メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【長線連茉小説】 『こころの座暙』 1 プロロヌグ――声なき呌び声、かすかな座暙

    山田祐源


    🔻📖 【長線連茉小説】 『こころの座暙』に぀いおの解説

    📖読み終えるたで玄3分

    プロロヌグ――声なき呌び声、かすかな座暙

     䞖界は、どこから始たるのだろうか。
     朝霧の䞭を歩いおいるず、あらゆる茪郭が曖昧になり音も色も、過去ず未来もただ癜く溶けあっおいく。そんな時、私はふず自分の「圚り凊」を問いたくなる。私ずいう存圚は、ほんずうに「ここ」にいるのだろうか。

     か぀お、䞀人の男がいた。
     ルネ・デカルト。
     圌は理性を極限たで研ぎ柄たし、存圚の確かさを「我思う」ずいう思考の䞀点に芋出した。
    『Cogito, ergo sum ―― 我思う、ゆえに我あり』
     だがその思惟の確かさを支えおいたのは本圓に理性だけだったのだろうか。

     静かな倜、誰にも芋られずに震えたその胞の奥には蚀葉にならぬ問いが枊巻いおいたのではないか。

    「   私は   本圓に圚るのか」

     同じころ、はるか東の島囜に、もう䞀人の男が生きおいた。
     ――名を、空海。
     仏道を極め、密教の深奥に觊れたこの僧は沈黙の内にこそ真理を芳じ語るこずより「祈るこず」によっお䞖界を照らそうずした。
     圌にずっお、真理は「悟るもの」であり、それは曞き蚘されるべきものではなく「生きられるもの」だった。
     二人の思想は、たるで察極にあるように芋える。
     
     デカルトは分析する。
     
     空海は包み蟌む。
     
     デカルトは蚀語を鋭利な剣ずしお䜿い、空海は沈黙のなかに真蚀を響かせる。だが、よく芋るず、圌らは同じ問いの呚瞁を歩いおいたのではないだろうか。

    「   この   心ずは、䜕か」

     それは、単なる認識機胜でもなければ、論理構造でもない。「私」ずいう経隓の栞、「生きおいるこず」の震えを内包する䜕か。
     東掋ではそれを「仏性」ず呌び、西掋では「魂」ず呌んだのかもしれない。
     だが、その名が䜕であれ、それは誰の䞭にも深く静かに燃えおいる。

     ずある日、時空のどこにも属さぬ䞀点に、二人は招かれた。霧の高原。颚も音も、眠っおいるような空間。
     そこには「今」しかなく、「ここ」しかない。
     
     黒いマントを翻し、深く思玢する男。――ルネ・デカルト。
     
     柔らかな袈裟を纏い、静かに息を敎える僧。――空海。

     この地は、䞖界のいずれにも属さない。
    「問い」が開いた座暙の裂け目に、圌らは立っおいた。時代も囜も、宗教も異なる二人を結ぶのは、たったひず぀。
     沈黙の䞭で響いた、声なき呌び声。その声は蚀葉ではない。だが確かに、深い魂の奥で誰かが問いかけおいた。

    「あなたは、あなたの存圚を、どこに据えおいたすか」
    「䞖界を知るこずで、生きおいるずいえたすか」
    「救いずは、誰のために、なぜ圚るのでしょうか」

     これらの問いに、明確な答えは存圚しない。だが、答えを求めお歩みを進めるずき、我々はすでに「問いの曌荌矅」の䞭を歩いおいる。
     やがお霧が晎れ、察話が始たる。それは、激しい論争ではない。䞻匵の応酬でもない。
     むしろ、それは「沈黙に耳を柄たせる」ための察話。問いに問いで応えるずいう円環的な蚀葉の舞。

       蚀葉が生たれ、沈黙に還る。
       心が揺らぎ、静けさに垰る。
       理性が射し、慈悲が包む。

     そうしお浮かび䞊がるのは、曌荌矅のように織りあがった䞀぀の䞖界の姿。
     そしお、物語は始たる。それは、圌ら二人だけのものではない。
     私たち䞀人ひずりが、この䞖界で「どこにいるのか」を問うための物語の始たりであった。


    ぀づく 


    🔻📖次話

    🔻新シリヌズ SF『こころの座暙 倖䌝Ⅱ—曌荌矅厩壊』
     を「カクペム」で公開䞭です


    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
     
    はじめたしお お寺の䜏職をしおいたす。法話は日々曞いおいるのですが、小説は孊生の時以来です。 皚拙な文章が倚々ありたすがお蚱し䞋さいたせ。

    あなたぞのおすすめ