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湿布と飲み薬、どっちが効くの?

    こんにちは。
    整形外科専門医です。ばりばりに臨床を行っております。
    最近は手術が多かったので何となく充実していた気がします。


    さて、本日は表題の通りです。湿布関係第2弾ということになります。
    今回はいくらか数字がでてくるので、念のため根拠となる論文を記載していますが需要ありますかね・・・
    見にくいだけだよ!と思った方はぜひコメントで教えてください。適宜修正します。

    では早速。

    結論

    「湿布だから弱い」「飲み薬だから強い」とは限りません。

    膝などの痛む場所がはっきりしている関節痛では、湿布などの外用NSAIDsでも、飲み薬のNSAIDsと同程度の鎮痛効果が期待できるというデータがあります。
    (ちなみにNSAIDsとはステロイドではないタイプの消炎鎮痛と思ってよいです。外用とは、ここでは =貼り、塗り薬です)

    実際、変形性関節症を対象にした8つのランダム化比較試験、計2,096人をまとめた解析では、外用NSAIDsと内服NSAIDsの痛みに対する効果に明確な差は認められませんでした。
    (Wang Y, et al. Medicine (Baltimore). 2022;101:e30354. Systematic review and meta-analysis)

    一方で、痛みが広範囲だったり、複数の場所が痛かったりする場合には、飲み薬の方が使いやすいことがあります。

    つまり、

    「どちらが強いか」ではなく、「どんな痛みに使うか」で選ぶ

    というのが実際に近い考え方です。

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    痛む場所がはっきりしている → 湿布・飲み薬に大きな差はない


    例えば、

    • 膝が痛い

    • 肘の外側が痛い

    • 足首を捻って痛い

    など、「ここが痛い」と指で示せるような痛みでは、湿布は使いやすい治療です。

    特に変形性膝関節症については、外用NSAIDsの効果に関するデータが比較的豊富です。

    2021年に報告されたネットワークメタ解析では、122のランダム化比較試験、47,113人が解析され、外用NSAIDsは内服NSAIDsと比べて機能改善効果に有意差を認めませんでした。
    (Zeng C, et al. Osteoarthritis Cartilage. 2021. Network meta-analysis, 122 RCTs, 47,113 participants)

    また、イギリスのNICEガイドラインでは、変形性膝関節症に対して薬物治療を行う場合、まず外用NSAIDsを使用することが推奨されています。外用薬が効かない、あるいは使用できない場合に内服NSAIDsを検討するという位置づけです。
    (NICE Guideline NG226, Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management, 2022)

    なので、

    「湿布は弱い薬だから、とりあえず湿布を出されている」

    とは限りません。

    痛みの種類によっては、湿布でも十分な効果が期待できます。


    広い範囲が痛い → 飲み薬の方が使いやすいことも


    一方で、

    「腰全体が痛い」

    「肩から腕にかけて広く痛い」

    「いろんな関節が痛い」

    という場合は、湿布では少し使いにくくなります。

    湿布は基本的に貼った周辺に作用する薬なので、痛みの範囲が広ければ、どこに何枚貼るのかという問題が出てきます。

    こうしたケースでは、飲み薬の方が実用的なことがあります。

    これは、

    内服の方が必ず強力だから

    というより、

    広い範囲をカバーしやすいから

    という意味合いが大きいです。


    「体の深いところの痛みには湿布は効かない」は本当?


    よく、

    「湿布は皮膚の表面にしか効かない」

    と思われています。

    しかし、これは正確ではありません。

    湿布に含まれる薬の成分は皮膚から吸収され、皮下組織や筋肉、関節周囲などの組織へ移行します。

    つまり、

    貼った皮膚だけに作用しているわけではありません。

    ただし、薬剤がどのくらい深い組織まで届くかは、薬剤の種類、製剤、貼付する部位などによって異なります。

    そのため、

    「浅い場所なら湿布、深い場所なら内服」

    と単純に分けられるほど明確なものではありません。

    腰痛や股関節痛だから必ず内服の方が効く、と断言できるだけの強い根拠もありません。


    胃への負担が心配なら湿布にはメリットがある


    湿布の大きなメリットの一つが、

    飲み薬よりも血液中に入る薬の量を少なくできること

    です。

    例えば、ジクロフェナク(NSAIDsの1種)の外用ゲルと内服薬を比較した研究では、外用薬による全身への薬剤曝露量は、内服薬の約5分の1〜17分の1でした。
    (Kienzler JL, Gold M, Nollevaux F. J Clin Pharmacol. 2010;50:50-61. Pharmacokinetic crossover study)

    このため、外用NSAIDsは内服NSAIDsに比べて、胃腸障害などの全身性副作用を抑えやすいと考えられています。

    先ほどの47,113人を含むネットワークメタ解析でも、外用NSAIDsによる胃腸系副作用のリスクは、内服NSAIDsと比較して約54%低いという結果でした。
    (Zeng C, et al. Osteoarthritis Cartilage. 2021. Network meta-analysis)

    この点は、湿布のかなり大きなメリットです。


    ただし「湿布なら副作用ゼロ」ではない


    ここは重要です。

    湿布でも、薬の成分は血液中に吸収されます。

    内服より少ないとはいえ、ゼロではありません。

    そのため、

    「腎臓が悪いから飲み薬はダメ。でも湿布なら何枚貼っても大丈夫」

    というわけではありません。

    腎機能障害、心不全、胃潰瘍・消化管出血の既往がある人、高齢者などでは、外用NSAIDsであっても使用量や使用期間には注意が必要です。

    NICEも内服NSAIDsを使用する際には、消化管・腎・肝・心血管系への影響や、年齢・併存疾患などを考慮するよう勧めています。
    (NICE Guideline NG226, Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management, 2022)

    湿布にも、皮膚炎や光線過敏症など、外用薬ならではの副作用があります。


    じゃあ結局、どう使い分ければいい?


    ざっくりした目安としては、

    膝・肘・足首など、痛む場所がはっきりしている場合
    → 湿布を使いやすいです。

    痛みの範囲が広い場合
    → 飲み薬の方が使いやすいことがあります。

    いくつもの場所が痛い場合
    → 飲み薬の方が向いていることがあります。

    胃への負担をなるべく減らしたい場合
    → 湿布を検討しやすいです。

    腎臓の機能が悪い、心不全がある、胃潰瘍などの持病がある場合
    → 湿布でも飲み薬でも、自己判断せず医師や薬剤師に相談した方が安全です。

    もちろん、実際には痛みの原因や病気の種類によって選び方は変わります。

    大事なのは、

    湿布=弱い、飲み薬=強い

    と考えないことです。


    まとめ


    湿布と飲み薬は、単純にどちらが強いかで比べる薬ではありません。

    変形性関節症では、外用NSAIDsと内服NSAIDsで痛みに対する効果に大きな差がなかったというデータがあります。
    (Wang Y, et al. Medicine (Baltimore). 2022;101:e30354)

    一方で、湿布は局所に使いやすく、内服は広い範囲の痛みに使いやすいという違いがあります。

    さらに湿布には、飲み薬に比べて全身への薬剤曝露を大幅に減らせるというメリットがあります。
    (Kienzler JL, et al. J Clin Pharmacol. 2010;50:50-61)

    なので、

    「どちらが強い?」ではなく、「自分の痛みにはどちらが向いている?」

    と考えるのがよいでしょう。


    もう少し知りたい人へ|湿布はどうやって効く?


    湿布に含まれるロキソプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェンなどは、**NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)**と呼ばれる薬です。

    NSAIDsは、COX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素を抑えることで、痛みや炎症に関係するプロスタグランジンの産生を減らします。

    飲み薬の場合は、

    消化管 → 血液 → 全身 → 患部

    という経路で薬が届きます。

    一方、外用NSAIDsは皮膚から吸収され、局所組織に薬剤を届けながら、血液中に入る薬の量を比較的少なくできます。

    ジクロフェナクでは、外用製剤の全身曝露量が内服の約5分の1〜17分の1だったという薬物動態研究があります。
    (Kienzler JL, et al. J Clin Pharmacol. 2010;50:50-61)

    この、

    「患部には薬を届けたい。でも全身にはなるべく回したくない」

    という考え方が、外用NSAIDsの特徴です。


    外来の裏話|僕はこんなふうに選んでいます

    ここからはガイドラインに書かれている話ではなく、私自身が日々の外来で処方するときの感覚です。

    患者さんが、

    「ここが腫れている」

    「ここを押したら痛い」

    「この場所を動かすと痛い」

    と、痛む場所をピンポイントで示せる場合、私は湿布を選ぶことが比較的多いです。

    反対に、

    「腰全体が痛い」

    「いろんなところが痛い」

    「今日はとにかくこの痛みを何とかしたい」

    という訴えでは、内服を選びやすくなります。

    また、患者さん自身の好みも意外と重要です。

    「飲み薬は胃が心配だから、できれば湿布がいい」

    という方もいれば、

    「毎日貼るのが面倒だから飲み薬がいい」

    という方もいます。

    さらに、腫れや内出血など目に見える変化がある場所に痛みを感じている患者さんでは、湿布のように患部へ直接治療していることが分かる方法の方が納得してもらいやすいと感じることがあります。

    これはあくまで私自身の臨床経験であり、

    「こういう患者には湿布の方が医学的に効く」と証明されているわけではありません。

    教科書では「NSAIDsを使用する」の一言で終わることでも、実際の外来では、病気の種類、副作用、痛む範囲、生活スタイル、そして患者さん自身の希望まで合わせて薬を選んでいます。



    ※本記事は一般的な医学知識・目安としての情報提供を目的としています。医師法上、診察を行わずに個別の症状について診断したり、具体的な治療方針を指示したりすることはできないため、コメント等での個別相談にはお答えいたしかねます。

    一方で、「こういう場合は一般的にどう考えるの?」「この治療にはどんな考え方があるの?」といった疑問があれば、コメントで教えてください。個別の診断・治療にあたらない範囲で、今後の記事としてできる限りお答えしていきます。

    気になる症状がある場合や、症状が続く・悪化する場合は、医療機関を受診してください。

     
     
    現役整形外科専門医。 三次救急からクリニックまで幅広く経験しています。 小難しい話は抜きで、結論重視です。 腰痛・膝痛・子どもの怪我といった大きな悩みから、湿布は毎日貼っていいの?といった小さな疑問まで、エビデンスと臨床経験をもとに発信します。

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