勧められることも多かったのですが、現在は考え方が変わっています。

    危険な病気や骨折などが否定的であれば、痛みの許す範囲で普段の生活を続けることが基本です。

    安静と活動を比較した10件、1,923人のランダム化試験をまとめたCochraneレビューでは、急性腰痛では、寝て安静にするよりも活動を続ける方が、痛みや日常生活機能でわずかに良い結果でした。

    つまり、

    「腰痛=寝て治す」ではない

    ということです。

    もちろん、痛みを我慢して無理に走ったり、重い物を持ったりする必要はありません。

    家の中を歩く、食事をする、可能なら仕事や日常生活を続ける。

    完全に動かないのではなく、できる範囲で動く。

    このくらいのイメージが現実的です。

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    痛み止めは使っていい?

    痛み止めは治療の一つです。

    代表的なのが、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの**NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬:炎症と痛みを抑える薬)**です。

    ただし「飲めば一気に治る薬」というわけではありません。

    急性腰痛5,356人を含む32試験をまとめたCochraneレビューでは、NSAIDsは偽薬より痛みを軽くしましたが、100点満点の痛みスケールで差は平均7.3点。

    統計上は有効でも、効果自体は小さいと評価されています。

    なので僕自身は、

    痛み止めだけで腰痛を治す

    というより、

    「痛みを少し抑えて、動いたり眠ったりしやすくするための補助」

    というイメージで考えています。

    NSAIDsには胃腸障害や腎機能への影響などもあるため、NICEも必要最小限の量を、できるだけ短期間使用することを推奨しています。

    ちなみにアセトアミノフェンについては、大規模なランダム化試験で急性腰痛の回復期間を短くしなかったことが報告されており、NICEも腰痛に対する単独使用は推奨していません。

    また、湿布も考え方としては似ています。
    飲み薬も、湿布もあくまで補助的な立ち位置であることには変わりありません。

    湿布・飲み薬の使い分けや、温湿布・冷湿布の違いは別の記事で解説していますので気になった方は以下の記事をご覧ください。



    長引く腰痛では「運動」がかなり重要

    発症してすぐの腰痛で、全員が特別な筋トレを始める必要はありません。

    一方、腰痛が長引いてくると、運動の重要性が上がります。

    慢性腰痛では、筋力トレーニング、有酸素運動、体幹運動、水中運動など、さまざまな運動療法に痛みや機能を改善する効果が示されています。

    ただし、

    「この運動だけが圧倒的に正解」

    というものは現時点ではありません。

    2021年の理学療法ガイドラインでも、慢性腰痛には幅広い運動療法が推奨されていますが、特定の運動法が常に他より優れているとはされていません。

    だから、

    「腰痛には絶対このストレッチ!」

    というより、

    自分が続けられる運動を、無理のない範囲で継続する

    ことの方が大切です。


    どれくらいで治る?

    発症して間もない腰痛の多くは、最初の数週間でかなり改善します。

    少し古い研究にはなりますが、急性腰痛について15研究をまとめたシステマティックレビューでは、発症から1か月で痛みと日常生活上の不自由さが平均約58%改善していました。

    一方で、腰痛は再発も多い症状です。

    同じレビューでは、1年以内に少なくとも一度再発した人は約**73%**でした。

    つまり、

    「一度腰痛になった=腰が壊れた」

    ではありませんが、

    一度治ったら二度と起きない病気でもない

    ということです。

    腰痛とうまく付き合いながら、普段の活動量や体力を維持していくことも大切です。


    睡眠やストレスも治療の一部

    特に3か月以上続く慢性腰痛では、

    「腰だけ治療すれば終わり」

    とはいかないことがあります。

    睡眠不足が続いていないか。

    仕事や家庭で強いストレスが続いていないか。

    痛みが怖くて必要以上に体を動かさなくなっていないか。

    こうした要素を見直すことも治療の一部です。

    WHOの慢性腰痛ガイドラインでも、運動や教育だけでなく、必要に応じて認知行動療法などの心理的アプローチを組み合わせることが推奨されています。

    これも、

    「精神的な問題だから腰が痛い」

    という意味ではありません。

    痛みは体・神経・生活環境が相互に影響しながら作られるため、その全部を治療対象として考えるということです。


    もう少し知りたい人へ

    非特異的腰痛は、一つの病気の名前ではありません。

    同じ「非特異的腰痛」でも、

    発症して3日目のぎっくり腰に近い人と、半年間ずっと腰が痛い人では、治療の考え方はかなり変わります。

    特に3か月以上続く腰痛は「慢性腰痛」と呼ばれ、単純に腰の組織だけを見るのではなく、運動、睡眠、心理面、仕事や生活環境なども含めた治療が重要になります。

    今後の記事では、

    「腰痛にはどんな運動がいい?」
    「コルセットは使った方がいい?」
    「湿布や痛み止めはどう使い分ける?」
    「マッサージや整体は効果がある?」

    といった治療についても、それぞれ分けて詳しく解説していく予定です。


    外来の裏話

    外来で非特異的腰痛と考えた患者さんに、

    「とにかく安静にしてください」

    と説明することは、僕はほとんどありません。

    むしろ、

    「痛い動作は無理にしなくていいけれど、できる範囲では普段通り動いてください」

    と説明することが多いです。

    特にぎっくり腰のような急性腰痛では、患者さん自身が

    「腰が壊れた」

    と思って、怖くて全く動かなくなっていることがあります。

    でも、危険な病気が否定的であれば、少しずつ日常生活へ戻していく方が基本です。

    逆に、何週間も改善しない、どんどん悪化する、足の力が入りにくくなるなど、経過が一般的ではない場合には、

    「本当に非特異的腰痛として見ていていいのか?」

    をもう一度考え直します。

    腰痛は、

    「最初の診断」だけでなく、「その後どう変化したか」を見ることも大切

    だと思っています。


    まとめ

    非特異的腰痛は、

    「原因がない腰痛」ではなく、「原因を一つの病気や場所に特定できない腰痛」

    です。

    そして治療の基本は、

    危険な病気がないことを確認したうえで、過度に安静にせず、できる範囲で活動を続けること。

    必要に応じて薬を使い、長引く場合には運動や生活習慣、睡眠なども含めて見直していきます。

    腰痛だからといって、腰を壊れ物のように扱う必要はありません。

    「無理はしない。でも怖がって動かなさすぎない」

    このバランスが、非特異的腰痛ではかなり大切です。

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    出来る範囲で、というのがポイントですね。何事もやりすぎは禁物です。

    参考文献

    1. World Health Organization. Low back pain. 2023.

    2. World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults. 2023.

    3. Hartvigsen J, et al. What low back pain is and why we need to pay attention. Lancet. 2018;391:2356-2367.

    4. Dahm KT, et al. Advice to rest in bed versus advice to stay active for acute low-back pain and sciatica. Cochrane Database Syst Rev.

    5. van der Gaag WH, et al. Non-steroidal anti-inflammatory drugs for acute low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2020.

    6. George SZ, et al. Interventions for the Management of Acute and Chronic Low Back Pain: Revision 2021. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51:CPG1-CPG60.

    7. Pengel LHM, et al. Acute low back pain: systematic review of its prognosis. BMJ. 2003;327:323.


    ※本記事は一般的な医学知識・目安としての情報提供を目的としています。医師法上、診察を行わずに個別の症状について診断したり、具体的な治療方針を指示したりすることはできないため、コメント等での個別相談にはお答えいたしかねます。

    一方で、「こういう場合は一般的にどう考えるの?」「この治療にはどんな考え方があるの?」といった疑問があれば、コメントで教えてください。個別の診断・治療にあたらない範囲で、今後の記事としてできる限りお答えしていきます。

    気になる症状がある場合や、症状が続く・悪化する場合は、医療機関を受診してください。

     
     
    現役整形外科専門医。 三次救急からクリニックまで幅広く経験しています。 小難しい話は抜きで、結論重視です。 腰痛・膝痛・子どもの怪我といった大きな悩みから、湿布は毎日貼っていいの?といった小さな疑問まで、エビデンスと臨床経験をもとに発信します。

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