
海で泳ごう|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯39|第7章 正しさが通り過ぎる(なんか通り過ぎてった編)
「ねえミカル?」
自室。窓際。
シオリは風を背中に受けながら、ミカルに呼びかける。
「海に行きたい」
「海、ね。しょっぱい方と、しょっぱくない方、どっちだ?」
「え? しょっぱくないやつとかあるの?」
「内海はしょっぱくないし、波も少ないから泳ぎやすい。外海は波が来るから、少し泳ぎにくいな。体は浮くけど」
「それって湖じゃなくて?」
「大きいから海だろ?」
なんだか噛み合わないが、しょっぱくなくて泳ぎやすい方を希望した。
塩分って髪の毛痛むし、日焼けも気持ち加速する気がする。
いつも通りしゅんっとオーブで飛ぶと、港が現れた。
「あれ? ここ? 港?」
「そう。地元の漁師しか止めてないから、安全に泳げる」
なんか思ったのと違うが、ミカルはスタスタと歩き出す。
水は透明で綺麗。船底の近くを魚がすいーっと泳いで行った。
ネコザメも。
……あれは多分退治しなくていいやつ。
ミカルはそのまま船着場からザブンと飛び降りる。
お前も来い、とジェスチャーされるが、海の底が見えない。
「この深さは無理だよ」
途方に暮れた。
正直、こんな所飛び込んでいい女子は朝ドラのヒロインくらいだ。
「しゃあないな」
ミカルはコンクリを動作ひとつで陸地に駆け上がる。
……筋力すごいな。
「あっちなら足つくと思うけど」
指す方を見ると、
……たぶん新品の船を海に付ける用の場所、に思えた。
これが自分達だけなら断っていた。
断っていたが、地元の子ども達も泳いでいるではないか。
シオリは観念して、海に身を浸した。
後半、諦めて泳ぐと、確かに水はしょっぱくなかった。
そして苔で滑った。
そしてスロープが切れると、透明な深淵が再び現れ、情緒が死んだ。
◻︎◻︎
「あんまり楽しそうじゃなかったな」
「いや、私も固定観念ってよくないなって思ったよ。向こうの記憶で、海はこう! って決めつけてた」
ふーん? とミカルは首を傾げる。
「シオリの生まれ育ったとこの海って、どんななんだ?」
「えー? 改めて聞かれると困るな。青い海、白い砂浜。貝殻が落ちてて、そんな感じ」
「なんだ、そんなんでよかったのか」
ミカルはふむと頷いた。
あ、ちゃんとあるんだ。そんな海。
「へー」
と、なんとも気の抜けた声が出た。
「実をいうと、岩坪に連れてくか、一瞬迷ったんだが、話したらシスターに止められた。みんなが泳いでるとこにしろって」
「岩坪?」
「海の生き物好きなら面白いやつ」
「私、小さい頃ビーチサンダルで歩いて足切ったことあるよ。ま、どっちでもよかったかな」
シオリは笑いを堪えきれなくなった。
◻︎◻︎
後日行った海は、ちゃんとしょっぱかった。