見出し画像

『COWBOY CARTER』を読む③|なぜドリー・パートン、ウィリー・ネルソン、リンダ・マーテルの「声」が置かれているのか

⬇️前回の記事⬇️


1. はじめに――アルバムの途中で聞こえてくる「声」

前回は、カントリーの歴史をたどりながら、それを単純に「白人の音楽」とだけ説明することの難しさを見てきました。

では、その歴史を調べたビヨンセ(Beyoncé)は、『COWBOY CARTER』の中で何をしているのでしょうか。

アルバムを聴いていると、曲と曲のあいだに、ビヨンセ以外の声が聞こえてきます。

ドリー・パートン(Dolly Parton)。

ウィリー・ネルソン(Willie Nelson)。

そして、リンダ・マーテル(Linda Martell)。

3人ともカントリーと深い関わりを持つ人物ですが、『COWBOY CARTER』の中で同じように登場しているわけではありません。

ある人は自分の代表曲につながる場所で話し、ある人はラジオ放送のような口調で曲を紹介します。さらに、ジャンルという言葉そのものについて語る人もいます。

なぜ、この3人の「声」がアルバムに置かれているのでしょうか。

そして3人は、同じ役割を担っているのでしょうか。

今回はまず、それぞれの声がどこで聞こえ、何を話しているのかを確認するところから始めます。


2.まず、3人はどこで声を聞かせているのか

まずは、3人が『COWBOY CARTER』のどこに登場するのかを見てみましょう。

※ここでは、27曲の配信版の曲順を基準にしています。

ウィリー・ネルソンの名前が最初に現れるのは、6曲目の「SMOKE HOUR ★ WILLIE NELSON」です。

その直後には「TEXAS HOLD ’EM」が続きます。

そして14曲目には、もう一度「SMOKE HOUR II」が登場し、その次が「JUST FOR FUN」です。

つまり、ウィリーの声は一度だけではありません。

ドリー・パートンは、9曲目の「DOLLY P」に登場します。

そのすぐ次が「JOLENE」。

さらに、25曲目の「TYRANT」にも追加ヴォーカルで参加しています。

リンダ・マーテルも一度だけではありません。

12曲目の「SPAGHETTII」に参加し、19曲目には彼女の名前を冠した「THE LINDA MARTELL SHOW」があります。

その直後に続くのが「YA YA」です。

こうして並べてみると、3人ともアルバムの途中で「声」として現れていますが、その置かれ方は少しずつ違います。

では、3人は実際に何を話しているのでしょうか。そして、それぞれの経歴を知ると、その言葉はどう聞こえるのでしょうか。ここからは、3人の歩みとアルバムでの発言を順番に見ていきます。



【ここからは有料です】

ここから先は

4,390字
この記事のみ ¥ 300

『COWBOY CARTER』をもっと深く楽しみたい方へ。 ビヨンセがこのアルバムを制作した背景、カントリー音楽の歴史、参加アーティストの役割、楽曲に込められた音楽史への参照、全27曲のつながりまで、全5回でじっくり読み解きます。 第①回は無料。第②〜⑤回は各300円ですが、マガジンなら有料4記事をまとめて800円でお読みいただけます。単品購入より400円お得です。

ビヨンセのアルバム『COWBOY CARTER』を、制作背景から音楽の歴史、楽曲の仕掛けまで、全5回で読み解くシリーズです。 なぜビヨン…

この記事が参加している募集

ありがとうございます!