【風まかせ文芸部】 『送らなかった「空、高くなったよ」』|秋の空
朝、ベランダに出たら、空が高かった。
昨日までと違う。
夏のあいだ頭の上にあった青が、ちょっと遠くなっている。
夏雲も、ぽつぽつ離れて浮かんでいた。
しばらく、ぼんやり見ていた。
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去年の今ごろ、同じ空を見てスマホを開いた。
「空、高くなったよ」
そう送ったら、彼から「ほんとだ」とすぐ返ってきた。
たったそれだけのやりとりが、うれしかった。
今年は、送る相手がいない。
トーク画面の一番上に、彼の名前がまだある。消せないまま、また一年たった。
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打ってみた。
「空、高くなったよ」
でも、送らなかった。そのまま消した。
消したら、ちょっと肩の力が抜けた。
写真だけ撮っておいた。空の。
誰にも送らないけど、なんとなく残しておきたかった。
洗濯物を干し終わって、もう一回空を見た。
やっぱり高い。夏のときより、ずいぶん遠くにある。
まあ、いいか、と思った。
洗濯物を干し終わって〜まあ、いいか、と思った。
