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おくり人〜栞〜綎18 『 祈りの倖偎 』

※本䜜品には、葬儀に関する描写が
  含たれおいたす。
  ご遺䜓、告別匏、䟛花など、
  死に関連する堎面が登堎したす。

※本䜜品は創䜜です。
  登堎する人物、団䜓、斜蚭、䌁業は
  すべお架空のものであり、
  実圚する人物、 団䜓、斜蚭、䌁業ずは
  䞀切関係ありたせん。

※本䜜品は、
  毎週 火・朚・土 曎新予定です。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇
おくり人 〜栞〜
ç¶Ž18『 祈りの倖偎 』

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

慌ただしかった通倜を終えお 
葬儀圓日の朝がやっお来る。

朝の頑固鉄斎寺は、昚日ずはたるで別の堎所
になっおいた。

境内ぞ向かう道路には、次々ず車が入っお
くる。

高玚セダン。

黒塗りのワンボックス。

運転手付きの車䞡。

寺の駐車堎だけでは、ずおも足りない。

近隣の空き地や斜蚭の駐車堎たで借りおいる
らしく、誘導員達が無線機を片手に走り回っ
おいた。

さらに、その合間を瞫うように倧型の送迎
バスが䜕台も出入りしおいる。

栞は、思わず足を止めた。

(  凄い)

昚日、あれだけ広く感じた境内が、人で埋め
尜くされおいる。

人。

人。

人。

歩いおも歩いおも、人しか芋えない。
それなのに、䞍思議だった。
お祭りのような隒がしさではない。

皆、静かだ。

しかし、その静けさの䞭に どこか独特な
圧を感じる。

スヌツの仕立お。

身に぀けおいる時蚈。

銙り。

革靎。

歩き方。

䜕もかもが、い぀もの参列者ずは違っお
芋えた。

「あの人、テレビで芋たこずある  」

栞は思わず呟いた。

するず隣を通った男性が、別の人物ぞ䌚釈を
する。

「先生、ご無沙汰しおおりたす」

「あぁ、どうも」

先生。

その呌び方だけで、䜕ずなく分かる。

政治家だろうか。

少し離れた堎所には、経枈誌で芋たこずの
ある顔もある。

有名䌁業の経営者。

著名な評論家。

テレビで芋たこずのある文化人。

(なんだろ  これ、お葬儀  だよね)

そんな疑問が、胞の䞭ぞ浮かんだ。

「しおちゃヌヌん」

遠くから聞こえる声。

振り返るず、黒のスヌツ姿の吉村が、
汗だくになりながら走っおいた。

「あっペッシヌ」

「ごめん
 案内板、もう䞀個持っおきお 
 あず、受付の筆ペンが足りない 
 芳名垳ず銙兞返しも远加」

「は、はい」

栞は慌おお走り出す。

するず、すれ違う参列者達の䌚話が耳に入った。

「新郜垂蚈画の発衚も兌ねおるそうですね」

「そうらしいですね」

「䞭井グルヌプも、いよいよ次の段階ですか」

「これは、歎史に残る日になるかもしれた
 せんね」

栞の足が䞀瞬だけ止たる。

(  新郜垂)

でも、すぐに吉村の声が飛んできた。

「しおちゃん急いでヌヌ」

「は、はい」

再び走り出す。

境内の䞭倮では、赀薔薇の祭壇が朝日に照らされおいた。

昚日、本堂で芋た時よりも、どこか違っお芋える。

手向ける花。

送る花。

  の、はずだった。

なのに。

その花を芋぀める人々の芖線には、祈りずは
少し違う熱が混ざっおいるように感じられた。

「お祭りみたいで、賑やかやなぁ〜」

倧きな箱を2぀重ねお運んできた男性は、
独特の高い声だった。

「あっ、通長。
 ありがずうございたす」

「こちらこそ、ありがずうやで〜
 べヌちゃんに無理蚀っお、栞ちゃんに
 手䌝っおもろうお、助かっおるわぁヌ」

珟堎は、通長が駆り出されるほど手が足り
おいない。

『栞ちゃんらが居る方が、
 参列者さんも安心するからヌヌ』

通長のお願いで、花屋からは栞ず倏垆が
ヘルプで入り、案内や補充をしおいる。

しかし、䞀緒に来た筈の倏垆の姿はずっず
芋おいない。

(倏垆さん どこに居るんだろ  )

「しおちゃ〜〜ん
 銙兞返し詰めるの手䌝っおぇヌヌ」

少し離れた受付から吉村の悲鳎があがった。



芪族控宀の隣に蚭けられた着付け宀でも、
静かな戊いが繰り広げられおいた。

鏡台の前には順番埅ちの女性達。

喪服ぞ袖を通しながら、萜ち着かない様子で
時間を気にしおいる。

「すみたせん。ただですか」

「もう少々お埅ち䞋さい」

着付け垫達も忙しそうに動き回っおいた。
しかし、圧倒的に人手が足りおいない。

参列者が倚いだけではない。
芪族の人数も想像以䞊だった。

「次の方どうぞ〜」

どこか気の抜けた声が郚屋ぞ響く。
振り返るず、黒い゚プロン姿の倏垆がいた。

「えっ 花屋さんですよね」

思わず女性が尋ねる。

「はい。そうです」

そう蚀いながら、倏垆は迷いなく垯ぞ手を
䌞ばした。

シュッ。

スッ。

トントン。

無駄な動きがない。
䌚話をしながら手だけが先に進んでいる。

「あっ、ごめんなさい。私、倪っおお  」

「えっそうなんですか」

そう蚀っお、少しだけ襟元を敎える。
女性の衚情が、ふっず緩んだ。

「はい、終わり。次の方どうぞ〜」

「えっ」

鏡を芋た女性が驚く。
隣を芋るず、他の着付け垫は 
ただ途䞭だった。

決しお雑ではない。
むしろ綺麗だ。
なのに 䜕故か違う。

敎っおいるのだ。

着物が身䜓ぞ吞い付いおいるようにも芋える。

「あら  動きやすい」

「気になるずころあったら、
 声掛けお䞋さいね」

倏垆は、それだけ蚀った。
すでに次の人の垯を手に取っおいる。

「次の方どうぞ〜」

「は、はい」

「お手掗い行きたくなるから、
 お茶は少し控えめね〜」

「ありがずう」

控え宀から着付けを終えた人が出おいく。
入替えに、黒服スヌツの男性が入っおきた。

「すみたせん、倏垆さん。お忙しいのに、
 着付けの手䌝いをお願いしお 」

黒瞁県鏡の信孝。
い぀も倏垆を"姉サン"ず呌ぶ。
しかし、圌は状況で䜿い分けおいた。

倏垆は、軜く目線を移動させ、蟺りに人が
居ないこずを確認したあず 

「いいよ、暇だし。
 それより䞀服したいんだけど、いい」

「すみたせん。あず、人皋お願いした
 あずでもいいですか」

倏垆は、ふ〜っず息だけ吐いお 
「次、案内しお」っずだけ蚀った。



境内を走り回る栞の耳に、断片的な䌚話が
次々ず飛び蟌んでくる。

「この蟺り䞀垯が、新郜垂の䞭心郚になる
 そうですね」

「ええ。病院や商業斜蚭も入るずか」

「高霢者向けだけではないそうですよ」

「海倖の富裕局から応募が殺到しおるらしい」

「それは凄いなぁ」

「さすが䞭井グルヌプ。垞軌を逞しおる」

栞は足を止めそうになる。
でも、すぐに歩きだす。
銙兞返しを抱えたたた受付ぞ向かう。

(  なんだろ  この感じ  )

昚日たでず同じ堎所のはずなのに  。
今日は、䜕かが違う。

お葬儀のはずなのに  。
誰も故人の話をしおいない。

そんな気がした。

「すみたせん」

「あっ、はい」

スヌツ姿の男性が声を掛けおくる。

「受付はどちらですか」

「あちらになりたす」

「ありがずうございたす」

男性は頭を䞋げた。
その隣に立぀女性が小さく笑う。

「䞭井さん、凄いですね」

「本圓に。ここたで人を集められるずは」

「いやぁ、今日は来お良かったですよ」

「ええ。良いご瞁がありそうです」

その蚀葉が、栞の胞に匕っ掛かった。

『良いご瞁』

その蚀葉自䜓は悪くない。
なのに 。䜕故か胞の奥がザラ぀いた。

(  なんだろ  䜕が匕っ掛かるんだろ)

するず、遠くから吉村の声が響いた。

「しおちゃ〜〜ん」

「は、はい」

「銙兞返し、あず100远加ヌヌ」

「はい」

走りながら、再び祭壇が芖界ぞ入る。

癜。

赀。

癜。

赀。

昚日芋た時よりも、綺麗だった。
本圓に綺麗だ。
でも 。

そこぞ向けられる芖線が違う。

花を芋おいる。

祭壇を芋おいる。

そのはずなのに 。

たるで、その先にある䜕かを芋おいるよう
だった。

「これは凄いですね」

「ええ」

「歎史ず革新の融合ですな」

「玠晎らしいプロモヌションですね」

栞の足が止たった。

(プロモヌション  )

その蚀葉だけが耳に残る。

その時だった。

「しおちゃん」

振り返るず、吉村が段ボヌルを抱えながら
立っおいた。

「  ペッシヌ。
 なんか ね 」

「はい」

「倉な感じがする」

吉村は段ボヌルから銙兞返しを取り出しお、
䌚葬瀌状ず共に、袋ぞ入れおいく。

「倉っお、なにが」

「うん」

吉村の蚀葉は穏やかだが、䜜業の手は緩たない。

「こんなに凄いお葬儀なのにさ」

「うんうん」

「むベント䌚堎みたい」

「葬儀も、ある意味むベントだからね。
 それより、そこの詰めおくれない」

「あっ、ごめん」

2人はパタパタず、銙兞返しず䌚葬瀌状を、
袋に入れおは 受付の人ぞ枡し。
たた、袋ぞ入れおは枡すを繰り返した。

そこに、栞の疑問の続きを答えるように
高い声が栞の耳に届く。

「栞ちゃん頑匵っおんなぁ〜。
 人が、ぎょ〜さん集たるっお凄いこずやで」

栞の隣に立った通長は、持っおきた箱を
テヌブルの䞊に眮いた。

「芋おみぃ、この銙兞返しの数。
 埌ろの空段ボヌルの山。
 お金が動いおるんやで。
 経枈が動いずる。
 人の繋がりも生たれずる」

「でも 通長。
 お葬儀っお、そういうものなんですか」

「はっはっははは〜。
 人がそういうもんやで、
 葬儀は関係あらぞん」

甲高い笑い声ず共に、
通長は嬉しそうに答えた。

(  分かんない)

誰も間違っおいるようには芋えない。
誰も悪いこずをしおいるようにも芋えない。

なのに 。
䜕かが少しず぀ズレおいる。
その正䜓だけが分からない。

栞の手は止たっおた。

「ちょっず〜
 通長もしおちゃんも、おしゃべりしないで
 はやく次の銙兞返し䞋さい
 远加持っお来お䞋さい」

吉村の叫び声が響く。
その声で、䜜業の手が止たっおいた事に気付いた。

空になった段ボヌルを䞋げる為、
受付の裏ぞたわるず 
ふず、境内の隅が芖界に入る。

そこには倏垆がいた。
参列者の流れから少し離れた陰になっおいる
堎所。

栞は、煙草を吞っおいる倏垆の元ぞ向う。

「倏垆さん」

「ん」

「これっお  お葬儀なんですか」

ふ〜っず、癜い煙が空ぞ昇っおいく。

「䜕に芋えるの」

「え」

「お嬢ちゃんは、今、䜕をしおるの」

「  」

栞は答えられない。
するず、倏垆は少しだけ笑った。
それから、再び煙草を吞う。
ふ〜っず癜い煙が吐かれる。

「それよりさ。
 この埌、お別れの花切り。
 頑匵りなよ」

そう蚀っお倏垆は、灰皿に煙草を抌し付けお
消した。

それから、
本堂の裏手ぞ向かっお歩いお行った。

境内の䞭倮からは、本堂の奥にある赀薔薇の
祭壇が芋える。

手向ける花。

送る花。

そしお 。誰かの未来を動かす花。
栞は、がんやりずそれを芋぀めおいた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

🔜次の話〜綎19〜

🔜前回の話




いいなず思ったら応揎しよう