
西海市崎戸町百話#036〜夏の夜の停電
園崎咲人ーー第三十六話 崎戸島:停電の夜
真夏の崎戸島で、夜中に停電したことがある。
その日は激しい雷雨だった。
私の家は本郷にある。家の裏はすぐ山だ。
大雨になると気になる。
土砂災害の情報も出ていた。
そこへ突然の停電だった。
電気が消え、当然エアコンも止まった。
真夏で、暑い。窓を開ければいいのだが、外は激しい雨だ。雷も鳴っている。
そして窓の向こうには裏山がある。
もし崩れたら。
そう考えると、家の中にいること自体が怖くなってきた。
家族で車へ避難することにした。
裏山から離れた場所まで車を走らせ、そこで停めた。
車のエアコンをつけて涼む。
外では相変わらず雷が鳴り、大雨だった。
私たちは、そのまま車の中で一夜を過ごした。
朝6時頃に、ようやく電気が復旧し家へ戻った。
何事もなく助かった。
ただ、一つ不思議なことがあった。
私たちのように車へ避難している人を、ほかに見なかった。
みんな家にいたのだろうか。
停電した真夏の家は暑くなかったのか。
あの雨で、裏山が怖くなかったのか。
それとも、崎戸で暮らしてきた人たちには、あれくらいの雷雨は珍しくないのだろうか。
あの夜、崎戸で一番慌てていたのは、よそから来た私たち家族だけだったのかもしれない。
それ以来、崎戸で雷が鳴ると、少しだけあの夜を思い出す。
園崎咲人