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おくり人〜栞〜綎19 『 亡き父ず嚘。祈りの先にあるもの  』

※本䜜品には、葬儀に関する描写が
  含たれおいたす。
  ご遺䜓、告別匏、䟛花など、
  死に関連する堎面が登堎したす。

※本䜜品は創䜜です。
  登堎する人物、団䜓、斜蚭、䌁業は
  すべお架空のものであり、
  実圚する人物、 団䜓、斜蚭、䌁業ずは
  䞀切関係ありたせん。

※本䜜品は、 
  毎週 火・朚・土 曎新予定です。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇
おくり人 〜栞〜
ç¶Ž19『 亡き父ず嚘。祈りの先にあるもの  』

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

慌ただしく動き続けおいた着付け宀も、少しず぀萜ち着きを取り戻しおいた。

「ありがずう、倏垆さん」

黒い喪服姿ぞ着替え終えた䞭井矎暹が、鏡越しに埮笑む。

「どこか、気になるずころはありたすか」

「倧䞈倫。ずおも動きやすいわ」

「そりゃ良かったです」

倏垆は、次の人が居ないこずを確認するず、ポケットを探るような仕草をしお 手を止めた。

そんな姿を芋お、䞭井矎暹がクスッず笑った。

「倏垆さんっお、䞍思議な人ね」

「お耒めの蚀葉ずしお、
 受け取らせおいただきたす」

「ふふ。もっず早くお䌚いしたかったわ」

「勿䜓ないお蚀葉です」

「ふふっ。本圓に玠敵」

そう蚀っお䞭井矎暹は立ち䞊がる。
倏垆は、口元こそ笑みを浮かべおいるが、目元は䞀切の衚情を䜜っおいない。

「倏垆さん。
 少しだけ、私に付き添っおいただけたす」

「この身なりだず、
 ご迷惑をおかけするず思いたす」

そう蚀っお、倏垆は身に付けいる゚プロンの
端を摘んでヒラヒラさせた。

「構わないわ」

2人は本堂ぞ向う。
本堂ぞ続く扉を開けた  
その瞬間からだった。

たるでスむッチが入ったように、䞭井矎暹の
空気が倉わる。

「䞭井さん、お久しぶりです」

「たぁ、田代先生。ご無沙汰しおおりたす。
 お元気そうで安心したした」

「ありがずうございたす」

「奥様もお倉わりなく」

「芚えおいお䞋さったんですか」

「もちろんです」

男性の衚情が緩んだ。
するず、すぐ隣から別の人物が声を掛ける。

「䞭井瀟長 いえ、䌚長」

「たぁ、遠方からありがずうございたす。
 先日、シンガポヌルぞ行かれたんです
 よね」

「ええ。芚えおらしたんですか」

「もちろんです。お身䜓、倧䞈倫でした」

「いやぁ、本圓に驚きたした」

䌚話が終わる。
するず次の人が来る。

「䞭井さん」

「先生、先日はありがずうございたした」

「こちらこそ」

「お嬢様、受隓でしたよね」

「そうなんです」

「応揎しおおりたすね」

誰に察しおも笑顔だった。
誰に察しおも距離が近い。
誰に察しおも蚀葉が自然だった。

無理をしおいるようには芋えない。
けれど 偶然にも芋えない。

党郚、芚えおいるのだ。

名前も。

家族も。

仕事も。

過去の䌚話も。

䞭井矎暹から、少し離れお埌ろに立぀倏垆は、その様子を眺めおいる。

「凄いですね」

「あぁ なかなかだね」

倏垆の傍に立った信孝の蚀葉に答えた。

本堂の至るずころでは、参列者同士の䌚話が広がっおいた。

「新郜垂の構想、楜しみですね」

「ええ」

「是非、お力添えさせお䞋さい」

「こちらこそ、ご䞀緒できたら嬉しいです」

そこに居るのは、喪䞻の嚘だった。
   そのはずだった。

しかし、今映し出されるやり取りは、故人の嚘ではない。

巚倧な未来を動かそうずしおいる、䞀人の代衚者。

倚分 ここに参列する倚くの人の目には、そう映っおいるのかもしれない。

「倏垆さん」

参列者ず話し終えた䞭井矎暹は、倏垆ず信孝の居る堎所ぞ近づいおきた。

「はい」

「今床、お食事でもどうかしら」

倏垆は、チラっず信孝ぞ芖線を移した。
その芖線を圌女は芋逃さない。

「黒柀さん、倏垆さんのスケゞュヌル調敎を
 頌めるかしら
 ふふっ。倏垆さんみたいな人が、
 私の近くに居おくれたら、
 ずおも心匷いわ」

そう蚀っお、䞭井矎暹は再び参列者達の茪の䞭ぞ入っおいった。

「なぁ、ノブ。
 圌女ず、どんな関係
 たぁ 聞かなくおも察し付くけど」

「お察しの通りですよ。
 かなりの契玄をいただきたした。
  で、来週あたりのスケゞュヌルでは
 劂䜕ですか」

「ふ〜。
 任せるよ それより、䞀服しに行こう」


ゎォ~~~ン。


やがお、本堂に読経が響き始めた。

䜏職の䜎く深い声が、䜕重にも重なりながら
広い空間ぞ広がっおいく。

参列者達は静かに目を閉じる。

手を合わせる人。

遺圱を芋぀める人。

俯いたたた動かない人。

赀薔薇の祭壇が、本堂の奥で埮かに芋える。

癜い蓮の暡様。
その奥に浮かび䞊がる故人の写真。
そしお、故人を囲むように広がる赀。

誰もが息を呑む矎しさだった。

やがお焌銙が始たる。

䞀人。
たた䞀人。
ゆっくりず前ぞ進み、銙を手向けおいく。

故人を偲んでいる。
その光景を、眺めおる栞には 
嘘が感じられなかった。

なのに 。

栞が立っおいる、最埌尟の垭では 
別の流れが生たれおいた。

「先日のお話ですが 」

「ぜひ、改めおお時間をいただければ」

「新郜垂の件、楜しみにしおおりたす」

「ありがずうございたす」

名刺が差し出される。
䌚釈が亀わされる。
人ず人が繋がっおいく。

䞍思議な光景だった。

誰も隒いでいる蚳じゃない。
誰も䞍謹慎なこずをしおいる蚳でもない。

(なんだろう  )

銙兞返しの入った袋を抱えながら、
栞はがんやりず、その光景を眺めおいた。

祈っおいる人がいる。
未来を話しおいる人がいる。
故人を送っおいる人がいる。
新しい繋がりを䜜っおいる人がいる。

党郚が同じ堎所で起きおいる。
しかし、間違っおいるようには芋えない。

でも 。
党郚が、お葬儀でもない気がした。

その時だった。

「歎史っお凄いですよね」

「ええ。だからこそ䟡倀になるんですよ」

誰かの蚀葉が耳に入る。
栞は思わず、遠くに芋える赀薔薇の祭壇ぞ
芖線を移す。

昚日たで 。
あれは、故人を送る花だった。
でも、今日は少し違っお芋える。

祈り。

䌝統。

栌匏。

歎史。

そしお未来。

たくさんの意味が重なり過ぎお、本圓は䜕を芋おいるのか 。
栞には、少し分からなくなっおいた。

そんな栞に暪から声が掛かった。
甲高い声だった。

「凄いやろ」

「通長 」

「この寺な、栌匏ずか嚁厳を保ったたた
 䜕癟幎もやっおきおたんやで」

(うっ  たた長い話が、はじたりそう)

栞の予感は圓たった。
通長は、ボリュヌムこそ絞っおいるが、話の密床は絞っおくれない。

「赀薔薇の祭壇なんおな、本来この寺では
 絶察ありえぞん出来事や。
 でも、実際こうしお出来おるやろ
 これな、むちゃくちゃ、
 ずんでもないこずなんやで。
 喪䞻が及がした圱響な、
 色んなもん曞き換えずる」

長い  。
耳を塞ぎたくなる。

しかし、"色んなもん曞き換えずる"ずいう蚀葉だけ、䜕故か栞には匕っ掛かった。

そんな栞を䜙所に、通長は話続ける 
だけど もう耳に入っおいなかった。

やがお 通長の話より先に読経が終わる。

本堂に流れおいた音が止たり、
䞀瞬だけ静寂が蚪れた。

「ここで、埡参列の皆様方ぞ喪䞻様より
 ご挚拶を賜りたす」

ナレヌションが終わるず 
䞭井矎暹が立ち䞊がる。

黒い喪服姿。

その姿は掟手ではない。
しかし、自然ず芖線を集めおいた。

本堂の䞭倮ぞ進み出る。
深く䞀瀌する。
そしお、ゆっくりず口を開いた。

「本日は、父の為に、これほど倚くの皆様に
 お集たりいただき 
 本圓にありがずうございたす」

静かな声だった。
けれど、本堂の隅々たで届く。

「父は、ずおも䞍噚甚な人でした」

少しだけ埮笑む。

「仕事人間で、家族より 
 仕事を優先するこずも倚くありたした」

栞は小さく頷く。
参列者の倚くも頷いおいる。

「でも  
 その背䞭から教わったこずがありたす」

䞭井矎暹は、スタンドに立おられた
マむクから䞀歩䞋がり、䞡手を倧きく
広げた。

「人は、䞀人では䜕も成し遂げられない
 ずいうこずです」

参列者は、䞭井の動きに集䞭する。
静かに耳を傟ける。
その雰囲気が、栞には感じられた。

「誰かず出䌚い、誰かに支えられ  
 誰かぞ受け継いでいく。
 父は、それを生涯をかけお実践した
 人でした」

蚀葉が綺麗だ。
でも 。
䜕故か、それだけではない。

栞は䞭井矎暹ぞ吞い寄せられおいくような 
自身の䞍思議な感芚を味わっおいた。

「だから私は 
 父の死を終わりにしたくありたせん」

本堂の空気が少しだけ倉わった気がした。

「悲しみずしお終わらせるのではなく、
 新しい始たりずしお繋いでいきたいのです」

䞭井矎暹の声は、柔らかく 
そしお染みるようだった。

「人が出䌚うこず 
 そしお、人が繋がるこず。 
 未来を䜜るこず。
 それが、父が遺したものだず、
 私は信じおいたす」

そう蚀っお、本堂を芋枡した。

政治家。

経営者。

文化人。

地域の人々。

檀家。

そしお、葬儀に携わるスタッフ。
栞は䜕故か䞭井矎暹ず目が合った気がした。

「今日、この堎所で生たれたご瞁が 
 十幎埌、二十幎埌、
 次の䞖代ぞ繋がっおいくこずを 
 願っおいたす。
 それが、父が生きた蚌になるず
 信じおいたす」

栞の胞が、少しだけザワ぀いた。

(  生きた蚌)

間違っおいない。
むしろ、凄いこずを蚀っおいる。

なのに 。

䜕かが少し違う気がする。
その正䜓だけが分からない。

「私達、䞭井グルヌプは、
 新しい郜垂づくりを進めおいたす」

䌚堎の空気が、再び動いた。

「誰かが安心しお老いおいける堎所。
 誰かが新しい人生を始められる堎所
 誰かが出䌚い、繋がり、生きおいける堎所
 そんな未来を䜜りたいず思っおいたす」

その蚀葉に、倚くの人が頷いおいる。

「父の死は、ずおも悲しい出来事です
 でも 悲しみだけでは、未来は動きたせん
 だから私は、この悲しみを 
 次の時代を動かす力ぞ倉えおいきたいず
 思っおいたす」

そう蚀っお、䞭井矎暹は埮笑んだ。

「どうか皆様。
 これからも、お力添えをよろしく
 お願いいたしたす」

深く腰を折る。
その姿は矎しかった。
誰も拍手はしない。

ここは葬儀の堎だからだ。

しかし 。その静寂の䞭に 
䞍思議な熱が生たれおいた。

栞は、がんやりず赀薔薇の祭壇を芋぀める。

(  凄い)

そう思った。
でも同時に 。

(  お葬儀っお  
 æœªæ¥ã®è©±ã‚’する堎所だったっけ  )

その疑問だけが  
胞の奥ぞ静かに残っおいた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

🔜次の話〜綎20〜

🔜前回の話


いいなず思ったら応揎しよう