メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

アノァン・デッド〜違う道が あったなら〜第1話『 私は  誰 』


    画像

    芖界に飛び蟌んできたのは倩井だった。

    癜い倩井。
    现い金色の瞁取り。
    その䞭倮から、柔らかな光が萜ちおいる。

    しばらく それを芋おいた。

    画像

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
    アノァン・デッド
    〜違う道が あったなら〜
    第1話『 私は  誰 』
    ◇ ◇ ◇ ◇◇


      知らない。

    そう思った。
    けれど、䜕が知らないのかが分からない。

    倩井なのか。
    この堎所なのか。
    それずも  自分なのか。

    身䜓を起こそうずしお、背䞭に柔らかな抵抗を感じた。

    ゜ファだった。
    深い灰色の倧きな゜ファ。

    腰を沈めたたた、ゆっくり䞊半身を起こした。

    髪が頬ぞ萜ちる。
    反射的に手で払う  指先が止たった。

    髪 短い。
    顎のあたりたでの長さ 。

    自分の髪なのだろう そう考えおから、奇劙なこずに気づいた。

    觊れた感芚しか知らない。
    い぀切ったのか
    い぀からこの長さなのか
      䜕も浮かばない。

    画像

    䞡手を膝の䞊ぞ眮いた。
    オリヌブグリヌンの垃地。
    長いワンピヌス。

    柔らかな生地が膝から足元ぞ流れおいる。
      これも知らない。

    袖を぀たむ。
    しかし 芋芚えはなかった。

    「  」

    声を出そうずしお、喉の奥が貌り぀いた。
    痛いほどではない。

    ただ、也いおいる。
    唟を飲み蟌む。
      足りなかった。

    もう䞀床。
      やはり足りない。

    喉元ぞ手を圓おた。

    氎。たず、それが欲しい。

    立ち䞊がるず、少しだけ身䜓が揺れた。
    ゜ファの背ぞ手を぀き、足元を芋る。

    黒いショヌトブヌツ。
    傷も汚れもない。
    ワンピヌスにも乱れはなかった。

    自分の身䜓にも、目に぀く傷はない。
    眠っおいただけ  そう芋える。
    けれど  どこで
    なぜ

    顔を䞊げお蟺りを芋枡す  広い郚屋だった。
    いや、郚屋ずいうよりラりンゞだ。

    䜎いテヌブル。
    革匵りの゜ファ。
    磚かれた床。

    壁際には背の高い芳葉怍物。
    離れた堎所には小さなバヌカりンタヌ。
    花瓶には癜い花が敎えられおいる。

    照明も点いおいるし、空調の䜎い音も聞こえる。人が䜿うために敎えられた堎所。
      なのに、誰もいない。

    しばらく立ったたた、耳を柄たせた。

    話し声。
    足音。
    食噚の觊れる音。
    ゚レベヌタヌの到着音。

       䜕もない。
    聞こえるのは空調だけだった。

    「  すみたせん」

    自分の声は、思っおいたより小さい声だった。そしお、  誰からも返事はない。

    「誰か  いたすか」

    今床は少し倧きく声にした。
      それでも、返事はない。

    自分の声だけが、広いラりンゞの䞭で薄く消えた。

    喉がさらに也いた。

    バヌカりンタヌぞ向かった。
    歩くたび、ワンピヌスの裟が足銖ぞ觊れる。

    カりンタヌの内偎を芗く。
    グラスが逆さに䞊べられおいた。
    氎差しもある。

    蛇口をひねるず 氎が出た。
    䞀瞬、肩の力が抜ける。

    グラスを取り氎を泚ぐ。
    半分ほど入ったずころで埅おず、そのたた口ぞ運んだ。

    画像

       冷たい。

    喉を通っおいく。
      䞀杯。
       さらに䞀杯。

    二杯目を飲み干したあず、グラスを口元に残したたた動きを止めた。

    おかしい   。也いおいる。
      さっきより楜にはなった。
    それでも、䜕かが残っおいる。

    喉ではない もっず奥。胞の内偎なのか
    胃なのか  堎所が分からない。

    身䜓のどこかに、小さな空掞が開いおいる。氎がそこだけを避けお流れおいくような感芚。

    グラスを眮いお、呟いた。

    「  䜕これ」

    答える者はいない。

    カりンタヌから離れる。
    そのずき、芖界の端に黒いものが芋えた。

    ヌヌ゜ファ。

    さっきたで自分が眠っおいた堎所。
    座面の暪に、スマヌトフォンが萜ちおいる。

    戻っおスマヌトフォンを手に取る。
    画面ぞ觊れるず点灯した。
      ロックはかかっおいなかった。

    画像

    最初に目ぞ入ったのは通知だった。

    䞀件。

    それだけ。
    芪指でスワむプし、画面を開いた。

    短い文章が衚瀺される。

    『奎らはダバい。建物から出ろ』

    眉がわずかに寄った。
     もう䞀床読む。

    『奎らはダバい。建物から出ろ』

    送り䞻  名前は衚瀺されおいない。
    履歎を確認するず、他のメッセヌゞはない。

    写真を芋る  䜕もない。
    連絡先には ほずんど情報がない。

    スマヌトフォンを持ったたた、ラりンゞを芋枡した。

    奎ら
    誰のこずだ
    「建物から出ろ」なぜ

    そもそも  私は誰なの

    そこたで考えお、思考が止たった。
    自分の名前    。

    目を䌏せた。
    䜕かを探すように、蚘憶の䞭ぞ手を䌞ばす。

      しかし、䜕もない。

    暗いわけでもない。
    靄がかかっおいるわけでもない。

    たるで最初から、そこに棚そのものが存圚しおいないような空癜だった。

    けれど、ひず぀だけ。

    「  メグ」

    口から出た。
    自分の声に驚いお、顔を䞊げた。

    メグ。

    誰かにそう呌ばれおいた気がする。

    い぀
    誰に
      分からない。

    本名なのか  
    愛称なのか  
    それすら分からなかった。

    ただ 自分を指す蚀葉ずしおは、それほど遠くない。

    スマヌトフォンを握る。
    䜕もないよりはいい。

    メグは歩き始めた。

    ラりンゞの出口を抜ける。
    廊䞋 。
    厚い絚毯 。

    壁には等間隔に照明が䞊び、䜎い䜍眮から暖色の光を萜ずしおいる。客宀の扉が䞊んでいた。どれも閉じおいる。

    ノブぞ手を䌞ばす。

    䞀぀目。  開かない。

    二぀目。  開かない。

    䞉぀目も、その先も同じだった。

    カヌドキヌのようなものは持っおいない。
    ポケットを探る。

      䜕もない。
    スマヌトフォンだけ。

    廊䞋の突き圓たりに案内衚瀺があった。
    メグは足を止める。
    そこに曞かれた数字を芋る。

    20F

    「  二十階」

    声にするず、急に高さを感じた。
    同時に、蟺りを芋枡し 窓を探した。

    するず、すぐ近くに倧きなカヌテンがあった。床から倩井たで届く、厚い遮光カヌテン。その向こうに窓があるはずだ。そこから倖を芋れば時間くらい分かる。

    朝なのか、倜なのか、街があるのか 。
    この疑問はカヌテンを開ければ解決する。

    メグはカヌテンぞ近づき  手を䌞ばす。
    垃ぞ指先が觊れた。

    ヌヌその瞬間。

    胞の奥が匷く瞮んだ。

    「っ  」

    思わず、カヌテンたで䌞びた手を匕く。
    あたりの胞の痛みに、呌吞が止たりかけた。
    䜕が起きたのか分からない。

    画像

    額の奥にも鈍い痛み。
    胃がひっくり返るような感芚。

    メグは数歩埌ろぞ䞋がった。
    カヌテンから離れるず痛みが薄くなる。


    「  は」


    呌吞を敎えおからもう䞀床、カヌテンを芋る。しかし、䜕も起きおいない。

    カヌテンはただ垂れおいるだけ。
    そしお、私は觊っただけだ。

    開けおもいない。
    それなのに身䜓が拒絶した。

    メグは喉ぞ手を圓おた。
      也いおいる。そこだけは倉わらない。

    スマヌトフォンの文章が頭ぞ戻っおくる。建物から出ろ。

    「  出ろっお蚀われおも」

    出口がどこかも分からない。

    ゚レベヌタヌホヌルぞ向かず、二基の゚レベヌタヌがあった。

    呌び出しボタンを抌すずランプが点灯する。

    画像

        少し埅぀。
    しかし、䞀向に扉は開かない。

    もう䞀床抌した。
    ランプは点いおいる。
    しかし、階数衚瀺は動かない。

    扉ぞ耳を近づける。
      機械音すら聞こえなかった。

    「故障  」

    隣の゚レベヌタヌも同じだった。

    仕方なく、非垞階段の衚瀺を探す。
    案内板を芋お、廊䞋を䞀呚する。
    サヌビス通路らしき扉も調べた。

    しかし、階段がない。いや 正確には芋぀からない。二十階のホテルなのに、䞋ぞ降りる方法がないのだ。

    メグは再びラりンゞぞ戻っおきた。
    最初に座っおいた゜ファが芋える。

    ほんの少し前たで、そこが唯䞀知っおいる堎所だった。今も䜕も分からない。

      ただ、分からないものだけが増えた。

    名前。服。ホテル。時間。譊告。カヌテン。動かない゚レベヌタヌ。消えた階段。

    そしお  喉の枇き。

    メグはバヌカりンタヌぞ向かおうずした。

    ヌヌそのずきだった。


    ズル  


    ズル    


    ズル  


    小さな音。空調ではない。
    しかし、遠い。
    それは廊䞋の奥で䜕かが擊れおるようだ 。

    垃
    あるいは、床を撫でるような音。

    メグは振り返った。
    しかし、誰もいない。

    もう䞀床耳を柄たす。


    ――すっ。


    短い音。誰かが歩いおいる。
    けれど、靎音ではない。

    メグの指が、無意識にスマヌトフォンを匷く握った。画面には、ただあの文章が残っおいる。


    『奎らはダバい。建物から出ろ』


    廊䞋の先には、閉じた客宀の扉が䞊んでいる。そのうちの䞀぀。さっき通ったずきには閉じおいたはずの扉が  わずかに開いおいた。

    隙間から、暖かな光が挏れおいる。
    メグは動かなかった。いや、動けなかった。

    喉が鳎る。氎を二杯飲んだばかりなのに。
      どうしようもなく、也いおいた。

    画像

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

    ここたで読んで䞋さり、ありがずうございたす。『アノァン・デッド』の最新話は、毎週月・朚に掲茉したす。次回もお楜しみに。

    🔜第2話


    あなたぞのおすすめ