
床ドン未遂|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯49|第8章 ときめかない棚活(だいたい未遂編)
シオリが神殿の廊下を一人歩いていると、白地に金縁のローブの集団とすれ違った。
相変わらず、全員目深にフードを被っていて顔は見えない。
先頭の一人が、何か白い包みのようなものを両手に大事そうに抱えていた。
軽く会釈すると、ローブの人達も会釈する。
「お世話になりました」
「あ、はい」
――特に何もしてないけど。
それより、甘い匂い。ミルクのような。
そしてかすれたような、低い声。
あの時と同じ人な気がして、振り返ると猫のような、赤ん坊のふにゃっとした鳴き声がした。
◻︎◻︎
シオリは自室のソファに寝転びながら、アルバムのページをめくった。
ミカルに言われた通り、前任者の勇者の写真だけは神官Jに返してある。
「.........オムツ勇者。ヨダレ。寝返り勇者。勇者泣く。勇者ニッコリ」
ニヤニヤが止まらない。
最強の萌アイテムを手に入れてしまった。
「シオリ、いいか?」
短いノックと共にドアが開く。
「ま、待って待て待て」
クッションの下に慌ててブツを隠す。
「.........見えてるぞ。角」
「え?何がですかねえ」
気持ち身体で覆い隠す。
「そんなの見て何が楽しいのか」
「だって!私が知らないころのミカルなんだもん!しかも一番無防備!!!」
「返せ」
「嫌だ」
ミカルがアルバム目掛けて手を伸ばし、シオリが腕ごと体当たりで死守する。
どちらかが滑ってそのままソファから転げ落ちた。
シオリはアルバムを胸元に握ったまま床へ仰向けに。その上にミカルが覆いかぶさるように。
.........これはまさしく。
沈黙が流れたかと思いきや、ミカルは跳ね起き、後方へ飛び、シオリの足をつかんでスリッパを放り投げた。
まっすぐシオリの目を見たまま――
「あっひゃっひゃっ」
足裏の刺激に耐えきれず、手元が緩む。
アルバムを胸元から奪うと、ミカルは立ち上がった。
「だめー!持ってかないで!!!」
「案外粘るな」
「.........」
「わかった。けど、他の奴らには共有するなよ」
「しないよ!私だけのだもん」
「そういうことも言うな」
「ね、お茶飲んでく?もう一回見ようよ」
「あと、俺の前でも開くな」
「えー」
延々と言い合いは続いた。
一通り終わって出ていく時、ミカルはドアの手前で立ち止まる。
その後壁に手をついて、しばらく床を見ていた。
◻︎◻︎
夜、お風呂の帰りにミカルを見かけた。
ミカルは廊下の壁に手をついて、しばらく床を見ていた。