
「大島大橋」という特異点ー西海市崎戸町百話#050.5
園崎咲人――大島大橋という特異点~西海町(崎戸町百話#050.5)
*ほぼ西海町ネタのため、0.5話扱い
1.太田和港
西海市西海町の太田和港に、古いターミナルの建物が残っている。
建物の正面には「太田……ターミ 」と、ところどころ文字が落ちた看板が残っている。
今これだけを見ても、ここがどれほど重要な場所だったのかは分かりにくい。

2.接続
大島大橋ができる以前、大島や崎戸へ車で向かうには、ここからフェリーに乗った。大島造船所へ通う人たちも、太田和から船で海を渡っていた。
それが1999年11月11日、大島大橋の開通によって、すべてが変わった。
橋が一本できた。たったそれだけのことにも見える。
しかし、それまで「船に乗らなければ行けない島」だった大島と、その先の崎戸が、本土と道路でつながった。
私はこれを、一つの特異点だったのではないかと思う。
特異点という言葉を、私はAIの未来を考える時によく使う。
ある地点を越えることで、それまで当たり前だった仕組みや生活が大きく変わってしまう。
大島大橋も同じだった。
3.残ったもの
もっとも、橋ができた瞬間にすべてが変わったわけではない。
当初、大島大橋は有料だった。その後2011年に無料化され、島と本土の距離はさらに縮まった。

一方で、船がすべて消えたわけでもない。
今も肥前大島港には佐世保から高速船がやって来る。大島造船所の稼働日に合わせた便もあり、海から島へ入る人たちは今もいる。
消えたものと、残ったものがある。
そして太田和には、役目を終えたターミナルの建物が残っている。
4.特異点
未来は突然やって来る場合と、知らないうちにやって来ている場合のふた通りある。
それぞれの瞬間には気づかなくても、振り返った時、そこを境に世界が変わっている。
大島大橋は、大島町と崎戸町が越えた一つの特異点だったのかもしれない。
園崎咲人