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序章:それを、私は『運がいい』と呼んでいる

    握りしめるのをやめた手の中に、
    残ったものだけを信じて書く人生の記録。

    私は「自分は運がいい」と思っている。

    努力してここまで来た、とはあまり思っていない。
    かといって、すべてが偶然だったとも思っていない。

    自分で選んできた道の途中で、どうにもならない外的要因が何度か重なった。
    その結果、気がつけば今ここに立っていた。
    そんな感覚がいちばん近い。

    子どもの頃、家族という一番身近で、一番寄り添ってくれるはずの場所がそうではなかった。
    いやだ壊れないで、と泣いても形は少しずつ変わっていった。

    あのとき知ったのは、「自分の人生には、自分の力では動かせないものがある」という事実だった。

    だから私は、人生を完全には信じていない。
    でも完全に手放すほど投げやりにもなれない。

    その中間くらいの力加減で自分の人生を握っている。
    いつでもするりと手を離せる、そんな力加減で。

    そんな私の細い人生の糸を、緩やかに引いてくれた人たちがいた。
    入れ替わり立ち替わり現れたその人たちのおかげで、今、ここに私は立っている。

    それを私は、「運がいい」と呼んでいる。

    この先に書いていくのは、その糸を引いてくれた人たちのこと、そのときの私が何を考え、どう動いていたのかという、小さな記録だ。

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    東京在住。30代後半の会社員。歴史と構造が好き。人生の節目に影響をうけた人たちとの記録を綴っています。

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