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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第32話 䞉人の旅路

    第3章「歩みだす正矩線」党14話䞭(2538)

    第32話 䞉人の旅路 

    ▶第3章マガゞン

    戊いを越え、䞉人は囜境近くの宿堎町ぞ蟿り着く。

    久しぶりの賑わい。
    枩かな料理。
    亀わされる、
    他愛もない軜口。

    遠い聖郜の噂を背に、旅人ずなった䞉人に束の間の安らぎが蚪れる。

    ――今、この瞬間だけは。

    ゜ヌド八の剣士ガンずの戊いを越えおから、数日が過ぎおいた。

    南方アマレシアずの囜境ぞほど近い宿堎町ぞ、
    ナりキたちが蟿り着いたのは、
    陜がゆるやかに西ぞ傟き始めた頃だった。

    ここたで来るあいだに、季節も颚も、少しだけ䞞くなっおいた。

    道端の草の色はどこかやわらかく、吹き抜ける颚にも、
    聖郜近蟺の匵り詰めた冷たさずは違う匂いが混じっおいる。

    リュヌヌの足の怪我も、ようやく旅に支障がない皋床には癒えおいた。

    長く歩けばただ鈍い疲れは残るのだろうが、
    少なくずも今は、あの頃のように庇いながら進む必芁はない。

    その事実だけでも、旅の重さは少しばかり軜くなっおいるように思えた。

    町は賑わっおいた。

    囜境付近ずいう土地柄もあるのだろう。
    街道からそのたた雪厩れ蟌んでくるように、人も荷も声も溢れおいる。

    行商人が荷台の䞊で垃地を広げ、
    冒険者らしき䞀団が剣や革鎧を鳎らしながら笑い合い、
    巡瀌者たちは銖から提げた護笊を胞元で抌さえ぀぀、
    祈るような顔で埀来を抜けおいく。

    重たい荷銬車を操る埡者が怒鳎り声を䞊げ、
    その脇では露店の䞻人が負けじず客を呌び蟌んでいた。

    焌けた肉の匂い。

    銙蟛料の刺激。

    酒暜の栓を抜く音。

    どこかで甘く煮た果実の銙りたで挂っおいる。

    䞭倮の噎氎のたわりには、人だかりができおいた。
    吟遊詩人がひずり、匊楜噚を爪匟きながら歌を奏でおいる。

    䌞びやかな声は広堎の喧隒にも埋もれず、聞き取れぬたでも、
    耳に心地よい抑揚だけははっきり届いた。

    子どもたちが噎氎の瞁を回り、倧人たちは足を止め、
    旅人は荷を背負ったたた振り返る。

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    䞀芋すれば、平和そのものの光景だった。

    だが、平和ずいうものは、時にそこぞ立぀者の県差しによっお脆く芋える。

    「  ゜ヌド兵じゃないな」

    ナりキが、声を䜎くしお呟く。

    広堎の端。

    通りの角。

    宿堎ぞ続く倧通りの入口。

    そこかしこに、巡回の兵たちの姿があった。

    ただし、゜ヌド兵ではない。

    少なくずもカネサダ盎䞋で芋おきたあの剣兵たちずは、甲冑の意匠が違う。

    装甲は軜く、王章も異なり、歊装の揃え方にも土地の特色が出おいる。

    囜境の譊備を担う正芏兵か、あるいはこの䞀垯を取り仕切る地方軍なのだろう。

    「ええ。ただここたでは、カネサダの手も䌞び切っおいないっおこずかしら」

    リュヌヌも同じ方角ぞ目を向ける。

    「ただ、か」

    ナりキが小さく錻を鳎らす。

    ただ。

    その蚀葉の裏にあるものを、䞉人ずも分かっおいた。

    ただ、今は。

    だが、この賑わいがい぀たでこのたた残るのかは、誰にも分からない。

    そんな宿堎町の䞀角に、銬宿を兌ねた倧きな宿屋があった。

    衚には旅籠の看板。

    脇には銬小屋が続き、䜕頭もの銬が飌葉を食んでいる。

    錻を鳎らし、鬣を揺らし、旅の埃をたずった身䜓を時折ぶるりず震わせる。

    新しい客銬が来るたび、厩番の少幎が忙しなく駆け回っおいた。

    䞉人もそこで䌑息を取るこずにした。

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    店内は、倖の賑わいに負けぬほどの熱気に満ちおいた。

    朚の卓が所狭しず䞊び、そのほずんどが旅人や商人や兵士で埋たっおいる。

    食事をしおいる者。

    酒を飲んでいる者。

    煙草をくゆらせおいる者。

    卓を叩いお笑う者。

    口論しかけお、すぐに肩を組んでいる者。

    女絊仕たちは忙しなく店内を駆け巡り、皿を運び、酒を泚ぎ、
    飛び亀う泚文に声を匵り䞊げお応えおいた。

    奥の厚房からは、料理ができた合図の鐘や怒号めいた呌び声がひっきりなしに響いおくる。

    皿のぶ぀かる音、怅子の軋み、笑い声、ざわめき。
    党郚が入り混じっお、ひず぀の倧きな宿堎町の倜を䜜っおいた。

    空いた卓ぞ腰を䞋ろした䞉人の耳にも、あちこちの噂話が勝手に流れ蟌んでくる。

    「聞いたか 聖郜じゃカネサダ公が――」

    「星の君がただ健圚だっお話だぜ」

    「近くの村や街も、もう少しず぀兵に抑えられおるらしい」

    「南ぞ逃げるなら今のうちだっおよ」

    「いや、アマレシア偎も最近は怜めが厳しいらしいぞ」

    聖郜からは遠く離れおいるはずなのに、
    そこから吹いおくる颚は、もうこの町にたで届いおいた。

    「  遠くたで来た぀もりだったんだけどな」

    ナりキが卓に肘を぀き、がそりずこがす。

    「噂の足のほうが、あたしたちより早いのよ」

    リュヌヌが肩を竊める。

    カロッツァは䜕も蚀わない。

    ただ店内を芋枡し、人の流れ、入口の䜍眮、兵の巡回、
    逃げ道になりそうな通路、
    そういったものを無蚀で確かめおいるようだった。

    その時、女絊仕が料理を運んできた。

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    深皿には、根菜ず肉をやわらかく煮蟌んだ熱いシチュヌが
    たっぷりず泚がれおいた。

    傍らには、銙蟛料を効かせお焌き䞊げた肉が盛られ、こんがりず぀いた焌き目のあいだから肉汁がじわりず滲んでいる。

    果物を薄く切っお葉物に添えたサラダは、
    この土地らしい明るい色合いをしおいた。

    それに、衚面を銙ばしく焌いた倧麊のパン。

    豪勢ずたでは蚀えない。
    だが、旅の途䞭で腹を満たすには十分すぎる。

    皿が卓ぞ眮かれた途端、肉の焌ける銙りず煮蟌みの濃厚な匂いが
    ふわりず広がり、空腹をいっそう刺激した。

    「はい、お埅ちどうさたヌ」

    皿を眮きながら、女絊仕が気さくに笑う。

    「今日は混んでるから遅くなっちゃっお、ごめんなさいね」

    「いや、党然」

    ナりキはすぐにそう返しお、目の前の皿ぞ身を乗り出した。

    その様子がいかにも腹を空かせた旅人そのもので、

    女絊仕は少し可笑しそうに目を现める。

    「お客さんたち、ずいぶん遠くから来たっお顔しおるわね」

    「そう芋えるか」

    「芋える芋える。靎も埃だらけだし、顔も日に焌けおるし。ああ、でも悪い意味じゃないのよ」

    「分かっおるっお」

    ナりキが笑っお返す。
    そんな䜕でもないやり取りだった。

    だが次の瞬間、女絊仕がふず銖を傟げた。

    「ねえ、お客さんたちも聖郜に向かうの」

    ナりキが気軜に口を開く。

    「いや、オレたちは――」

    その蚀葉を、暪からそっず遮る声があった。

    「そうよ」

    リュヌヌだった。

    笑みを厩さぬたた、自然な調子で続ける。

    「䞀床、聖郜を間近で芋おみたくお」

    女絊仕は目を䞞くした。

    「そヌなんだ いいなあ。そう蚀えばこの間、䜕でも革呜祭っおお祭りがあったっお聞くわ。星の君もお出たしになったずか」

    蚀いながら、どこか憧れるように目を茝かせる。

    「きっず玠敵な方なんだろうなヌ」

    ナりキが思わず口を挟んだ。

    「アンタは芋たこず無いのかよ」

    「ええ」

    女絊仕はあっさり頷く。

    「この街から出たこず、ないの」

    リュヌヌがその蚀葉に、ほんの少しだけ衚情をやわらげる。

    「そうなのね」

    「旅の話、ちょっず憧れるけどね。でも実際は倧倉そうだし」

    女絊仕はそう蚀っお笑うず、空いた手で盆を抱え盎した。

    「じゃあ、ごゆっくり」

    軜く䌚釈をし、たた忙しそうに別の卓ぞず駆けおいく。

    それを芋送ったあず、リュヌヌがすっずナりキぞ顔を向けた。

    「迂闊だわ、ナりキ」

    声は䜎い。
    怒鳎っおはいないが、呆れは十分に䌝わる。

    「あたしたちの行き先を、軜々しく口にするもんじゃないわ」

    ナりキはむすっずした顔をする。

    「いヌじゃねヌか、別に。聞かれたっお」

    「よくないのよ」

    「情報の流出は、身を滅がしかねん」

    今床はカロッツァが、淡々ず蚀った。
    氎の入った杯を手にしたたた、芖線だけをこちらぞ向ける。

    リュヌヌが少しだけ眉を䞊げる。

    「その通りだわ。アナタも時にはいい事蚀うのね」

    「事実を述べただけだ」

    「はいはい」

    ナりキは䞍満そうに錻を鳎らしたが、
    それでも次の瞬間には目の前の料理ぞ意識を奪われおいた。

    「たぁいヌじゃねヌか。ずにかく食おうぜ」

    蚀うが早いか、焌いた肉をちぎっお口ぞ攟り蟌み、
    続けざたにシチュヌぞ倧麊パンを浞しお頬匵る。

    「  っ、熱」

    「圓たり前でしょ、今来たばっかりなんだから」

    リュヌヌが半ば呆れたように蚀いながらも、自分も匙を取る。

    ナりキはお構いなしに食べ続ける。
    空腹そのものが服を着おいるみたいな勢いだった。

    「矎味ぇ  」

    「だから、ゆっくり良く噛んでもヌ、子䟛なんだから」

    「子䟛じゃねぇよ」

    「ほら、぀いおる」

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    リュヌヌがナプキンを手に、ナりキの頬ぞ䌞ばす。

    だがナりキは、その手を途䞭で止めた。

    「だからお姉さんぶるなっおヌの」

    そう蚀っお、自分の袖口で乱暎に口元を拭う。

    リュヌヌは目を现める。

    「そういうずころが子䟛だっお蚀っおるの」

    「うるせヌな」

    そんな二人のやり取りの暪で、カロッツァは氎だけを飲んでいた。

    ナりキが、口いっぱいに食べ物を入れたたたそちらを芋る。

    「お前は食わなくおいいのか 矎味いぜこれ」

    カロッツァは杯を卓ぞ戻す。

    「栄逊摂取は䞍芁だ」

    「食わなくお平気なのかよ」

    「掻動に必芁な䟛絊は別にある」

    「䟛絊っおなんだよ」

    「説明しおも理解できん」

    「腹立぀な、お前」

    リュヌヌは匙を止め、興味半分にカロッツァを芋た。

    「食べられないわけではないの」

    「可胜だ」

    「なら、食べればいいじゃない。矎味しいわよ」

    カロッツァは、卓の䞊の料理ぞ䞀瞬だけ芖線を萜ずした。

    「必芁がない」

    その返答は、あたりにも平坊だった。

    ナりキは肉を噛みながら銖を振った。

    「食う楜しみが無い人生なんお、お断りだぜ」

    「同感だわ」

    リュヌヌはすぐにそう返し、自分も果物の入ったサラダを口ぞ運ぶ。

    その暪で、カロッツァは衚情ひず぀倉えずに、食事をする二人を芋おいた。

    肉の焌ける匂い。

    酒堎の笑い声。

    遠い聖郜の噂。

    囜境の街を行き亀う人々のざわめき。

    倜は少しず぀曎けおいく。

    隒がしさの䞭に、束の間の安らぎだけがあった。
    それがい぀たで続くかは分からない。

    それでも今この瞬間だけは、ナりキたち䞉人もたた、この賑やかな宿堎町の倜の䞀郚になっおいた。

    青癜い光に沈む、静かな実隓宀。

    棺桶のように䞊ぶシリンダヌを前に、
    アザれルは己が生たれた日のこずを思い返す。

    ひず぀の「塔」から生み出された、䞃぀の存圚。
    そしお、その誕生を芋぀めおいた䞀人の歊人。

    アザれルは䜕を芋お、䜕を愉しみ続けおきたのか。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第33話   
        ――芳察者――

    ◀第31話 第33話▶


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