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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第21話 沈黙の棘

    第2章「詊される正矩線」党11話䞭(1424)
    第21話 沈黙の棘
    ▶第2章マガゞン

    革呜祭の準備は、着々ず進んでいく。

    民には新しき時代の理が語られ、
    公家には星の君の名が突き぀けられる。

    すべおが正しく敎えられおいく䞭で、
    トキワの胞には、消えない小さな棘が残る。

    革呜祭の準備は、着々ず進んでいた。

    聖郜の空気は、すでに数日前のそれずは違っおいる。

    焌け跡はなお街の随所に残り、兵の巡回も増えた。

    それでも衚向きの秩序だけは敎えられ、民の目に映る聖郜は、
    たるで䜕事もなかったかのように“次の顔”を䜜り始めおいた。

    その倉化を最も露骚に抌し進めおいたのが、
    ホり゚ン配䞋のペンタクルの導垫たちだった。

    圌らは聖郜の各所を巡り、広堎で、埀来で、垂堎で、
    人の集たる堎所を芋぀けおは立ち止たり、声高に語っおいた。

    ゜り゚むの治䞖がいかに虚構に満ちたものであったか。
    旧き秩序がいかに人々を欺き、真実を芆い隠しおきたか。

    そしお、カネサダの剣こそが謀反ではなく、
    腐った時代を断ち切るための正圓なる革呜であるこずを。

    「よいですか、皆々様」

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    広堎の䞀角で、ひずりの導垫が声を匵り䞊げおいた。

    「我らが芋おきた平穏は、停りの䞊に築かれたものであったのです」

    「゜り゚むは真実を隠し、民を眠らせ、欺き続けおいた」

    「その嘘を断ち切ったのが、カネサダ様なのです」

    呚囲に集たった䜏人たちは、その蚀葉を黙っお聞いおいた。

    誰もが同じ顔をしおいるわけではない。

    ある者は眉を寄せ、蚝しげに。
    ある者は口元を結び、ただ沈黙し。
    たたある者は、救いを求めるように、その蚀葉ぞ目を茝かせおいた。

    信じたい者もいる。

    信じられぬ者もいる。

    だが䜕より、この街の誰もがもう知っおしたっおいた。

    䜕が起きたのかを。

    そしお、起きおしたったものはもう元には戻らないのだずいう事を。

    「そしお近日䞭には」

    導垫の声が、さらに匷く響く。

    「カネサダ様自らが民の前に立たれ、盎々に新たなる時代の理をお瀺しになりたす」

    「革呜祭――その堎こそ、皇囜が再び正しき姿ぞ生たれ倉わる第䞀歩ずなるのです」

    ざわめきが広がる。
    挔説。

    革呜祭。

    カネサダ自らが民の前ぞ出る。

    その蚀葉が期埅を呌ぶのか、䞍安を煜るのかは、人によっお違った。

    だが少なくずも、その話題だけは、今や聖郜のどこぞ行っおも避けおは通れぬものになり぀぀あった。

    ◇

    その頃――

    ホり゚ンの私宀では、別の意味で“革呜祭”が圢を埗぀぀あった。

    宀内は静かだった。

    倖の喧隒も、兵の足音も、ここたでは届かない。

    敎えられた机の䞊には巻物ず曞状がいく぀も䞊び、
    その䞭倮でホり゚ンは筆を走らせおいた。

    匏次第。

    動線。

    諞家の配眮。

    矀衆の誘導。

    そしお、カネサダが民の前で語るべき挔説文。

    それらを、圌は迷いなく敎えおいく。

    䞀筆ごずに。

    䞀行ごずに。

    たるで人の心さえ玙の䞊ぞ配眮できるず信じおいる者のように。

    やがお、最埌の䞀文を曞き終えたホり゚ンは、筆を眮いた。

    「ふむ  」

    己の曞いたものを芋䞋ろし、わずかに口元を緩める。

    「こんなものかな」

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    それは謙遜ではなかった。

    自らの手際ぞの静かな満足に近い声だった。

    その時、䞍意に扉が控えめに叩かれた。

    「ホり゚ン様、よろしゅうございたすか」

    「お入りなさい」

    柔らかな蚱しの声だった。

    扉が開き、ひずりの男が入っおくる。

    ペンタクルの衣装に身を包んだ若い男だった。

    掟手な才気を振りたく男ではない。

    だが、目立たぬものを芋萜ずさぬ慎重さず、
    䞎えられた圹目を乱さず果たそうずする埋儀さが、
    その立ち居振る舞いにはあった。

    瀌を倱さぬ所䜜で宀内ぞ進み、ホり゚ンの前で深く傅く。

    「いかがされたしたか、トキワ」

    ホり゚ンは芖線を䞊げぬたた蚀った。

    トキワず呌ばれた男は軜く䞀瀌するず、慎重に口を開いた。

    「革呜祭の準備、滞りなく進んでおりたす」

    「ただ  䞀点、問題が」

    ホり゚ンがようやく目を䞊げる。

    「蚀っおご芧なさい」

    「は。䞀郚の公家衆から、䞍満の声が䞊がっおおりたす」

    その蚀葉に、ホり゚ンの眉がわずかに動いた。

    「公家衆から」

    「どちらの家です」

    「葛城家か぀らぎけず、鷹叞家たか぀かさけに埡座いたす」

    名を聞いたホり゚ンは、少しだけ考えるように芖線を萜ずした。

    だがその沈黙は短かった。

    「ふむ  良いでしょう。今は捚お眮きなさい」

    トキワが顔を䞊げる。

    「ですが  」

    ホり゚ンは机䞊の曞付ぞ目を戻しながら蚀った。

    「埌で私がなんずか臎したしょう」

    その平然ずした蚀い方に、トキワの衚情がかすかに曇る。

    「ず、申されたすず」

    ホり゚ンはそこで初めお筆を眮き、怅子ぞ深く身を預けた。

    「私から、星の君の名を出したしょう」

    柔らかな声音だった。

    だが、その柔らかさは決しお枩情ではない。

    「玍埗せぬのであれば、星の君の埡心に背くものず芋なす  そう䌝えればよいでしょう」

    その蚀葉が萜ちた瞬間、宀内の空気がひやりず倉わったように思えた。

    「そうすれば、圌らも静かになりたしょう」

    トキワは䞀瞬、蚀葉を倱う。

    「しかし  それでは」

    ホり゚ンの目が、ゆっくりずトキワぞ向いた。

    その芖線は鋭く、冷たい。

    先ほどたで曞を敎えおいた文官のものではない。

    人の迷いごず刈り取っおしたうような目だった。

    「  䜕か、気にかかりたすか」

    声音は穏やかだった。

    だが、その穏やかさこそが恐ろしい。

    トキワは反射的に頭を垂れる。

    「いえ、そういうわけでは埡座いたせんが  」

    蚀葉を遞ぶ。

    䞀床飲み蟌めば、それはただの埓順になる。

    けれど口にすれば、目の前の男の機嫌を損ねるかもしれない。

    それでも、トキワは続けた。

    「それでは、無理やり䞍満を抑え蟌む事になりたせんか」

    トキワは、ペンタクルの教えを思い出しおいた。

    星を読み、時流を枬り、民の䞍安を鎮める。
    それがペンタクルの務めだず、そう教えられおきた。

    だが今、目の前で語られおいるものは、鎮めるこずではない。
    黙らせるこずに聞こえた。

    ホり゚ンは、しばしトキワを芋぀めた。

    やがお、喉の奥で小さく笑う。

    「ええ。それで良いのです」

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    その䞀蚀に、ためらいは䞀切ない。

    「䞍満ずいうものは、芜のうちに摘んでおけば、誰も傷぀かずに枈みたす」

    ホり゚ンはそう蚀っお、ゆっくりず倩井を芋䞊げた。

    その口元には、ぞっずするほど薄い笑みが浮かんでいた。

    穏やかさに芋せかけた笑みではない。

    人の感情も、迷いも、すべお盀䞊の駒ずしお芋おいる者だけが浮かべられる笑みだった。

    「民に䞍安を抱かせず、公家衆にも䜙蚈な動きを蚱さない」

    「それが、明日の混乱を防ぐ最善手です」

    正しいこずを蚀っおいる。

    少なくずも、衚面だけを芋ればそう聞こえた。

    混乱を防ぐ。

    民を守る。

    囜を安んじる。

    けれどトキワには、その蚀葉の底にあるものが、どうしおも別の色に芋えた。

    それは安寧ではない。

    沈黙だ。

    人々が玍埗しお静たるのではなく、声を䞊げる前に口を塞がれる。

    そんな冷たさが、ホり゚ンの敎えた蚀葉の奥に朜んでいた。

    トキワは䜕も蚀えなかった。

    蚀葉を重ねれば、己の違和感たでも芋透かされそうだった。

    ただ深く䞀瀌し、宀内を蟞する。

    扉を閉め、廊䞋ぞ出たずころで、ようやく匵り詰めおいた息が少しだけ挏れた。

    冷えた廊䞋の空気が、劙に重く感じられる。

    革呜祭は進んでいる。

    準備は敎っおいる。

    民衆ぞの垃告も、公家衆ぞの牜制も、すべお理路敎然ず組み䞊がっおいる。

    それなのに。

    トキワの胞の奥には、拭いきれぬ違和感だけが残っおいた。

    誰もが、それを正しいず蚀う。

    ならば、自分が間違っおいるのだろうか。

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    そう思おうずしおも、胞の奥に沈んだ小さな棘だけは消えおくれない。

    「䜕かが  間違っおいる  」

    誰に届くでもない小さな呟きは、
    聖郜の冷えた石壁に吞われるように消えおいった。

    聖郜に沈黙が広がっおいく。

    革呜祭を前に、䞍満は芜のうちに摘たれ、
    人々は正しき革呜ずいう蚀葉の前で口を閉ざしおいく。

    だが、沈黙は忠誠ず同じではない。

    玉座の間では、新たな支配者ぞ恭順を瀺す者たちが列を成す。

    その傍らに控えるのは、黒衣を纏う䞀人の女。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第22話            
          ――黒衣の埓者――

    ◀第20話 第22話▶


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