
貴重な水:ダイヤソルト株式会社①~西海市崎戸町百話#058
第五十八話 貴重な水:ダイヤソルト株式会社①
1.洞窟サバイバル
1年前、あるサバイバルに参加した。
海岸沿いの入江で、スマートフォンは圏外。
食べ物は、仲間たちと力を合わせて採ったものだけだ。
魚、カニ、野草、海藻。
ただし、水だけは支給された。4リットル。これで5日間だった。
困ったのは、どのくらいのペースで飲めばいいのか分からないことだった。
計算すれば、1日当たり800ミリリットル。でも、暑さの中でいつどれくらい喉が渇くのかは分からない。
少しずつ飲むしかない。喉が渇いても、一気には飲めなかった。
結果、5日目になっても少し残っていた。
普段の生活で、こんなことを考えることはない。

2.ふるさと
私は海と、まったく縁のないところで育った。
千曲川の清流があり、その支流、神川もある。
現在の地元でも、当たり前だが蛇口をひねれば水が出る。
もちろん、水が大切なのは知っているが、水があと何リットルあるのかを考えながら生活したことなど、ほとんどなかった。
サバイバルでも、カニやヤドカリ、海藻は採れた。野草も食べた。
それでも、水だけは支給された。海は目の前にあるのに、飲める水だけはそこにはなかったのだ。

3.崎戸と製塩
崎戸は海に囲まれている。見渡せば、水だらけである。
ところが、かつての崎戸では生活用水の確保が大きな問題だった。
サバイバルの時と同じだ。周りは海なのに、飲める水がない。
そこで1950年代に崎戸製塩所が設立され、製塩のために海水が使われた。
そして、その製塩の過程から得られる水が、崎戸の生活用水にも使われるようになった。
炭鉱閉山後も製塩工場から水道原水の供給は続いたという。
現在のダイヤソルト崎戸工場だ。
4.認識
私はこれまで、この大きな工場を「塩を作るところ」としか見ていなかった。
海に囲まれているのに、水がない。
そして、塩を作ったら、水ができた。
島で暮らしたことのない私には、この話が妙に残った。
蛇口をひねれば水が出る。
その向こう側を、私はほとんど見たことがなかった。
園崎咲人