
【雑サメ。#18】 イマジナリーポチ/第4章 距離を保つこと(たぶんセーフ寄りの編)
炊き出しに行くとおばちゃん達がボヤいていた。
「米が高くなってから無洗米がなくなって辛い」
「そんな変わる?」
「うーん、ずっと無洗米派だったから地味に辛い」
「農協に機械掛けに行く?無洗米になるよ」
「いいんじゃない?それ」
「どうかな。それすら面倒くさがるパターン来そう。私、無洗米選ぶ人間よ?」
「あーねー」
「慣れたの奪われると、地味に辛いよね」
「わかる」
「わかる」
無洗米だと軽く洗うだけでいいもんな、とシオリは心の中で相槌を打った。
「そういえばさ、うち今犬預かってもらってるんだけど」
「あら、どうしたの」
「病気で入院。しばらくね。そしたら不思議なんだけど」
ため息をついて話を続ける。
「いないのに、いる気がするの。ポチが」
「えー?どういうこと」
「いないのに、ケージ覗いちゃう。ごはんも気がついたら用意してるの」
「わからんでもない」
「うちもあったわ。子ども初めて預けるときね」
「わかる。懐かしい」
「なんだろあれ。イマジナリーポチって命名したわ」
「イマジナリーポチwww」
「ネーミングセンスナイスwww」
早く病気良くなるといいね、とおばちゃん達は食器を洗うスピードをあげた。
◻︎◻︎
ある日ミカルが帰らなくなった。
しばらく遠出するらしい、と神官Bから聞いた。
「まあ、そういうときもあるよね」とシオリは納得する。
神殿の食堂でご飯を食べるとき、ふと隣の席を見る。空いていた席に、別の誰かが普通に座る。
ミカルの部屋をそっと覗く。
窓のカーテンが開いていた。中に入ってそっと閉めると、ふとミカルの残り香がした。
部屋を閉めて、そのまま自室へ戻った。
夕方、またご飯を食べて、お風呂に向かう。
お風呂のタオルセットが減ってない。ミカルがいない日数だけ雑に増えていった。
部屋に戻って端末に目を通す。
特にメールもない。
ふと、ミカルが部屋に来たとき、座る場所に自然と目がいく。
「イマジナリー……」
シオリは首を振る。
何日かするとミカルは普通に帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
それだけ言うと、シオリは炊き出しに向かった。