メインコンテンツへスキップ
見出し画像

主役を降りても、名誉がある。鳥取とひらめの物語

    週末、鳥取県の西側にある米子の街を歩いていたとき、一枚ののぼりが目に入りました。

    「名誉県魚 ひらめ」

    ちょっと待って。
    名誉県魚?

    「県魚」とは都道府県ごとに制定された、その地域を代表する魚のこと。全部ではありませんが、制定している都道府県は決して珍しくありません。

    でも「名誉県魚」がいるのは、鳥取だけなのでは??

    そういえば、何年か前に新聞の一面に「名誉県魚の話、載っていたなぁ」とふと思い出しました。

    普通、新聞の一面に「名誉県魚」なんて載らないと思うのですが、だからこそ強烈に印象に残っていました。これもまた鳥取らしいのかもしれません。


    ヒラメは32年間、県魚だった

    1990年から2022年まで。実に32年間、ヒラメは鳥取県の「県魚」の座に就いていました。栽培漁業のメイン魚種として、鳥取沿岸の漁業を長年支えてきた魚です。

    でも、あるころから声が届くようになります。

    「認知度が低い」「ヒラメより鳥取らしい魚があるのでは?」。
    飲食店や現場のプロたちから、そんな意見が上がってきたのです。


    「1匹に絞れないなら、全部選ぼう」という発想

    2022年7月18日、海の日。

    鳥取県は「四季の県魚」を制定しました。春・夏・秋・冬、それぞれの季節に複数の県産水産物を選ぶ、という新しい形で。合計20種類。全国でも最多の数です。

    春はハタハタ、もさえび、サーモン、マダイ、ホタルイカ、ワカメ。
    夏は白いか、クロマグロ、岩がき、あご(とびうお)、マアジ。
    秋はのどぐろ、ベニズワイガニ、甘えび、サワラ。
    冬は松葉がに、親がに、かれい、ブリ、マダラ。

    サーモンは以前記事で書かせていただきました!

    ちなみにハタハタは、春・秋どちらのアンケートでも1位だったため、両方に選ばれています。どちらかに絞れないなら、両方でいい。そのゆるやかな判断が、なんとなく鳥取らしいと感じました。

    選んだのは県庁の担当者だけではありません。県内のスーパーや仲買人など、現場のプロたちが「この季節に食べてほしい魚」をアンケートで答え、その集計結果をもとに協議会が選定しました。

    消費者にとっても「今食べるべき魚」がわかりやすくなった。季節ごとに推しの魚を設定できるようになった量販店からも、歓迎の声が上がったそうです。

    鳥取には「かにっこ館」という施設もあるんですよ。くわしくはこちら↓


    「名誉県魚」という、やさしい引退のかたち

    ここで、わたしが一番気になっていたことに戻ります。

    じゃあ、32年間県魚だったヒラメはどうなったの?

    その答えは、「名誉県魚」。

    外されたのではなく、送り出された。長年の功績を称え、特別な称号を与えられた。そういう形での引退でした。

    米子のあののぼりは、そのことを伝えていたのでしょう。


    でも、だてに名誉県魚をやっているわけじゃない

    「名誉県魚ってちょっとかわいそうでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

    でも、鳥取のひらめは絶品です!
    我が家でも時々、スーパーで地物のひらめをいただいております。
    地物のひらめは、身がきゅっとしていて、派手な脂ではなく、噛むほどに甘みが出る。時々出てくるお買い得価格が本当にありがたいです。

    ご旅行等で鳥取に来られる方、
    鳥取県の東側、湯梨浜町の泊港に「海の駅とまり」という場所があります。そこに併設された食事処「元気海(げんきかい)」では、すぐ隣の養殖場で育ったヒラメをそのまま食べられるそうです。

    養殖方法が珍しい。海底の砂層で濾過された海水をポンプでくみ上げ、かけ流しで育てる「井戸海水式陸上養殖」。日本でもごく一部でしか行われていない方法とのこと。

    (筆者はまだ元気海さんに行ったことがないので、ぜひ行ってみたいですね。)

    32年間、鳥取の県魚として愛されてきた理由が、きっと口の中でわかるはず。


    主役を降りても、存在感は変わらない

    負けたわけじゃないんです。

    主役の座を後輩たちに譲り、「名誉」という肩書きで見守り続ける存在になったんです。

    人にも重なるところがあるかもしれません。定年後も地域のために動き続ける人。子どもが巣立ったあとも、ちゃんと存在感のある親。「現役じゃなくなること」と「終わること」は、まったく別の話だな、と。

    鳥取は、それをヒラメに体現させた気がします。


    あなたの地域にも、そういう「名誉ある存在」があるかもしれません。静かに場所を譲って、でも消えるわけじゃない。表舞台を退いても、根っこはちゃんとそこにある。

    「四季の県魚」を知ってから、鳥取の食卓が少し違って見えます。春に港で買ったホタルイカ、夏に食べた白いかの刺身、冬に頰張った松葉がにの甘み。あの一つひとつが、20種類の「推し」の一角だったんだなぁ。。。


    もちろん、ひらめも。



    参考サイト

    画像もこちらから拝借↓


    最後までお読みいただきありがとうございました!
    他の記事も是非ご覧ください★

    そのうち「宇宙ひらめ」なんてのもあるかもしれませんね

    鳥取の魚、もっと詳しく知りたい人は図書館へ!

    「主役を降りても、名誉がある」
    これも見方をちょっと変えただけ。私の人生も、失敗だと思ったら最高の転機でした

    とっとりのいいものについて書いている「いいものインサイト」はこちらのマガジンからどうぞ


     
     
    ―地方にはまだ知られていない価値がある― 鳥取を中心に、子連れ旅行・地方暮らし・ローカル体験を発信 ガイドブックに載らない地方の魅力を発掘します 鳥取の“いいもの”から学ぶ【いいものインサイト】連載中。 マガジンからご覧ください

    あなたへのおすすめ