
わたしのやりたいこと #1
人生を変えるには、一歩踏み出すこと。ってもう聞き飽きた。
その一歩が人生を崩してしまったらどうするの?
その一歩を踏み出すためには、どれくらいお金がいるの?
その一歩を踏み出していいよって周りは許してくれるの?
堅実な一歩じゃないと、踏み出すことすら許されないでしょ。
これらの文句全てを、目の前にいる夢を語る友人にそのまま話して目を覚まさせてあげたかったけど、アイスティーで流し込んで抑えてやった。
高校の同級生だった友人と半年ぶりに合い、ランチに来ていたミホは、食後のアイスティーをすぐに飲み切ってしまった。
「飲むのはやーい!喉乾いてたの?」とこちらの思惑など気にも留めていない様子の友人ユキコは、ホットキャラメルラテを飲む暇もなく喋り続け、ようやく話の途切れたところで、一口目を飲んだところだった。
店員さんに今度はカフェラテを注文し、話題をごっそり変えようかと思っていたのに、またユキコは一人で話し始めた。
「だからね、私、専門学校行こうと思うの。このまま年齢や環境を理由に諦めたくないなってやっと気づいたの」
お互い36歳。子供もいて、家事と育児と仕事の両立で自分のやりたいことなんて毎日後回しの日々を、同じように送っていたと思っていたのに、今更自分の好きなことをして何になるというのだろう。
「でもさ、今から勉強なんて大変でしょ?それに今までのキャリア経験を捨てて、別の仕事をするために学校に入るなんて、なんだかもったいなくない?」
「私もそう思ってたよ。でもそんなの長い目で見たらもったいないことはないし、なんなら挑戦せずにモヤモヤして毎日過ごしてる方がもったいなく思うよ」
「…旦那さんは何て言ってるの?」
「お前のやりたいことなら全部支えるって言ってくれたよ。子供も、ママ!学校行くの?私と同じ学校?ってテンション上がったりしててさ。小学校じゃないよー、大人の人がいくところだよーって何回説明したか!」
環境に恵まれてて、多分お金面も旦那さんが協力してくれるんだろうな。
私はやりたいことも特にないから、関係ないや。
関係ないのに。
何でずっとモヤモヤしてるんだろ。
もしかして、挑戦できる側のユキコに嫉妬してる?
(続く)