『サーシャ・フィアースから読む ③』ビヨンセはなぜ“サーシャ”を必要としなくなったのか― 分離から統合への変化
1.はじめに
前回まで、サーシャ・フィアースが「別人格」ではなく、緊張や不安を抱えながら表現するための状態切り替えだったことを見てきました。
では、なぜビヨンセは後に「サーシャを殺した」と語るようになったのでしょうか。
もしサーシャが成功のために必要な仕組みだったなら、なぜ手放す必要があったのでしょうか。
その答えを考える手がかりは、ビヨンセ自身の言葉にあります。
彼女は後に、成長したことで、それまで分けていた二つの自分を統合できるようになったと語っています。
では、その変化はどのように起きたのでしょうか。
第3回では、サーシャがどのように役割を変化させていったのかを見ていきます。
2.「サーシャを殺した」という言葉
ビヨンセが「サーシャを殺した」と語ったとき、多くの人は、別人格を消した、キャラクターを終わらせた、あるいは昔の自分を否定したというように受け取るかもしれません。
しかし、ビヨンセは「サーシャを殺した」とだけ語ったわけではありません。
もうサーシャは必要ないとしたうえで、成長したことで、それまで分けていた二つの自分を統合できるようになったと説明しています。
つまり、「サーシャを殺した」という強い言葉だけを切り取ると、少し違った意味に見えてきます。
サーシャは否定されたというより、以前とは違う形で捉えられるようになった、と考える方が本人の説明には近そうです。
例えば、最初は自転車に乗るための補助輪が必要でも、練習を重ねるうちに必要なくなることがあります。
補助輪が間違いだったわけではありません。それがあったからこそ、次の段階へ進めるようになります。
サーシャもまた、そのような存在だったと考えることができます。
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では、サーシャを必要としなくなったとき、ビヨンセの中では何が変わったのでしょうか。
ここからは、「サーシャを殺した」という言葉の先にあった変化を、『Lemonade』までたどりながら考えていきます。
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Beyoncéを、「強い女性」というイメージだけで終わらせないための考察シリーズ。 サーシャ・フィアース、『Lemonade』、映像表現…
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