
西海市崎戸町百話#018〜浮く波止場:崎戸町本郷港にて
第十八話 浮く波止場
本郷港の波止場に初めて立った時、少し驚いたことを覚えている。
足元が揺れるのである。
一瞬、気のせいではないかと思った。
しかし違った。
波止場そのものが海に浮いていたのだ。
波が来るたびに、ゆっくりと上下する。斜めにも揺れる。そして水面からそんなに高くはない。
慣れていない私は、少し怖かった。
「なぜ、こんな造りなのだろうか。
いろいろと調べると、小さな漁港では珍しいものではないらしい。
潮の満ち引きがある港では、浮桟橋にすることで、小型船が着けやすくなるという。
島の人にとっては当たり前のことでも、私には初めて知る世界だった。
今では本郷港へ行くと、勝手に踏み入れていいのかもわからないが、つい波止場へ足を運んでしまう。
相変わらず揺れている。
それでも、あの揺れは波に逆らっているのではなく、波に合わせて動いているのだと思うようになった。
島で暮らすということは、海に勝つことではない。
海と付き合うことなのだと、あの小さな波止場が静かに教えてくれた。
園崎咲人