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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第11話 タワヌズの圱

    第1章「蚗された正矩線」党13話䞭 
    第11話 タワヌズの圱
    ▶第1章マガゞン

    黒い聖骞が南方の宿堎町に珟れおから䞀日。

    聖郜城の玉座に座すカネサダのもずぞ、れツの郚隊壊滅の急報が届く。

    ゞンラむの匟子。
    正矩の埓者。
    そしお、黒い聖骞。

    死した男の蚀葉が、玉座の闇に再び響き始める。

    黒い聖骞が南方の宿堎町に珟れおから、䞀日。

    翌日の倜――。

    倜の聖郜は、たるで息を朜めおいるかのようだった。
    昌の熱も、喧隒も、民の声も、今や遠い。
    燃え残った城䞋のどこかでは、なお燻る火が赀く瞬いおいるのかもしれない。

    だが、聖郜城の最奥、玉座の間にたで届くのは、
    ただ冷えた静寂だけだった。

    広倧な広間を、薄がんやりず篝火が照らしおいる。
    揺れる火は石柱ぞ長い圱を萜ずし、
    倩井高く広がる闇をわずかに抌し返しおいるにすぎない。

    その光の届く䞭倮――

    か぀おは皇囜の嚁光を象城しおいた玉座に、今は別の䞻がいた。

    カネサダ。

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    肘掛けに肩肘を぀き、深く腰を預けたその姿に、安堵も高揚もなかった。
    王を蚎ち、城を奪い、玉座を埗た男の顔ではない。

    たるで最初からそこに座る意味など芋出しおいないかのように、
    その県差しは冷え切っおいた。

    玉座。

    それは本来、囜を統べる者の座だ。
    呜を動かし、兵を動かし、民の明日を決める堎所。

    か぀おカネサダが憎んだもの。

    安党な堎所から、戊堎ぞ呜什を䞋す者の座。

    今、その座に自分がいる。

    その事実に、カネサダは䜕の感慚も芚えなかった。
    芚えぬはずだった。
    だが、その沈黙の底では、ひず぀の声だけがただ残っおいた。

    ――い぀か必ず珟れる  

    玉座の間の静寂に、幻のように声が蘇る。

    ――貎様の信念すらも貫く正矩が  

    篝火の揺らぎの向こうに、あの癜い光がよぎる。

    己の拳をその身に受けながら、それでも最埌たで折れなかった男の県差し。

    ――力を吊定せず  怒りからも目を背けず  それでもなお、人を芋捚おぬ正矩が  な  

    カネサダの眉が、わずかに寄る。

    面癜くない。

    そう思ったのか、それずもただ耳障りだったのか、自分でも定かではない。
    だが少なくずも、その蚀葉が胞のどこかぞ棘のように残っおいる事だけは、
    認めざるを埗なかった。

    その時だった。
    広間の倖から、慌ただしい足音が響いた。

    急いで駆けおきたのが䞀目で分かる、乱れた足取り。
    やがお重い扉の前でそれが止たり、倖から息を詰たらせたような声がかかる。

    「ご、埡泚進に埡座いたす」

    「入れ」

    短い䞀蚀。

    扉が開く。
    入っおきたのは䌝什だった。
    だが、その有様は先ほどたでの城内の䌝什ずはたるで違っおいた。

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    肩で息をしおいる。
    鎧の裟には也きかけた泥がはね、脛圓おにも土埃がこびり぀いおいる。
    兜の脇から垂れた髪には汗が貌り぀き、頬には薄く砂たで぀いおいた。

    遠銬を飛ばしおきたのだろう。

    膝を぀く動䜜すらわずかによろめき、
    息を敎えようずする喉が䞊䞋しおいる。

    「も、申し䞊げたす  」

    声もたた䞊擊っおいた。
    疲劎だけではない。
    これから告げる内容ぞの恐れが、その震えに混じっおいる。

    「南方宿堎町にお、゜ヌドが九のれツ様の郚隊が亀戊」
    「生還した兵の急報では  郚隊は壊滅状態ずの事に埡座いたす」

    広間の空気が、さらに䞀段冷えたように思えた。

    カネサダは衚情を倉えない。

    ただ、玉座の䞊でゆっくりず芖線を䞋ろした。

    「  続けろ」

    それだけで、䌝什の肩がぎくりず跳ねた。

    「は 盞手は正矩の埓者リュヌヌ、そしお  ゞンラむの匟子、ナりキなる者に埡座いたす」

    「  匟子」

    その䞀語だけ、カネサダの声音にわずかな匕っかかりが生たれる。

    䌝什は頭を䞋げたたた、也いた唇を舐め、急いで蚀葉を継いだ。

    「は  生還した兵どもの蚌蚀では、戊闘のさなか  黒い聖骞が珟れたずの事」

    「聖骞  」

    カネサダの目が现たる。

    「黒い聖骞だず」

    「はっ  」

    「それが、圧倒的な力でれツ様すら抌し返したず  」

    䌝什の声が、そこでさらに掠れた。

    「れツ様の所圚は  未だ確認出来おおりたせぬ」
    「ただ、生還兵らは  れツ様がその黒い聖骞ず亀戊し、その埌  」

    蚀葉が詰たる。
    蚀いたくないのだ。
    あるいは、自分の口で断定したくないのかもしれない。

    カネサダは急かさない。

    だが、その沈黙こそが䌝什には䜕より重かった。

    「その埌、郚隊は総厩れずなり  撀退」
    「珟圚、南方より散発的に兵が戻っお来おいるずの報に埡座いたす  」

    そこたで蚀っお、䌝什はようやく息を呑んだ。

    自分が䜕を報告しおいるのか、
    今さらながらにその重さを思い知ったのだろう。
    ゜ヌドの䞀角、それも頂点の゜ヌドが九が堕ちた可胜性。

    しかも盞手は、正矩の継承に連なる者。
    そしお黒い聖骞。

    玉座の䞊で、カネサダはしばし黙り蟌んだ。

    黒い聖骞。

    その蚀葉だけが、静かに沈んでいく。
    思い出すのは、癜い光ず共に立っおいた男。
    己ぞ未来を蚗したず蚀い切ったあのゞンラむの顔。

    そしお、その最埌の蚀葉。

    ――貎様の信念すらも貫く正矩が  

    篝火の揺らぎの䞭で、カネサダはゆっくりず目を閉じた。

    黒い聖骞。
    その急報が、死したゞンラむの蚀葉ず奇劙に重なる。

    やがお目を開き、玉座の闇ぞ䜎く呟く。

    「  なるほど」

    その声に、笑みはない。

    「貎様が芋たのは、それか。ゞンラむ」

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    䞀拍の沈黙。

    「だずすれば――尚曎、甘い」

    吐き捚おるように蚀う。

    だがその蚀葉の底には、拭い切れぬ違和が残っおいた。

    黒い聖骞。
    正矩の継承者が纏うには、あたりにも歪な響き。

    だが、それがゞンラむの蚀葉ず結び぀くこず自䜓が、
    カネサダには䞍快だった。

    「良い。䞋がれ」

    その䞀蚀に、䌝什は目に芋えお安堵した。

    「は 倱瀌臎したす」

    咎められなかった。
    怒りを向けられなかった。

    それだけで呜拟いしたような顔をしお、
    䌝什は深々ず頭を䞋げるず、足早に広間を退出しおいく。

    扉が閉たる。

    再び玉座の間に静寂が戻った。
    だが今床の静けさは、先ほどたでずは少し違っおいた。

    どこか、底の芋えない氎面に小石を投げ蟌たれた埌のような、
    埮かな波王を孕んでいる。

    カネサダは、その静寂ぞ向かっお呌びかけた。

    「タワヌズ」

    声は倧きくない。
    だが、その䞀蚀だけで広間の空気が倉わる。

    闇が揺らぐ。
    石柱の陰から。

    倩井ぞ溶け蟌んでいた暗がりから。
    玉座の背埌に䌞びる圱の淵から。

    足音もなく、䞃぀の圱が珟れた。

    人でありながら人ではないような、奇劙な圧。
    それぞれが異なる歪みを纏いながら、
    ただ䞀぀の意志のもずに集たっおくる。

    その䞭から、䞀歩前ぞ出た圱があった。

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    アザれル。

    口元に䞍敵な笑みを浮かべ、胞ぞ手を圓おるようにしお恭しく頭を䞋げる。

    その瀌は、完璧だった。
    臣䞋ずしおの所䜜に、欠けたずころはひず぀もない。

    だが、そこに忠誠の熱はなかった。
    あるのは、硝子越しに炎を眺めるような、冷えた奜奇だけだった。

    「お呌びで、マスタヌ」

    声は柔らかい。
    瀌も深い。
    だが、その県だけは笑っおいない。

    カネサダは玉座の䞊から、䞃぀の圱を芋䞋ろした。

    「正矩の埓者ず、その匟子を远え」

    淡々ず呜じる。

    「生死は問わぬ」

    その蚀葉に、広間の空気がわずかにざわめいた。

    いや、ざわめいたように芋えたのは、
    䞃぀の圱がいっせいに笑みを深くしたからかもしれない。

    アザれルは顔を䞊げ、その笑みを厩さぬたた応じる。

    「かしこたりたしお埡座いたす、マスタヌ」

    そしお振り返り、背埌の圱たちぞ目を向けた。

    「聞きたしたね」

    その声音は柔らかい。
    だが、そこに問いの䜙地はなかった。
    タワヌズの面々は、誰もが口元に䞍気味な笑みを浮かべおいた。

    獲物の匂いを嗅ぎ぀けた獣のように。

    あるいは、埅ちわびおいた遊戯の始たりを前にした子䟛のように。

    「行きなさい」

    アザれルが蚀う。
    それだけで十分だった。

    次の瞬間、六぀の圱が消える。
    走ったのでも、飛んだのでもない。
    ただ、そこにあったはずの気配が䞀斉に倱われた。

    陜炎が颚に溶けるように、闇の䞭ぞず散っおいく。
    広間に残されたのは、玉座のカネサダず、アザれルだけだった。

    しばしの沈黙。

    やがおカネサダが、わずかに芖線を動かす。

    「アザれル」

    「はい」

    「䜕をしおいる」

    アザれルはただそこにいた。

    六぀の圱を芋送ったたた、どこか愉快そうに玉座を芋䞊げおいる。

    「貎様も行くが良い」

    そう告げられおも、アザれルの笑みは薄れない。
    むしろ、いっそう深くなった。

    「面癜いものですねぇ、マスタヌ」

    「  䜕がだ」

    アザれルは胞ぞ手を圓おたたた、穏やかに埮笑む。

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    「぀いこの間たで、先陣を切っお誰よりも戊線に立っおいた貎方が
     ――今はこうしお玉座から䞋知を飛ばしおおられる」

    「立堎ひず぀、怅子ひず぀で、人の振るう力はこうも銙りを倉えるものかず  」

    その目だけが、少しも笑っおいない。

    「いやはや、貎方は実に興味深い  」

    「芳察のしがいもあるずいうものです」

    カネサダの声音が䜎くなる。

    「䜕が蚀いたい、アザれル」

    それでもアザれルは怯たない。

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    むしろその反応すら愉しむように、现い目をさらに现めた。

    「いいえ、䜕も」

    答えはあたりにも滑らかだった。

    「ただ、最埌たで芋届けたいだけに埡座いたす」

    「怒りで立った者が、玉座ぞ座した時――なお怒りのたたでいられるのか」

    「それずも、い぀しか自分が憎んだものず同じ顔をするのか」

    篝火が揺れた。

    アザれルの圱が、床の䞊で䞍自然に䌞びる。

    「呜を数で動かす者を憎みながら、呜を動かす怅子ぞ座る」

    「それは堕萜か、進化か」

    「あるいは、ただの必然か」

    䞀拍。

    「実に、興味深い」

    玉座の䞊で、カネサダはわずかに目を閉じる。

    アザれルの蚀葉は、刃ではない。
    だが、皮膚の䞋ぞ现く差し蟌たれる針のようだった。

    怒りで立った。
    その自芚はある。

    奪われぬために、奪う偎ぞ回った。
    その芚悟もある。

    だが、玉座から呜じた蚀葉が、遠い戊堎で誰かを死なせる。
    その構造が、か぀お憎んだものずどこたで違うのか。
    そんな問いを、今ここで蚱す぀もりはなかった。

    「  もう良い」

    その䞀蚀には、疲劎にも䌌た冷たさがあった。

    「行け」

    アザれルはくすりず笑うず、すぐに胞ぞ手を圓お、深々ず䞀瀌した。

    「仰せのたたに、マスタヌ」

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    その姿勢のたた、茪郭が薄れる。
    篝火の揺らぎに玛れるように。
    倜気ぞ溶けるように。

    だが消える寞前、その口元だけが、最埌たで笑みを残しおいた。

    たるで、ただ幕は䞊がったばかりだず告げるように。
    アザれルの姿は陜炎のように消えおいった。

    再び、広間にはカネサダだけが残る。
    篝火の火が、静かに揺れる。
    玉座に座したたた、カネサダは䜕も蚀わない。

    ただ、広間の闇の奥を芋据えおいた。

    黒い聖骞。
    ゞンラむの匟子。
    そしお、あの最埌の蚀葉。

    ――い぀か必ず珟れる  

    篝火がひず぀、倧きく揺れた。

    カネサダは玉座の闇を芋据えたたた、䜎く呟く。

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    「  来るずいうのなら」

    その声は、静かだった。

    だが、玉座の間の闇をわずかに震わせるほどの重さを垯びおいた。

    「来るが良い  」

    誰に向けたものでもないその䞀蚀だけが、篝火の揺らぐ広間ぞ深く、静かに沈んでいった。

    玉座に座したカネサダは、黒い聖骞の報せを受ける。

    ゞンラむの匟子。
    正矩の埓者。
    そしお、己の信念すら貫くかもしれぬ正矩。

    远撃の呜を受け、タワヌズが闇ぞ散る。

    だがその圱の䞭で、アザれルだけは静かに笑っおいた。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第12話
          ――遞べぬ拳――

    ◀第10話 第12話▶


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