
【雑サメ。#21】 勇者になりたい/第5章 危険物は排除しない前提(普通に隣にいる編)
――世界はポリゴン。食事はセル画。
リアルなのは自分達だけと思っていたら、聖女と転移者は同じ顔?勇者達も同じ顔?
勇者になりたい人もいる?
そして危険物は、処分せず保管されることがある。――
ある日、聖女Dから連絡があった。
「針と糸、ありがとうございます。服が出来たその日から、女神様に頼めば送ってもらえるようになりました。よかったら試してみてください」
……中華袋で届くんだよな。
いや、女神が作ってくれるならありがたい。
シオリはお礼と近況を述べて端末を閉じた。
いつも通り、女神と通じている本神殿にお願いすると、グレーの塊が落ちてくる。
シオリはすぐに開けようとして、やめた。
どうせ試着するなら、部屋でゆっくりやりたい。中華袋を持っててくてく歩く。
この世界の女神様はありがたみが少ない。
By BOSS缶コーヒー
頭に聞きなれたナレーションが流れた。
袋を持って歩いていると、神殿の門の前で騒いでいる人がいる。
通り過ぎると、門番との会話が聞こえてきた。
「無理だよ。勇者になりたいなんてそんな夢見がちなこと言うもんじゃない」
「そんなあ」
勇者になりたい人もいるんだ。
ちらっと見ると、彼の顔面がつるんとしてた。
……結構食べられてるな。
「あ!シオリさん!」
え?私?思わず固まる。
「僕、勇者になりたいんです!ミカルさんに弟子入りさせてください」
彼はストーンときれいなスライディング土下座を決めた。
◻︎◻︎
「勇者になりたい。ふむ」
ミカルは確かめるように頷く。
「僕、Gって言います。実は三回サメに食べられて」
「「三回!?」」
「最後に食べられたとき、こう思ったんです」
Gさんはきらきらした瞳で語り出す。
「もう何も怖くないなって」
無邪気な声が響く。
「で、勇者希望」
シオリとミカルは納得して頷いた。
「神殿から認定もらえるかは知らないが、自分で名乗るのは問題ないんじゃないか?」
「え!?マジすか?」
Gさんの目がますます輝く。
「実績なんてあとから着く。サメも出続ける。人手足りないし、素直に助かる。なんなら剣の稽古ぐらい、付けてもいい」
「ミカルさんまじ優しい……」
拝み出した。とても素直な人だ。
「勇者やりたいなんて、正直正気の沙汰じゃないと思うがな。じゃあ、とりあえず剣持ってみるか」
ミカルは剣を放る。
キャッチした瞬間、Gさんの手が剣と地面にサンドイッチされる。
「……重い」
「帰っちゃったね」
「勇者を押し付けられる、と一瞬期待してしまった」
と、ため息をつくミカル。
「ま、不可能だろうがな」
「勇者はイケメンなほうがいいよ」
とシオリ。
「そういや、ミカルって勇者業嫌いなの?」
「そういうわけじゃないが、思うことはある。なんか、こう、思ったのと違ったなって」
「そうなの?」
「小さい頃は魔王とか倒す職業だって思ってたんだ」
「サメ倒してるとこ、かっこいいよ?」
なぜか黙り込むミカル。サメは最大の賛辞なのだが。
ミカルと別れて部屋に帰る。
女神の中華袋から意気揚々と服を取り出すと、
……首周りが縫い付けられてて着られなかった。
◻︎◻︎
おまけ
シオリ「返品」