
西海市崎戸町百話#046〜「無田島」②ー無田島とは?
園崎咲人ーー第四十六話 無田島②――無田島とは?
無田島。
この名前を初めて見たとき、私はそのまま読んだ。
「田んぼが無い島」。
確かに、今の無田島を見ても田んぼはない。
崎戸島にも蛎浦島にも、私は田んぼを見た記憶がない。
だから、田んぼのない小さな島なので「無田島」。
そんな名前なのかと思った。
ところが調べてみると、どうも違うらしい。
「無田」は「むた」と読む。
九州には、この「むた」という地名が各地に残っている。
牟田、無田。
漢字は違っても、「むた」は湿地や沼地、ぬかるんだ土地を表す古い言葉だという。
崎戸の無田島も、古い資料では「牟田島」と書かれることがある。
つまり「無田」という漢字だけを見て、「田が無い」と考えてはいけないようだ。
むしろ気になるのは反対だ。島のどこに「むた」があったのだろう。
今の無田島は蛎浦島と完全につながっている。
どこからどこまでが昔の島だったのかさえ、現地を見ただけでは分からない。
まして、湿地だった場所など私には想像もつかない。
島だったことは「島」という字が覚えている。
湿った土地だったことは「むた」という音が覚えているのかもしれない。
地形が変わっても、名前は残る。
無田島という四文字には、今の景色からは見えなくなった昔の土地が残っている。
園崎咲人