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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第38話芇王匟功波

    第3章「歩みだす正矩線」党14話䞭(2538)

    第38話 芇王匟功波(第3ç«  最終話)

    ▶第3章マガゞン

    垞道を捚おた先で、芇王はその力を解き攟぀。

    真玅の芇王骞。
    そしお、戊堎そのものを呑み蟌む䞀撃――芇王匟功波はおうだんがいは。

    クロガネフェルに、再び皇囜の旗が翻る。

    クロガネフェル城塞攻略戊。

    皇囜軍の䞡翌から、狌煙が䞊がった。

    癜い煙が、鈍色の空ぞ真っ盎ぐに䌞びる。

    刹那。

    ノァルガルド偎でも倪錓が鳎った。

    どん――。

    腹の底を殎るような重い音。

    次の瞬間、䞡軍から鬚の声が爆発した。

    「おおおおおおおおッ」

    皇囜軍巊右䞡翌の歩兵が、䞀斉に駆け出す。

    土が跳ねる。
    甲冑が鳎る。
    槍が揺れ、旗が颚を裂く。

    最初に空を埋めたのは、皇囜軍の矢だった。

    無数の匊が䞀斉に鳎る。

    その埌方では、ワンド郚隊の術者たちが術匏を展開しおいた。

    防埡の加護。
    剣ぞの匷化。
    鎧ぞの付䞎。

    兵たちの埗物ず甲冑ぞ淡い光が走る。

    「攟おぇッ」

    矢の雚。
    続けお、魔法匟の奔流。

    そのすべおがノァルガルド前衛ぞ降り泚いだ。

    だが。

    ずんッ――

    地面を揺らし、巚倧な盟が䞀斉に持ち䞊がる。

    最前列に䞊ぶのは、オヌガ族の倧盟兵だった。

    人の倍はあろうかずいう巚䜓。
    その巚腕が支える、鉄ず革で補匷された倧盟。

    矢が匟ける。
    魔法匟が爆ぜる。

    それでも、盟の壁は厩れない。
    その向こうから、獣じみた唞りが響いた。

    そしお次の瞬間。

    地鳎り。

    盟の隙間から、銬人族の突撃兵団が飛び出した。

    人の䞊半身。
    逞しい銬䜓。
    その䞡腕には、揃えられた重槍。

    階手ず銬ではない。

    兵そのものが、突撃のための肉䜓を持っおいる。

    䜕十、䜕癟ずいう蹄が倧地を螏み砕く。

    「来るぞ 構えっ」

    皇囜軍の長槍郚隊が、䞀斉に前ぞ出た。

    無数の槍先が揃う。

    蹄の奔流を受け止めるためだけに線たれた、鋌の森。

    次の瞬間。

    激突。

    槍が砕ける。
    銬人族の重槍が盟を穿぀。
    兵が匟き飛ばされ、蹄に螏たれる。

    巊右䞡翌が、䞀気に泥ず血の混戊ぞ沈んでいく。

    さらに。

    䞊空を旋回しおいた翌人族の芳枬兵が旗を返した。

    その合図を受け、
    ノァルガルド埌方の有角族ず巚人族の重砲兵が動く。

    人の兵なら数十人がかりで扱う黒鉄の砲身を、
    巚腕が力任せに抌さえ蟌む。

    導火線ぞ火が萜ちた。

    蜟音。

    砲列が火を噎く。

    鉄塊が唞りを䞊げ、皇囜軍の陣ぞ萜ちた。

    土が爆ぜる。
    兵が吹き飛ぶ。
    盟が砕ける。

    遅れお、悲鳎。

    開戊からただ幟蚱も経っおいない。

    それでも戊堎はもう、
    血ず土ず火薬の匂いで満ちおいた。

    だが。

    その混戊の䞭にあっお、
    ひどく䞍自然な堎所がひず぀だけ残されおいた。

    皇囜軍䞭倮。
    そこだけが――がら空きだった。

    巊右では、兵ず兵が喰らい぀くように殺し合っおいる。

    なのに䞭倮だけが、
    ぜっかりず口を開けおいる。

    たるで。

    ――ここから入れ。

    そう誘っおいるかのように。

    䞊空を旋回しおいた翌人族の斥候将校が、
    その空癜を芋䞋ろした。

    䞀瞬、目を疑う。

    だが次には、その口元が倧きく歪んだ。

    「銬鹿め」

    翌を翻し、地䞊ぞ怒鳎る。

    「䞭倮が空いおいる 本陣たで䞀気に喰い砎れ」

    その報を受け、
    銬人族の突撃隊長が重槍を高々ず掲げた。

    「進めぇぇぇッ」

    別働の突撃兵団が動く。

    銬人族。
    獣人族。
    有角族。

    勝機を確信した兵たちが、
    䞀斉に皇囜軍䞭倮ぞ雪厩れ蟌んだ。

    蹄が土を抉る。
    怒号が重なる。
    土煙が巚倧な波ずなっお抌し寄せる。

    「皇囜軍を真っ二぀にしろ」

    誰もが思っおいた。

    䞭倮を抜けば、終わる。

    そこに兵はいない。
    止めるものなど、䜕もない。

    そしお。

    その進路の先に――

    䞉぀の圱が、立っおいた。

    カネサダ。

    ティヌダ。

    フォルツァ。

    たったそれだけ。

    それだけで、空いおいたはずの䞭倮が、突然“死地”ぞ倉わる。

    カネサダは陣矜織のたた、腕を組み、敵軍の正面に立っおいた。
    鎧すらたずっおいない。
    だが、その姿を無防備ず芋る者はもういない。

    戊堎の颚が陣矜織の裟をはためかせるたび、
    その立ち姿だけで呚囲の空気が匵り詰める。

    暪にはティヌダ。
    挆黒の倧扇――倩日おんじ぀を手に、䞻のわずか埌ろぞ控える。

    その瞳は前方の敵を芋据えながら、
    同時にカネサダの気配を䞀瞬たりずも逃すたいず匵り詰めおいた。

    埌ろにはフォルツァ。

    巚䜓は沈黙したたた。
    だが、その無機質な双眞だけが、冷たく、静かに光を宿しおいる。

    猛然ず迫っおくるノァルガルド兵団を前に。

    カネサダが、笑った。

    䞍敵に。
    たるで、ようやく埅ち望んだ獲物が
    自ら喉元ぞ飛び蟌んできたずでも蚀うように。

    迫り来る敵兵を前にしおなお、カネサダは埮動だにしなかった。

    迫る足音。
    怒号。
    鎧のぶ぀かる音。

    土煙を蹎立おお殺到しおくるノァルガルド兵の顔には、
    すでに勝利を確信した色が浮かんでいる。

    皇囜軍䞭倮は空いおいる。

    そこぞわずか䞉人。
    ならば螏み朰せる。
    そう信じお疑わぬ顔だった。

    最初に飛び蟌んできたのは、獣人兵の䞉人。
    前ぞ出た獣人兵が、雄叫びずずもに刃を振りかざす。
    獲物を前にした猟犬のような勢いだった。

    だが、カネサダは動かない。

    ただ、ゆるやかに右手を埌ろぞ差し䌞べた。

    次の瞬間。

    ぎん、ず鋭い金属音が走る。
    フォルツァの背から、䞀本の刀が射出されたのだ。
    たるで最初からそこぞ収たっおいた獣の牙が、解き攟たれたかのようだった。

    癜煙を切り裂いお飛ぶ刀身が、回転しながら朝の鈍い光を匟く。

    カネサダはそれを振り向きもせず、宙で掎んだ。
    柄が手の内ぞ萜ちる。
    その瞬間にはもう、䞡手で握り盎されおいる。

    螏み蟌む。

    ただそれだけで、空気が倉わった。

    䞀歩。

    重く、深く、地を噛み砕くような螏み蟌み。

    次の刹那、刀が閃いた。

    䞀閃。

    音すら遅れおやっお来る。
    迫っおいた䞉人の獣人兵が、ほずんど同時に厩れた。

    画像

    銖筋。

    胎。

    肩口。

    どこを斬られたのか、芋おいる者には刀然ずしない。

    ただ、䞀倪刀だった。

    ただの䞀倪刀で、䞉぀の呜がたずめお刈り取られたのだ。

    血が遅れお噎き䞊がる。
    それでも敵兵の流れは止たらない。

    いや、止たれない。

    埌ろから抌し出されるように、次の兵がさらに前ぞ詰めおくる。

    その時、ティヌダが動いた。
    䞻の真暪ぞ滑り蟌むように䜍眮を取り、倧扇を構える。
    现い指が扇を返すたび、空䞭ぞ螺旋が描かれた。

    颚ではない。
    術匏。
    倧扇の軌跡に沿っお、空間ぞ光の文字が浮かび䞊がる。

    ひず぀。

    ふた぀。

    みっ぀。

    叀い祈祷文にも䌌た文字列が宙ぞ重なり、眩く燃える茪を圢䜜る。
    陜光を凝瞮したかのような、熱を孕んだ術匏だった。
    ティヌダは、玠早く背の野倪刀――倩照あたおらすを抜く。

    鋌が走る。

    その切っ先が、浮かび䞊がった文字列を真正面から断ち切った。

    「倩道流抜刀術おんどうりゅうばっずうじゅ぀」

    䞀閃。
    術匏が断たれる。
    同時に、そこぞ蟌められおいた光が衝撃ずなっお爆ぜた。

    「日茪閃にちりんせん」

    画像

    裂かれた文字の断面から、無数の光刃が连る。
    陜の刃。
    眩く、熱を垯びた斬撃の矀れだった。

    䞀盎線に、あるいは扇状に、あるいは斜めに。

    光の刃は䞀瞬でカネサダぞ矀がろうずしおいた敵兵の列ぞ食い蟌み、
    たずめお吹き飛ばした。

    鎧が裂ける。
    肉が断たれる。
    土煙の䞭ぞ、血飛沫が掟手に咲いた。

    「ぐあっ」

    「な、なんだ――」

    敵兵の叫びが重なる。

    だが、それで終わりではない。
    埌方からは、すでに銬人族の突撃兵団が駆け蟌んできおいた。

    重い槍を構え、蹄で土を砕き、
    突撃の勢いそのたたに䞉人を呑み蟌もうずする。

    歩兵が厩れおも、突撃兵で螏み朰す。
    それが圌らの算段だった。

    だがその瞬間。

    フォルツァの䞡肩口が、音を立おおせり䞊がった。
    装甲が噛み合い、内郚から砲身が珟れる。

    無骚な鋌鉄の筒。
    人の兵噚ではない。
    神嚁の兵噚。

    次の瞬間、火を噎いた。

    蜟音。

    画像

    巊右の砲身が亀互に唞り、砲匟が䞀気に吐き出される。
    迫っおいた銬人族の突撃兵団の先頭が、たずめお吹き飛んだ。

    重甲をたずった銬䜓が裂ける。
    兵の䞊半身が宙ぞ舞う。

    埌続の突撃兵は止たる間もなく前の残骞ぞ突っ蟌み、隊列そのものが厩壊しおいく。
    フォルツァは埮動だにしない。

    ただ砲口だけが火を吐き続け、䞭倮突砎を狙った銬人族の突撃兵団を
    機械的な粟床で叩き朰しおいく。

    その様は、戊うずいうより凊理するに近かった。

    あたりに䞀方的だった。

    ほんの数瞬前たで、䞭倮は螏み砎られるはずだったのだ。
    勝機はノァルガルドにあるず、誰もがそう思っおいた。

    なのにヌヌ。

    今や地に倒れおいるのは、突進しおきた偎ばかりだった。
    敵兵たちの動きが、止たる。

    前ぞ出るべきか。
    退くべきか。
    理解が远い぀かない。

    䞉人しかいないはずの䞭倮が、突劂ずしお死の穎ぞ倉わったのだ。

    ノァルガルド兵団の前列で、誰かが喉を鳎らした。

    その目の前には――

    陣矜織のたた刀を提げたカネサダ。
    倧扇ず野倪刀を構えたティヌダ。
    砲煙を肩から立ち昇らせるフォルツァ。

    たった䞉぀の圱。

    それだけで、戊堎の䞭倮は完党に凍り぀いおいた。
    その䞀瞬の揺らぎを、カネサダは芋逃さなかった。

    䞭倮を食い砎る぀もりで雪厩れ蟌んできたノァルガルド兵団は、
    ほんの刹那、足を鈍らせおいた。

    前ぞ出るべきか。
    退くべきか。
    それずも、目の前のたった䞉぀の圱をそのたた螏み朰せばよいのか。

    迷いず呌ぶには短すぎる。

    だが、殺し合いの堎では、その短さこそが呜取りになる。

    「はぁぁぁッ――」

    裂垛の気合ずずもに、カネサダが地を蹎った。
    螏み蟌みは、鋭いずいうより重かった。

    たるで倧地そのものぞ楔を打ち蟌み、
    その反動で己を前ぞ撃ち出したかのような䞀歩だった。

    その背埌で、フォルツァの装甲が音を立おお開く。

    金属が噛み合う、硬質な駆動音。
    次の瞬間、背郚歊装機構から䞀本の槍が射出された。

    飛ぶ。

    癜い朝の光を切り裂いお、たっすぐに。
    初めから䞻の手元ぞ戻る定めであったかのように。
    カネサダは振り向きもせず、その槍を空䞭で掎み取った。

    柄が掌ぞ収たる。
    同時に、もう䞀歩。
    前ぞ。

    「――ッ」

    最前列の敵兵が叫ぶ暇もなかった。

    槍が回る。
    円を描いた、ず芋えたのは、埌から思い返せばの話だ。
    実際には、ただ䞀閃だった。

    だがその䞀閃は、あたりにも鋭く、あたりにも深かった。

    銖が飛ぶ。

    ひず぀。

    ふた぀。

    みっ぀。

    血が遅れお噎き䞊がり、胎を倱った兵がその堎で厩れ萜ちる。
    返す穂先が喉を穿ち、石突きが顔面を砕き、
    さらに暪薙ぎの䞀撃が埌ろに控えおいた兵ごずたずめお薙ぎ払った。

    カネサダは止たらない。

    槍は刺突のためだけにあるのではないず、その身ひず぀で蚌明しおいく。
    刺し、払い、叩き、裂く。
    䞀振りの歊噚を扱っおいるのではない。

    歊そのものが、人の圢を借りお前ぞ進んでいるようだった。

    その背埌ぞ刃が届くより早く、ティヌダが滑り蟌む。
    倩照あたおらすが鞘を走り閃く。

    䞻ぞ䌞びた剣先が匟かれる。
    暪合いから槍を突き出した兵の手銖が飛ぶ。

    螏み蟌んできた別の兵の脇腹ぞ刃が吞い蟌たれ、
    匕き抜かれた時には熱い血が䞀気に噎いた。

    ティヌダは䞀歩も前ぞ出過ぎない。
    けれど䞀歩も遅れない。

    䞻の死角。

    そのわずかな綻びだけを、たるで瞫い閉じるように消しおいく。
    護りでありながら、それは同時に粟密な殺戮でもあった。

    さらにその埌ろを、フォルツァが進む。

    ズシ、ず。

    ただ䞀歩、螏み出すだけで地が鳎る。
    近づこうずした敵兵が、その拳ひず぀で鎧ごず叩き割られる。

    距離を取っお回り蟌もうずした銬人族の突撃兵ぞは、
    肩口から䌞びた砲身が短く火を噎いた。

    砲匟は重甲に芆われた銬䜓ごず兵を吹き飛ばし、
    埌続の列ぞ血ず鉄の残骞を叩き぀ける。

    䞉぀の圱は、初めからひず぀の陣であったかのように噛み合っおいた。

    カネサダが前を割る。
    ティヌダがその背を瞫う。
    フォルツァが抌し朰す。

    矎しい、ずいう蚀葉は本来ふさわしくないのかもしれない。

    だが、その連携には確かに矎しさがあった。

    敎いすぎおいるのだ。
    敎いすぎおいるからこそ、なおさら獰猛だった。

    ノァルガルド兵団の䞭倮が、すっぱりず裂けおいく。
    それは綻びではない。
    裂傷だった。

    その傷口ぞ、皇囜軍の勢いが雪厩れ蟌む。

    「カネサダ公に続けぇぇぇぇッ」

    皇囜軍将軍の怒号が、戊堎の空気そのものを震わせた。
    その声を合図にしたかのように、゜ヌド兵団の士気が䞀気に跳ね䞊がる。
    抌されおいた兵たちが、今床は逆に前ぞ出る。

    巊右䞡翌で食らい぀いおいた槍衟が、じりじりず、
    しかし確かにノァルガルド兵団を抌し返し始める。

    流れが倉わる。

    そう、誰もが感じた、その時だった。

    ゎッ、ず。

    倧地の底で䜕かが唞ったような䜎音が走る。

    クロガネフェル城塞の䞭倮門が、内偎から開いおいく。

    重い門扉が軋み、暗い口を戊堎ぞ向けお開く。
    そこから珟れたのは、黄金の鎧に身を包んだ䞀団だった。

    ノァルガルド兵団粟鋭郚隊――黄金蹄兵団。

    その先頭を駆けるのは、銬人族の重装近衛兵だった。

    通垞の突撃兵ずは違う。
    速さだけを歊噚ずする者たちではない。

    人の䞊半身から銬䜓に至るたでを、黄金の重甲が隙間なく芆っおいる。
    蹄には黒鉄の蹄鉄。
    䞡腕には、鉄塊めいた重階槍。

    䞀階䞀階が、城門を打ち砕く砎城槌にも等しい。

    先頭の近衛兵が、重階槍を高く掲げお同えた。

    画像

    「敵は倧将銖ただ䞀人」

    「進めェェェッ」

    その背埌には、有角族の重装兵、獣人族の斧兵、翌人族の空戊兵が続く。
    そしおさらに巚倧な圱が、城門の闇から姿を珟した。

    巚人族。

    人の背䞈など物ずもせぬ長躯の兵が、重歊装のたた門をくぐっおくる。
    ただ歩くだけで地が揺れる。

    その存圚感だけで、぀い先ほどたで抌し返し始めおいた皇囜軍の前線に、
    再びざわめきが走った。

    黄金蹄兵団ず巚人族が、䞀斉に河川ぞ雪厩れ蟌む。

    氎飛沫が䞊がる。
    蹄が石を噛み砕く。
    巚人の脚が流れを蹎散らす。

    氎面そのものが螏みにじられ、こちらぞ迫る波ずなっお抌し寄せおくる。

    速床は萜ちない。

    むしろ、増した。

    その圧を前にしお、カネサダが止たる。

    手にしおいた槍を、地ぞ突き立おた。
    穂先が土を深く抉り、柄が短く震える。

    颚が鳎る。

    その䞭で、カネサダが䜎く呟いた。

    「フォルツァ  」

    フォルツァが背埌ぞ回り蟌む。
    その巚䜓の奥で、䜕かが目芚める音がした。
    装甲が開く。

    肩。

    胞。

    腕。

    腿。

    脚。

    フォルツァの党身に刻たれた装甲の継ぎ目が、連鎖するように開いおいく。

    その内郚から、黒い皲光にも䌌た筋が走った。

    雷ではない。

    光でもない。

    もっず生々しい、力そのものの流れだった。
    それは棘のように尖り、鞭のようにしなり、牙のように鋭く、
    フォルツァの党身から䞀斉に䌞びる。

    次の瞬間、それらがカネサダぞ絡み぀いた。

    巻き䞊げる。
    瞛り䞊げる。
    喰らい぀く。

    四肢ぞ、胎ぞ、肩ぞ、銖元ぞず走り、カネサダの茪郭を呑み蟌んでいく。

    「ぐ  ッ」

    ほんの䞀瞬だけ、カネサダの顔に苊悶が浮かんだ。

    それは装着ではなかった。

    纏う、ずいうにはあたりに荒々しい。

    たるでフォルツァずいう存圚そのものが、䞻の肉䜓ぞ牙を立お、
    骚栌を芆い、血肉を倖偎から組み替えおいくようだった。

    黒い皲光は、カネサダの身䜓を抱き朰すほどに絡たり、
    やがお人の圢をした圱ぞず収束する。

    戊堎の喧隒が、遠のいた。

    誰もが、その異様な光景に息を止めた。

    味方も。
    敵も。
    ただ、その黒い圱だけを芋おいた。

    黒い皲光が、さらに激しく脈打぀。
    その奥で、赀い光が灯る。

    胞に。

    肩に。

    䞡腕に。

    䞡脚に。

    黒い圱の内偎から、血のように深い赀が滲み出しおいく。

    カネサダの口が、ゆっくりず開く。

    「芇王顕珟」

    画像

    次の瞬間。

    光が、爆ぜた。

    黒い皲光が䞀斉に匟け飛び、その䞭心から、
    真玅の倖骚栌ぞ党身を包たれたカネサダが珟れた。

    芇王骞はおうがい。

    肩は猛々しく匵り出し、
    胞郚装甲は重く厚く、
    腕は鎧ずいうより巚倧な歊具そのもののように逞しく、
    脚郚は倧地を螏み砕くために圢䜜られたかのように鋭い。

    党身を走る皜線は、歊装であるず同時に、王嚁そのものを刻んでいる。

    それは甲冑ではなかった。

    兵噚でもない。

    戊堎ぞ具珟した、ひず぀の芇道だった。

    赀い装甲が鈍い空の䞋で劖しく光る。

    フォルツァを媒介にしお纏われたその姿は、人の王ずいうより、
    力そのものが王の圢を取ったようだった。

    芇王骞を纏ったカネサダが、䞀歩前ぞ出る。
    その䞀歩だけで、倧地が䜎く鳎った。

    味方の兵が息を呑む。
    敵の前列が、わずかに足を鈍らせる。

    だが、ノァルガルドの粟鋭はなお止たらない。

    「怯むな」

    「かかれェェェ」

    怒号が飛ぶ。

    黄金蹄兵団が重階槍を揃え、
    巚人族が倧地を螏み鳎らし、
    有角族の重装兵ず獣人族の斧兵がその間を埋めるように走る。

    あらゆる殺意が、ただ䞀人のカネサダぞ収束しおいく。

    カネサダは、暪目でティヌダを芋た。

    「ティヌダ、䞋がれ」

    短い呜什。

    だが、その䞀蚀だけで十分だった。
    ティヌダは䞻の意図を瞬時に悟り、迷いなく数歩退く。
    倧扇を構えたたた、ただ䞻人の前だけを静かに空けた。

    そこに䞀片の逡巡しゅんじゅんもない。

    カネサダは、迫り来る敵軍ぞ正面から向き盎る。

    そしお、胞の前で腕を亀差させた。

    甲高い音が走る。
    芇王骞の胞郚装甲が巊右ぞ割れ、その䞭心栞が露わになる。

    その瞬間、党身を巡っおいた赀黒い光が、
    たるで血流が心臓ぞ集たるように、䞀気に胞の栞ぞ流れ蟌んだ。

    肩から。

    腕から。

    脚から。

    背から。

    装甲の隙間ずいう隙間を走っおいた光が、
    䞀本の奔流ずなっお胞ぞ収束しおいく。

    ぎゅん、ず。
    空気が鳎った。
    いや、空気だけではない。

    呚囲の土も、萜ちおいた鉄片も、血に濡れた旗垃さえも、
    胞の䞭心ぞ吞い寄せられるようにわずかに震えた。

    カネサダの足元で、倧地がひび割れる。

    芇王骞の胞郚栞が、膚倧な光を孕んで脈打った。

    ひず぀。

    たたひず぀。

    錓動のように。

    たるで、そこにもうひず぀の心臓が生たれたように。

    黄金蹄兵団はなお迫る。
    巚人族が咆哮を䞊げる。
    亜人諞族の兵が歯を剥き、歊噚を掲げる。

    だが、もはや遅い。

    すべおの殺意が届くより早く、芇王骞の力は臚界ぞ達しおいた。

    眩い。

    県を背けたくなるほどの茝きが、胞の䞭心で膚れ䞊がる。
    赀黒かった光は、やがお癜熱するほどに圧瞮されおいく。

    「たずめお――砕け散れ」

    カネサダが、䞡腕をゆっくりず倧きく開いた。
    たるで、己の胞に収めた灜厄を解き攟぀ように。

    その双眞が、敵軍の䞭心を射抜く。

    「芇王――」

    声が萜ちる。

    䜎く、重く、戊堎党䜓を抌さえ぀ける声。
    胞郚栞の光が、限界たで膚匵する。

    そしお。

    「匟だん・功がい・波は」

    画像

    光が、攟たれた。

    䞀盎線。

    だが、盎線ず呌ぶにはあたりにも倪い。
    それは戊堎を断ち切る奔流だった。

    黄金蹄兵団も、
    巚人族も、
    亜人諞族の兵団も、
    河川の流れすらも。

    そのすべおが閃光の䞭ぞ呑たれ、茪郭を倱う。

    癜。

    ただ、癜い。

    䞖界そのものが、そこだけ䞀瞬消し飛んだかのようだった。

    ぀づいお、蜟音。
    倧地が揺れる。

    河川の氎が吹き飛び、土が抉れ、石が砕け、爆煙が倩ぞ膚れ䞊がる。
    誰もが身を䌏せるしかなかった。
    悲鳎も怒号も、その爆音の前では意味を持たない。

    ただ衝撃だけが、党身を容赊なく殎り぀けおいく。

    やがお。

    閃光が倱せる。
    爆煙が裂ける。
    そこに、もう誰も立っおはいなかった。

    さっきたで確かにいたはずのノァルガルド粟鋭郚隊も、
    巚人族も、亜人諞族の兵団も、䜕ひず぀残らない。

    残ったのは、深く抉れた倧地だけだった。

    焊げた土。
    吹き飛んだ河岞。
    焌けた空気。

    その無残な爪痕だけが、たった今ここで䜕が攟たれたのかを雄匁に物語っおいる。

    味方も、敵も、しばし蚀葉を倱った。
    誰もすぐには、この光景を理解できなかったのだ。

    その沈黙を、カネサダの声が切り裂く。

    「残敵を掃蚎せよ」

    その䞀喝で、止たっおいた皇囜軍が我に返る。

    「うおおおおおおおッ」

    勝鬚が䞊がる。
    それはもはや歓声ではない。
    生き残った者たちが、䞀気に勝利ぞ飛びかかる咆哮だった。

    ゜ヌド兵団が雪厩れ蟌む。

    槍が突き出され、
    剣が振り䞊げられ、
    黒ず癜の階銬兵団がそのたたクロガネフェル城塞ぞ突進しおいく。

    将軍のひずりが、呆然ず呟いた。

    「あれが  カネサダ公の、真の力なのか  」

    戊堎の向こう、クロガネフェル城塞では、やがお新たな旗が立ち始める。

    ひず぀。

    ふた぀。

    みっ぀。

    ノァルガルドの軍旗が匕き倒され、
    代わりに皇囜の戊旗が次々ず翻っおいく。

    西郚戊線は、たった䞉぀の圱によっお、䞀気にひっくり返されたのだった。

    ――第3章「歩みだす正矩線」完――

    ――第四章、開幕。

    血ず月明かりの残る裏街道。
    そこに立぀のは、獲物の匂いを远う異圢の男。

    名は、ディノァりバヌのグラド。

    斬撃も、銃匟も、拳も。
    喰らうほどに、その肉䜓は膚れ䞊がっおいく。

    そしおその牙は、ナりキたちぞ向けられる。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第39話      
        ――喰らうもの――

    ◀第37話 第39話▶


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    あび

     
     
    ゲヌム䌚瀟勀務。䌁画・挔出・゚フェクト担圓。挫画、アニメ、倉身ヒヌロヌ、和颚ファンタゞヌ、剣道、必殺技挔出が倧奜き。30幎枩めた『正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ』を真説版ずしお投皿䞭。

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