メインコンテンツへスキップ
見出し画像

海で泳ごう|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯39|第7章 正しさが通り過ぎる(なんか通り過ぎてった編)

    ◀【前話】  |🏠【目次】|  ▶【次話】

    「ねえミカル?」

    自室。窓際。
    シオリは風を背中に受けながら、ミカルに呼びかける。

    「海に行きたい」
    「海、ね。しょっぱい方と、しょっぱくない方、どっちだ?」
    「え? しょっぱくないやつとかあるの?」
    「内海はしょっぱくないし、波も少ないから泳ぎやすい。外海は波が来るから、少し泳ぎにくいな。体は浮くけど」
    「それって湖じゃなくて?」
    「大きいから海だろ?」

    なんだか噛み合わないが、しょっぱくなくて泳ぎやすい方を希望した。

    塩分って髪の毛痛むし、日焼けも気持ち加速する気がする。

    いつも通りしゅんっとオーブで飛ぶと、港が現れた。

    「あれ? ここ? 港?」
    「そう。地元の漁師しか止めてないから、安全に泳げる」

    なんか思ったのと違うが、ミカルはスタスタと歩き出す。

    水は透明で綺麗。船底の近くを魚がすいーっと泳いで行った。
    ネコザメも。
    ……あれは多分退治しなくていいやつ。

    ミカルはそのまま船着場からザブンと飛び降りる。

    お前も来い、とジェスチャーされるが、海の底が見えない。

    「この深さは無理だよ」

    途方に暮れた。

    正直、こんな所飛び込んでいい女子は朝ドラのヒロインくらいだ。

    「しゃあないな」

    ミカルはコンクリを動作ひとつで陸地に駆け上がる。

    ……筋力すごいな。

    「あっちなら足つくと思うけど」

    指す方を見ると、

    ……たぶん新品の船を海に付ける用の場所、に思えた。

    これが自分達だけなら断っていた。

    断っていたが、地元の子ども達も泳いでいるではないか。

    シオリは観念して、海に身を浸した。

    後半、諦めて泳ぐと、確かに水はしょっぱくなかった。

    そして苔で滑った。

    そしてスロープが切れると、透明な深淵が再び現れ、情緒が死んだ。

    ◻︎◻︎

    「あんまり楽しそうじゃなかったな」
    「いや、私も固定観念ってよくないなって思ったよ。向こうの記憶で、海はこう! って決めつけてた」

    ふーん? とミカルは首を傾げる。

    「シオリの生まれ育ったとこの海って、どんななんだ?」
    「えー? 改めて聞かれると困るな。青い海、白い砂浜。貝殻が落ちてて、そんな感じ」
    「なんだ、そんなんでよかったのか」

    ミカルはふむと頷いた。

    あ、ちゃんとあるんだ。そんな海。

    「へー」

    と、なんとも気の抜けた声が出た。

    「実をいうと、岩坪に連れてくか、一瞬迷ったんだが、話したらシスターに止められた。みんなが泳いでるとこにしろって」
    「岩坪?」
    「海の生き物好きなら面白いやつ」
    「私、小さい頃ビーチサンダルで歩いて足切ったことあるよ。ま、どっちでもよかったかな」

    シオリは笑いを堪えきれなくなった。

    ◻︎◻︎

    後日行った海は、ちゃんとしょっぱかった。

    ◀【前話】  |🏠【目次】|  ▶【次話】



     
     
    低予算・低体温で回る世界と、爆破でしか更新されない物語。 (雑サメ。連載お休み中。) ログライン『世界の変さより今日の生活』 ・低予算・低体温ファンタジー ・サメは爆破します(重要) ・合わなかったら、そっと閉じてOKです

    あなたへのおすすめ