
ポリゴン神殿と神官たち|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯1|第1章 ポリゴンの猫とセル画ご飯(なんか世界がおかしい編)
※あらすじ
世界の変さより今日の生活。
異常な異世界へ転移した女性が勇者の隣で暮らしている話
低予算・低体温ファンタジー。
世界はたぶんポリゴン。食事はセル画。勇者はサメを爆破する。
元は普通の日本人。国産サメ映画のヒロインに転生し、そこからさらに別の異世界へ転移したシオリは、世界の謎を追うことも救世主になることもなく、何を考えてるかよく分からない勇者と神殿で一緒に暮らし始める。
今日も変な世界で災厄(サメ)が街を泳いだ後、炊き出しを手伝いに行く。
だいたい何も起きないが、たまに温度差で風邪を引く。
――――――――――
――この世界の勇者は、なぜかサメと戦っている。――
シオリは「なんじゃこりゃ」と口の中で呟いた。
「……私この世界で生きてくの?」
シオリはパタンと気絶した。
◻︎◻︎
格好、水着。黒髪ポニーテール。
自分は国産サメ映画のヒロインだった。
もっというと、前世は普通の日本人だった。なのに――
「おお、天界の勇者よ。よくぞ無事に戻られた」
おっさん達の声がする。誰だ。
シオリはこめかみを押さえ、何があったか思い出す。
あの変なサメ映画の世界に現れた、勇者と名乗るイケメン。
ミカルの手を取った瞬間、その場が光に包まれ――
気が付けば、シオリは真っ白な神殿の台座に座り込んでいた。多分。
ざわつくおっさん達はシオリの周りに集まり、口々にこう称え出す。
――異世界からの使者よ、どうかこの国を、この世界を救ってください――
が、何かがおかしい。
シオリは目が霞んでるのかとゴシゴシ擦る。
今座っている場所?
――物体がツルツルすぎる。
もっと言うと滑らかなのに角ばっている。
円形の台座?
もしもここが神殿で合っているなら、白い大理石を真っ先に連想する。
だって周りの人もギリシャ神話のローブを纏ったような格好をしてるから。
けどなんというか、円の解像度がなんだか荒い。
模様的にも石なんだろうとは思うけど、現実味がなさすぎる。
――端的に言おう
「これ、ポリゴンだ」
隣のイケメンは何を言ってるんだ、と言いたげに首をかしげる。
「普通だろ?」って、聞こえた気がした。
「立てるか?」
低すぎない声。
ミカルがシオリに向かって手を差し出す。
……この手を取ったばっかりに。
手をもう一度見て、目線を上げる。
つややかな金髪。その隙間からピンクのハイライトが覗く。
勇者と名乗っていたが、黄色と黒のパーカーに白のシャツとハーフパンツ。
格好はどこにでも居そうな海の兄ちゃんだ。
色が少々多いが、青灰色の目だけ大人しい。
しかし、眩しい。
ああ、やっぱりイケメンだ。
すべて許せる……許せるが。
「なんでミカル以外みんな同じ顔なの?」
周囲が顔を見合わせる。
「ほほほ、こちらに来たばかりで混乱されているのでしょう。不思議なことを言いますなあ」
「いや、古の転移者も同じことを言ったとか言わないとか」
「流石ですな、我々とは物の見方が違うのでしょう」
みんな同じ角度で同じ動きで一斉に頷き出す。
きっちりと同じリズムで。
あ……これデータリソースが足りないやつだ……。
ミカルを見上げると変わらず端正な顔でふむ、と頷いている。
……もしかして私とミカルだけムービー仕様なん?
耳の奥で、ウィーンキュピッキュピッと擦れるような機械音がよぎった。
プレステかな?きっと幻聴。
とりあえず一回気絶するふりをした。
周囲がざわつく。
その中でミカルが小さく息を吐く。
「……うまく倒れたな」
バレてる。
ちなみにBGMは特になかった。