
西海市崎戸町百話#021〜墓石の文字:崎戸町にて
第二十一話 墓石の文字
崎戸を歩いていて気づいたことがある。
私には見慣れない光景だった。墓石の文字がほとんど金色なのである。
調べてみると、長崎をはじめ九州では墓碑銘を金色に仕上げることが珍しくないという。
地域ごとの文化の違いなのかもしれない。
もう一つ気になったことがある。
墓地には、ときどき赤い文字が刻まれた墓石がある。
最初は何だろうと思った。
これも調べてみると、まだその人が亡くなっておらず、将来入るためにあらかじめ戒名や俗名などを朱色で彫っておく「朱入れ」の風習によるものだった。
本人が亡くなって納骨されると、その赤い色を落としたり、黒や金などで仕上げたりする地域が多い。
墓石は亡くなった人のためだけのものだと思っていた。
しかし実際には、生きているうちから準備されることもある。
そんなことも、崎戸を歩いていて初めて意識したことだ。
墓石は石ではあるが、その土地の文化や人生観を静かに語っているように思えた。
園崎咲人