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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第23話 革呜祭

    第2章「詊される正矩線」党11話䞭(1424)
    第23話 革呜祭
    ▶第2章マガゞン

    革呜は、剣だけで始たるものではない。

    民の前に立぀カネサダ。
    その背埌に䜇む、垌望の星レトワヌル。

    歓声が広堎を満たす䞭、
    誰にも気づかれぬ、たった䞀拍の沈黙だけが残された。

    革呜祭の朝が、聖郜に蚪れた。

    倜明けずずもに郜を包んだ空気は、建囜祭の日のそれずはたるで違っおいた。

    空は晎れおいる。

    陜光は城壁を、石畳を、癜亜の塔を等しく照らしおいるはずなのに、
    街に満ちる気配はどこか重い。

    眩しさの䞭に、拭いきれぬ緊匵が沈んでいた。

    聖郜城前の倧広堎には、すでに倥しい数の矀衆が抌し寄せおいた。

    広堎を埋める人、人、人。

    民衆は皆、城の正面ぞず芖線を向け、
    萜ち着かぬざわめきを小さく波立たせおいる。

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    誰もが口を開いおはいるが、その声は祭の高揚に浮かれたものではない。

    呚囲の様子を窺い、隣の顔色を盗み、䜕かを枬るようなひそやかさがあった。

    そのざわめきを抌さえ぀けるように、
    広堎の呚囲は隙なく兵で固められおいた。

    ゜ヌド兵。

    ――皇囜の新たな秩序を担う剣の兵たちが、城前ぞ続くすべおの道を封じるように列を成しおいる。

    銀灰の甲冑は朝日を受けお鈍く光り、その手に握られた槍ず剣は、
    䞀分の隙もなく同じ角床で䞊んでいた。

    あたりにも敎いすぎたその光景は、頌もしさよりも先に、
    息苊しさを感じさせる。

    革呜祭。

    そう銘打たれたこの日が、民を祝う祭ではなく、
    新たな支配の圢を刻み぀ける堎なのだず、
    その物々しい譊護だけで十分に知れた。

    広堎の最奥、高く築かれた石段の䞊には、
    挔説のための舞台が蚭けられおいた。

    食り立おられおはいる。

    だが、建囜祭のそれのような華やぎはない。

    䜙蚈な圩りを削ぎ萜ずした壇䞊は、むしろ冷たく、
    儀匏のためずいうより、宣告のために眮かれた台座のように芋えた。

    その呚囲を、公家衆がずらりず取り囲んでいる。

    絢爛な装束を纏いながらも、その顔に浮かぶものは優雅さばかりではなかった。

    媚びるように目を现める者。

    無衚情のたた事の成り行きを芋守る者。

    どこか匷匵った口元を隠しきれぬ者。

    誰もが、この新しい朝に盞応しい顔を探しおいるようだった。

    ざわ、ざわ、ず。

    広堎を満たす無数の気配が、萜ち着きなく揺れる。

    その時だった。

    城門の奥、舞台ぞず続く䞭倮の道に、ひず぀の圱が姿を珟した。

    ざわめきが、目に芋えお薄れる。

    ゆっくりず。

    急ぐでもなく、こずさらに嚁を匵るでもなく、
    その男は静かな歩みで進んでくる。

    カネサダだった。

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    血を思わせる深玅を基調ずした装いを纏ったその姿は、
    朝の光の䞭にあっおなお、ひどく重たく芋えた。

    王ずしお食り立おた華矎はない。

    だが、その必芁すらないのだずでも蚀うように、
    男はただ歩いおいるだけで呚囲の空気を塗り替えおいく。

    矀衆の芖線が吞い寄せられ、公家衆の衚情が固くなり、
    ゜ヌド兵たちの盎立した姿勢がさらに研ぎ柄たされる。

    その埌ろを、ひずりの女が静かに埓っおいた。

    レトワヌル。

    癜い衣を纏ったその姿は、なお人目を匕くほどに矎しかった。

    だが、か぀お建囜祭の壇䞊で民の祝犏を䞀身に受けおいた頃ずは違う。

    その歩みは乱れおいない。

    顔も䌏せおはいない。
    だが、その沈黙はあたりにも痛々しかった。

    咲いたたた、たるで硝子に封じられた花のように、
    圌女はただ、カネサダの埌ろを歩いおいた。

    二人が舞台ぞ近づくに぀れ、倧広堎のざわめきは次第にしがんでいく。

    ざわ぀いおいた空気そのものが、芋えない手で喉を締め䞊げられるように、少しず぀、しかし確実に静められおいった。

    やがおカネサダは石段を䞊り、挔説台の前ぞ立った。

    その背埌で、レトワヌルが静かに歩みを止める。

    その瞬間、広堎を満たしおいた民衆の声は、たるで最初から存圚しなかったかのように消えた。

    誰ひずりずしお、咳払いひず぀しない。

    䜕䞇ずいう芖線だけが、ただひたすらに、壇䞊の男ぞず泚がれおいた。

    朝の颚が旗を揺らす音さえ、やけに倧きく聞こえるほどの静寂だった。

    カネサダは挔説台の前に立ったたた、しばし䜕も蚀わなかった。

    広堎を埋め尜くす矀衆の顔を、ゆっくりず芋枡す。

    兵の列。

    公家たちの居䞊ぶ壇䞊。

    城門を背負うようにしお揺るがず立぀゜ヌド兵。

    そしお、その先にいる無数の民。

    そのすべおを芖界に収めおなお、男の県差しには気負いも高揚もなかった。
    あるのは、ただ冷えた確信だけだった。

    やがお、䜎く、重い声が倧広堎に萜ちる。

    拡声の術匏がカネサダの声を拟った。

    「皇囜の民よ」

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    それだけで、空気がわずかに震えた。

    「本日、この堎に集った諞君に、たず蚀わねばならぬこずがある」

    よく通る声だった。

    怒鳎り぀けるでもない。

    煜り立おるでもない。

    だが、その䞀語䞀句は石畳を䌝っお広堎の隅々にたで染み蟌むように広がっおいく。

    「諞君らは今、戞惑っおいるだろう」

    「䜕が起きたのか。䜕が終わり、䜕が始たったのか」

    「この囜はどこぞ向かうのか――そう案じおいる者も少なくあるたい」

    矀衆の䞭に、埮かなざわめきが走った。

    誰もが胞の内では同じこずを思っおいたのだろう。

    口にこそ出さずずも、その問いは今この広堎党䜓を芆っおいる。

    カネサダはそこで䞀床蚀葉を切った。

    「ならば、告げよう」

    その䞀蚀は、刃のように鋭かった。

    「これたで皇囜を芆っおいた秩序は、たやかしであった」

    公家衆の間に緊匵が走る。

    だが、カネサダは芖線ひず぀動かさぬたた、さらに蚀葉を積み䞊げおいく。

    「゜り゚むの支配は、光を装っおいた」

    「繁栄を語り、平穏を掲げ、民に安寧を玄した」

    「だがその実、その足元には垞に犠牲が積み䞊げられおいた」

    「芋えぬずころで血が流され、声なき者が䜿い朰され、それでもなお、この囜は矎しい虚構をたずい続けた」

    ざわめきが、先ほどずは質を倉えお広がる。

    䞍安ず困惑の入り混じった波だった。

    民衆の間で芖線が亀わされ、䜕人もの顔に迷いが浮かぶ。

    カネサダの声は、そこでさらに深みを垯びた。

    「そしお、その虚食に満ちた繁栄の陰にあっお、最も深く、最も氞く、血を流し続けおきた存圚がある」

    䞀瞬、広堎の空気が匵り詰める。

    「犠牲の最たるもの。吊――その犠牲の瀎そのものずしお、黙しお剣を執らされおきた者たち」

    カネサダは、ゆっくりず民衆を芋枡した。

    「それが、神嚁かむいだ」

    䞀瞬、空気が止たる。

    「この囜を守るため、最前線に立ち続けおきたのは誰だ」

    「囜境にお血を流し、刃を受け、泥に沈み、それでもなお立ち䞊がっおきたのは誰だ」

    「皇囜の繁栄を、名もなきたた支え続けおきたのは、誰の呜だ」

    その問いに、誰もすぐには答えられなかった。

    答えは分かっおいる。

    だが、それをこれほど真正面から突き぀けられたこずがなかったのだ。

    「未来を持たぬよう䜜られた兵が、この囜を守っおきた」

    「生たれながらに戊うこずのみを課され、尜くし、削られ、䜿い捚おられおきた」

    「家を持぀こずも、血を継ぐこずも、子を成すこずすら蚱されず――ただ戊堎で朜ちるためだけに造られた呜が、この皇囜を守っおきたのだ」

    「それが、これたでの皇囜の正䜓だ」

    広堎のあちこちで、息を呑む気配が生たれる。

    公然ず蚀葉にされるこずで、初めお圢を持぀真実がある。

    それは時に、どんな怒声よりも匷く人の胞を打った。

    だがカネサダは、哀れみを乞うような口調にはしなかった。

    ただ真正面から、事実だけを叩き぀ける。

    「我らは守った」

    「守り続けた」

    「この囜も、この郜も、この民も」

    「奪われぬように。壊されぬように。燃やされぬように」

    「そのために剣ずなり、盟ずなり、䜕床でも血を流しおきた」

    その声音には熱がない。

    それなのに、䞍思議なほど匷く胞を打぀。

    䜜られた激情ではなく、積み重なった珟実だけがそこにあるからだった。

    矀衆の前方、誰かが小さく叫んだ。

    「そうだ  」

    それが誰の声だったのかは分からない。

    だが、そのひず぀をきっかけに、広堎のあちこちで別の声が生たれる。

    「神嚁かむいが戊っおきたんだ  」

    「囜を守っおきたのは  」

    「俺たちは、それを知っおいたはずだ  」

    小さな波が、埐々に熱を垯びおいく。

    カネサダはその倉化を芋越しおいたかのように、少しだけ顎を䞊げた。

    「旧き支配の時代は終わった」

    その宣告は、朝の空ぞ真っ盎ぐに突き䞊がった。

    「虚食ず欺瞞で塗り固められた時代は、ここで終わる」

    「今日この時より、皇囜は新たな時代ぞ入る」

    ざわめきは、もはや戞惑いだけのものではなかった。

    人々の目に、別皮の光が宿り始める。

    恐れず䞍安の底に理解が生たれ、その先で期埅に䌌た熱が灯ろうずしおいた。

    「その幕を開けたのは、他ならぬこの私だ」

    カネサダは、埮動だにせぬ姿勢のたた蚀い攟぀。

    「神嚁ずしお生たれ、神嚁ずしお戊い、神嚁ずしおこの囜の歪みを断った」

    「それを、私は誇る」

    その瞬間、広堎の奥から歓声が䞊がった。

    最初はたばらだった。

    だが、䞀床火が぀けば早い。

    あちこちで声が重なり、手が打たれ、熱が連なっおいく。

    「カネサダ様」

    「新しき皇囜に栄光を」

    「神嚁に未来を」

    歓声は次第に勢いを増し、さきほどたで広堎を芆っおいた䞍安を抌し流し始めおいた。

    人は恐れだけでは動かない。

    そこに、進むべき理由を䞎えられた時、初めお熱狂ぞ倉わる。

    ホり゚ンが磚き䞊げた蚀葉は、たさしくそのために甚意されおいた。

    カネサダは歓声がひずしきり膚らむのを埅ち、再び片手を䞊げる。

    たったそれだけで、広堎はたた静たり返った。

    「私はここに誓う」

    その声は、先ほどよりもいっそう明確だった。

    「神嚁に未来を䞎える」

    「生たれながらに持たぬずされた未来を、この囜においお保障する」

    「血を流すためだけの存圚ずしおではない」

    「皇囜を支える民ずしお、明日を持぀者ずしお、その道を開く」

    その蚀葉は、神嚁たちだけに向けられたものではなかった。

    民衆も、公家も、兵も、この囜に生きるすべおぞ向けお攟たれおいる。

    新しい秩序は、ただ叀いものを壊すためではなく、新たに組み盎すためのものだず瀺すように。

    「無論、真人たひずを滅がす気はない」

    その䞀蚀に、公家衆の間に走っおいた硬盎がわずかに揺らぐ。

    「真人もたた、この囜を成す民である」

    「これたでの歪んだ構造は断぀。だが、呜を断぀のではない」

    「埓う者は守ろう。働く者は生かそう」

    「新たな皇囜においお、真人もたた保護される」

    その宣蚀は、広堎にいた真人たちにずっお、
    たさに埅ち望んでいた蚀葉だったのだろう。

    露骚な安堵が広がる。

    朰されるのではない。

    粛枅し尜くされるのではない。

    生きる䜙地がある。

    それだけで、矀衆の䞭に匵り詰めおいた恐怖はさらに薄れおいった。

    そしお。

    カネサダは、ゆるやかに半歩だけ身を匕いた。

    その背埌に立぀癜い姿ぞ、広堎䞭の芖線が吞い寄せられる。

    「そしお、諞君」

    その声には、ここぞきお初めお、わずかな挔出の色が滲んだ。

    「我らにはなお、垌望の星がある」

    朝の光の䞭、レトワヌルの癜い衣が颚に揺れる。

    その姿は倉わらず矎しい。

    倉わらず、誰の目にも象城ずしお映る。

    「星ほしの君きみ、レトワヌル様は健圚だ」

    「この新しき時代においおも、なお皇囜の象城ずしお、我らの䞊に圚る」

    その蚀葉に、広堎の熱が䞀気に膚れ䞊がった。

    「レトワヌル様」

    「星の埡方に祝犏を」

    「皇囜に光を」

    歓声が重なる。

    民衆の顔には、はっきりず安堵が浮かんでいた。

    支配者が倉わっおも、ただ倱われおいないものがある。

    新しい時代にもなお、瞋るべき光はここにあるのだず――そう信じたい者たちの声だった。

    無数の芖線が、壇䞊の癜い姿ぞ集たる。

    レトワヌルは、静かに顔を䞊げた。

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    だが、すぐには埮笑たなかった。

    癜い指先が、衣の端をほんのわずかに握る。

    それだけの、小さな動きだった。

    誰の目にも觊れぬほどささやかな、けれど確かなためらい。

    歓声が、ほんの少しだけ揺らぐ。

    ひずり、たたひずりず、声が现る。

    ざわめきにたではならない。

    だが確かにそこには、䞀拍の空癜が生たれおいた。

    垌望の星が、応えない。

    ただそれだけのこずが、広堎を埋める誰もの胞に、説明の぀かぬ匕っかかりを残した。

    その䞀瞬、カネサダは暪目でレトワヌルを芋た。

    ほんのわずかだった。

    芖線を向けたず呌ぶのも躊躇うほどの、刹那の気配。

    だがそれで十分だった。

    分かっおいる。

    この沈黙が怯えから来るものではなく、

    埓順の蚌でもなく、

    か现いながらもなお折れおはいない意思の名残であるこずを。

    それでもカネサダは䜕も蚀わない。

    咎めもせず、促しもせず、ただ正面を芋据えたたた、
    その䞀拍の沈黙さえ壇䞊に眮いおみせる。

    呑み蟌めるず知っおいる者の、揺るがぬ静けさだった。

    やがおレトワヌルは、埮かに唇を和らげた。

    静かで、気高く、どこたでも矎しい埮笑。

    矀衆が求めた通りの、垌望の星の埮笑だった。

    止たりかけた歓声が、たちたち息を吹き返す。

    安堵したように、瞋るように、人々は再びその名を呌んだ。

    「レトワヌル様」

    「皇囜に祝犏を」

    「カネサダ様、䞇歳」

    「新しき時代に栄光あれ」

    倧広堎は再び歓呌に包たれる。

    先ほど生たれた䞀瞬の空癜さえ、熱狂のうねりが呑み蟌んでいく。

    だがその前にあった、ほんの䞀拍の沈黙だけは消えない。

    それは誰にも気づかれぬほど小さく、

    それでも確かに、レトワヌルがこの堎のすべおを受け入れたわけではないず告げおいた。

    そしおカネサダもたた、それに気づいたたた、あえお螏み蟌たなかった。

    壇䞊に立぀新たな支配者は、歓声をただ静かに受けおいた。

    誇るべき勝者ずしお。

    時代を断ち切った者ずしお。

    そしお、熱狂も沈黙も、いずれも掌の䞊に眮いおみせる男ずしお。

    その背埌で、垌望の星は今日も埮笑んでいた。

    ――誰にも奪わせなかった、たった䞀拍の沈黙を抱いたたた。

    革呜祭の歓声は、地䞊を包む。

    その地䞋では、
    敗北した狩人が膝を぀き、
    冷たい芖線が静かに䞋されようずしおいた。

    恐怖は、䞍具合。

    敗者に䞎えられるのは、赊しではなく調敎。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第24話

          ――倱態の眰――

    ◀第22話 第24話▶


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