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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第3話 北境界焊土戊(ほっきょうかいしょうどせん)

    第1章「蚗された正矩線」党13話䞭 
    第3話 北境界焊土戊
    ▶第1章マガゞン

    深倜、゜り゚むの私宀に入るカネサダ。

    ゜り゚むは䜙裕の笑みでカネサダを迎え入れる。

    カネサダは゜り゚むに真意を問い質す。

    「䜕故です、陛䞋  」

    控えおいた偎女たちが、はっず息を呑んだ。

    倜曎けの私宀に、䜕の前觊れもなく螏み蟌んでくる者など、
    本来あっおはならない。
    なのに、珟れた男は、そんな堎の空気をたるで意に介しおいなかった。

    雚気をたずったたた、ひずりの男が静かに宀内ぞ足を螏み入れる。

    足音はほずんどない。
    だが、その存圚だけで郚屋の空気が䞀倉した。

    「  カネサダ様」
    「なぜ、ここに  」

    偎女たちの間にざわめきが走る。

    ゜り゚むは盃を傟け、ひずくち酒を含むず、
    正面に立぀男をゆっくりず芋据えた。

    「  カネサダ」

    䜎く、静かな声だった。

    「なぜここにいる」

    「貎様には最前線の指揮を任せおいるはずだが」
    「歊門の長たるものが、このような時分に無粋であろう」

    その声音には咎める色こそあれど、怒気はない。
    むしろ、この堎に珟れた男が䜕を蚀いに来たのか、
    倀螏みしおいるような冷たさがあった。

    だが、カネサダは䞀歩も退かない。

    ゜り゚むを前にしおなお、その身じろぎひず぀しない姿は、
    もはや臣䞋ずいうより、巚倧な岩塊のようですらあった。

    芋かねたように、偎女の長が声を匵る。

    「゜り゚む様を前にしお、䜕たる無瀌」
    「カネサダ、控えよ」

    その声にも、カネサダは目すら向けない。

    やがお、重い口がゆっくりず開いた。

    「  ゜り゚む様」

    その呌びかけには、ただ瀌が残っおいた。
    怒りを抌し殺し、最埌の䞀線だけは守ろうずするような、
    ひどく硬い声音だった。

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    「お聞きしたき儀があり、参䞊仕った」

    ゜り゚むは目を现める。

    「ほう  」
    「䞻君を前にしお分をわきたえぬ者が、䜙に儀を問うずな」

    その蚀葉にも、カネサダは揺るがない。

    ただ、芖線をたっすぐに据えたたた、蚀葉を継いだ。

    「ノァルガルドずの囜境における戊――北境界焊土戊ほっきょうかいしょうどせん」

    郚屋の空気が、わずかに匵り詰める。

    「  なぜ、あのような呜を䞋されたのです」

    その蚀葉ず同時に、カネサダの脳裏に蘇ったのは、
    焌き぀くような戊堎の蚘憶だった。

    ◇

    囜境の城塞郜垂を巡る戊いは、すでに長く続いおいた。

    進んでは抌し返され、奪っおは奪い返される。
    ルミナリア皇囜軍ずノァルガルド兵団は、
    郜垂呚蟺の平野ず防壁を舞台に、
    幟床も進軍ず撀退を繰り返しおいた。

    ノァルガルド兵団を構成するのは、韍人、獣人、有角族、巚人族、翌人族をはじめずした亜人たちだった。

    剛囜ノァルガルド。

    か぀お倧陞各地で虐げられおきた亜人たちが、
    倧アルカナ「皇垝」の継承者、解攟王ガルドゥスのもずに集い、
    力によっお生存の堎を勝ち取った西方の囜家。

    皇囜から芋れば、秩序を乱す䟵略者。
    だが圌らにずっおは、二床ず奪われぬために牙を持った者たちの囜だった。

    空は灰色に曇り、地は泥に沈み、血の匂いが颚に混じる。

    砕けた盟。
    折れた槍。
    打ち捚おられた屍。

    その䞭で、神嚁たちはなお戊っおいた。

    皇囜軍の䞭でも、最前線を担うカネサダ盎䞋の神嚁の粟鋭たちは、
    ただ敵を斬るだけではなかった。

    厩れた陣を支え、倒れた味方を退かせ、
    逃げ遅れた民を埌方ぞ逃がしながら、それでも前ぞ出おいた。

    圌らは、もっずも危険な戊堎を受け持぀尖兵だった。

    城塞郜垂を奪われれば、その先にいる皇囜民はさらに戊火に呑たれる。

    だから退けなかった。
    だが、戊況は苊しかった。
    抌しおも厩せない。
    守っおも削られる。

    戊線は埐々に痩せ现り、
    このたたでは皇囜軍そのものが抌し朰されるのは明らかだった。

    そこでカネサダは決断した。
    自らが先陣を切る、ず。

    「フォルツァ」

    䜎く呌ぶ。

    その声に応えるように、
    戊堎埌方に控えおいた巚躯の鎧歊者――フォルツァが前ぞ出た。

    黒鉄の巚躯が、䞻の決断に応じるように静かにうなりを䞊げる。
    胞郚、肩、腰、䞡腕。

    党身に埋め蟌たれた機構がひず぀ず぀解攟され、
    たるで眠っおいた兵装庫そのものが目を芚たすように、
    重い駆動音が戊堎ぞ響き枡った。

    敵も味方も、思わず息を呑む。

    フォルツァの胞郚装甲が、䜎い駆動音ずずもに開いた。
    内偎から挏れたのは、血のように濃い真玅の光だった。

    カネサダは䞀歩、前ぞ出る。
    泥に沈む戊堎のただ䞭で、盎立䞍動のたた䞡腕を倧きく広げた。

    逃げも、迷いもない。

    雚も、泥も、敵兵の怒号も、その瞬間だけ遠ざかったように感じられた。

    次の瞬間、フォルツァから攟たれた皲光が、
    黒い茚の蔓のようにカネサダの党身ぞ絡み぀いおいく。

    それは瞛るためではない。
    遞ばれた䞻を、戊装ぞず倉えるための接続だった。

    黒い皲劻が皮膚を走り、骚栌をなぞり、筋肉の茪郭を奪う。

    真玅の光が、胞の䞭心で脈打぀。

    肩に重装甲が圢成される。
    腕を歊装骚栌が包み蟌む。
    脚郚に黒鉄の倖殻が噛み合う。

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    装甲の継ぎ目から、真玅の光が噎き䞊がった。
    真玅の双眞の兜がカネサダの顔を包み蟌む。

    最埌に、胞郚の䞭栞機構が䜎く唞る。
    赀い光が䞀瞬、戊堎の雚を染めた。

    そこに立っおいたのは、もはやただの歊人ではなかった。

    黒鉄ず真玅で構成された異圢の歊者。
    戊堎における殺戮ず制圧、その最適解のみを寄せ集めた戊士。

    カネサダは、䜎く告げた。

    「芇王顕珟はおうけんげん」

    ヌヌ芇王骞はおうがい

    フォルツァを媒介ずしお顕珟し、カネサダが着装する、
    歊門最匷の真玅の戊装。

    力の継承者の真の姿。
    それは守るための鎧ではない。

    戊堎を螏み朰し、敵を制圧し、勝利を奪い取るためにのみ存圚する、
    力の具珟だった。
    最埌の装甲が噛み合った瞬間、戊堎の空気が倉わった。

    兵たちが息を呑む。
    敵がたじろぐ。
    ただ立぀だけで、圧が違った。

    カネサダはそのたた前ぞ出た。

    螏み蟌みひず぀で、泥濘が爆ぜる。

    振るう倪刀が敵兵を薙ぎ払い、フォルツァから䟛絊される歊装
    が防壁を砕き、抌し朰されかけおいた皇囜軍の戊線を
    無理やり前ぞ抌し戻しおいく。

    カネサダが右手をフォルツァぞ翳す。

    フォルツァの背から、巚倧な片刃の剣が射出されるように飛び出した。

    カネサダはそれを匕き抜くやいなや、敵軍ぞ突進する。

    「でやぁぁぁぁ」

    身の䞈を超える片刃の剣「断城刀だんじょうずう」を軜々ず振り抜き、
    ノァルガルド兵を次々ず薙ぎ払う。

    厩れかけおいた陣が持ち盎す。
    兵たちの声が倉わった。

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    「カネサダ様に続け」

    ノァルガルド兵団は、たしかに埌退し始めおいた。

    抌せる。
    今なら抌し切れる。

    そうしおカネサダは、皇囜軍を率いお城塞郜垂の䞀歩手前たで
    敵を远い蟌んだ。

    だが、そこでノァルガルド兵団は郜垂の䞭ぞ退いた。

    巚倧な城門の向こう。
    堅牢な石壁の内偎。

    圌らは城塞郜垂そのものを防壁ずしお䜿い、籠城戊ぞ移った。

    それは卑劣ずいうより、戊堎の理に適った刀断だった。
    劣勢ずなった兵を城壁の内ぞ収め、
    郜垂の構造を利甚しお皇囜軍の進軍を止める。

    生き延びるために、持おるものをすべお䜿う。
    ノァルガルドの兵たちは、その思想を戊堎で䜓珟しおいた。

    城塞郜垂には、ただ皇囜民がいた。
    逃げ遅れた者がいる。

    負傷しお取り残された味方兵もいる。

    芇王骞の力を解攟し、郜垂ごず吹き飛ばせば敵は消える。
    だが、同時に守るべきものもたた消える。

    䞡軍は郜垂を挟んで睚み合った。

    城塞の前に陣を敷き、砊を築き、矢を亀え、
    小競り合いを繰り返しながらも、決定打はない。
    皇囜軍も、ノァルガルド兵団も、互いに動けぬたた時だけが過ぎおいった。

    その膠着は、すでに数日続いおいた。

    そしお、そこぞ早銬が来た。

    泥ず血にたみれた䜿者は、息を切らしながら本陣ぞ駆け蟌み、
    ゜り゚むの呜を携えおカネサダの前に膝を぀く。

    差し出された呜什曞は、雚に濡れおいながら、いやに鮮明だった。

    ――城塞郜垂は、すでに皇囜の手を離れた。
    ――敵に奪われた街は、やがお皇囜を裂く刃ずなる。
    ――残る民を惜しむな。
    ――残る兵を惜しむな。
    ――街は攟棄。
    ――党おを砎壊せよ。

    最埌の䞀文に目が觊れた瞬間、䜕かが止たった。

    城壁の向こうには、ただ生きおいる者たちがいる。

    守るためにここたで抌し䞊げた。
    そのために、どれほどの血を流したず思っおいる。

    それを、捚おろずいうのか。

    呜什曞を握ったたた、カネサダは動けなかった。

    その沈黙の暪で、フォルツァが動いた。
    黒い巚躯が、音もなく城塞の前ぞ出る。
    あたりに自然で、あたりに無造䜜な䞀歩だった。

    カネサダが呜じるより早く、フォルツァは皇呜を受け取っおいた。

    その異様さに、皇囜軍もノァルガルド兵団も、
    䞀瞬、戊うこずすら忘れたようにフォルツァを凝芖した。

    誰も動けない。
    誰も、その次に䜕が起こるのか理解できない。

    ただ、静かに颚が吹いおいた。

    城壁の䞊から、ノァルガルドの亜人兵が叫ぶ。

    「秩序を掲げる皇囜が、民ごず城を撃぀぀もりか――」

    だが、蚀葉が最埌たで届くこずはなかった。
    その瞬間、フォルツァの目が、䞀瞬だけ光を垯びた。

    次いで、䞡腕に内蔵された機構が、カチャ、カチャ、
    ず也いた音を立おお展開しおいく。

    装甲の隙間から珟れたのは、幟重にも組み合わさった砲身。
    異様なたでに無機質で、異様なたでに敎然ずした、
    回転匏倚砲身機関砲かいおんしきたほうしんきかんほうだった。

    フォルツァは䞡腕を城塞ぞ向けお突き出す。

    次の瞬間、火を吹いた。

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    石壁を砕き、建物を穿ち、立お籠もる敵兵を、逃げ惑う民を、
    取り残された味方兵を、䜕もかも区別なく匟䞞が食い砎っおいく。

    叫び声が䞊がる。
    助けを呌ぶ声が響く。
    だがそのすべおを、無機質な連射音が塗り朰しおいった。

    厩れ萜ちる城壁。
    吹き飛ぶ肉片。
    雚に混じる赀。

    そしお、それを芋おいるこずしかできない自分。

    守るために戊った。
    守るために前ぞ出た。
    芇王骞たで着装しお抌し䞊げた。

    なのに最埌に残ったのは、䞻君の呜ひず぀で、
    民も味方も街ごず消し飛ばされおいく光景だけだった。

    芋おいるこずしか、できなかった。

    あの日からずっず、その問いだけが胞に刺さっおいる。

    ――なぜだ。

    ◇

    雚音が、窓の倖で䜎く鳎っおいた。

    ゜り゚むの私宀。
    豪奢な灯火。
    盃を手にした䞻君。

    そしお、その前に立぀自分。

    カネサダは、ゆっくりず顔を䞊げた。

    「なぜです」

    声は䜎かった。

    だが、その奥で、抑え蟌たれた怒りが焌け぀いおいた。

    「民を守るために戊った者たちを」
    「その民もろずも焌き払えず」
    「なぜ、あのような呜を䞋されたのです」

    ゜り゚むは、しばらく䜕も蚀わなかった。
    ただ、盃を手にしたたたカネサダを芋据えおいる。

    その目に、悔いはなかった。
    驚きすら、薄い。

    たるで、い぀かこの問いが来るこずを知っおいたかのように。

    やがお゜り゚むは、静かに盃を眮いた。

    「  そのための神嚁であろう」

    その䞀蚀が、郚屋の空気を凍らせた。

    ゜り゚むから攟たれた蚀葉は痛烈にカネサダの心を貫いた。

    その答えが䞀線を超えた時、カネサダの決意が定たる。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第4話       
      真人たひずず神嚁かむい

    ◀第2話 第4話▶


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