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『COWBOY CARTER』を読む②|カントリーは本当に「白人の音楽」なのか

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1. はじめに

前回の記事では、ビヨンセ(Beyoncé)が『COWBOY CARTER』について残した、こんな言葉から始めました。

This ain’t a Country album. This is a “Beyoncé” album.

「これはカントリーアルバムじゃない。これは“Beyoncé”のアルバムです」

そして、もう一つ重要なのが、彼女がカントリー音楽の歴史を調べたと明かしていることです。

“But, because of that experience, I did a deeper dive into the history of Country music and studied our rich musical archive.”

「でも、その経験があったからこそ、私はカントリー音楽の歴史をさらに深く掘り下げ、私たちの豊かな音楽のアーカイブを学びました」

では、カントリー音楽の歴史を調べると、どのような事実が分かるのでしょうか。

カントリーと聞いて、私がまず思い浮かべるのは、カウボーイハットにブーツ、バンジョーやフィドル。そしてアメリカ南部の白人ミュージシャンたちです。

けれど、そのイメージのまま歴史をさかのぼっていくと、少しずつ話が合わなくなってきます。

西部には黒人のカウボーイがいました。現在ではカントリーを連想させるバンジョーにも、アフリカ系の音楽文化と深くつながる歴史があります。

では、カントリーは本当に「白人の音楽」なのでしょうか。

今回は『COWBOY CARTER』から少し離れて、カントリーが形づくられてきた歴史そのものをたどります。


2.カウボーイは白人だけではなかった

カントリー音楽の歴史へ入る前に、まず「カウボーイ」について少し見ておきます。

西部劇などで描かれてきたカウボーイには、白人男性のイメージが強くあります。けれど、19世紀後半のアメリカ西部では、黒人のカウボーイも牧畜労働を担っていました。

南北戦争と奴隷制廃止の後、テキサスなどでは、解放された黒人たちが牧場で働き、牛を移送する仕事にも携わっています。

もちろん、黒人のカウボーイがいたからといって、それだけでカントリー音楽のルーツを説明できるわけではありません。カウボーイは職業であり、カントリーは後に成立していく音楽のカテゴリーです。

ただ、私たちがよく知る「カウボーイ」のイメージだけでは、実際の西部の歴史をすべて見ることはできません。


黒人カウボーイの歴史や当時の写真については、こちらの記事でも紹介されています。 アフリカ系アメリカ人カウボーイ秘史


では、音楽の歴史はどうでしょうか。

その手がかりになるのが、現在ではカントリーを代表する楽器の一つとして知られるバンジョーです。


3.カントリーを象徴するバンジョーの歴史をたどる

バンジョーと聞くと、カントリーやブルーグラスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

ところが、その歴史をさかのぼると、西・中央アフリカの弦楽器文化へとつながっていきます。

現在のバンジョーが、そのままの形でアフリカからアメリカへ持ち込まれたわけではありません。西・中央アフリカにあったさまざまな撥弦楽器の伝統を背景に、奴隷化されたアフリカ人とその子孫が、カリブ海や北米でひょうたんなど現地の材料を使って楽器を作り、発展させていきました。

その痕跡は、300年以上前の記録にも残っています。

イギリスの医師・博物学者ハンス・スローン(Hans Sloane)は、1687年から1688年にジャマイカに滞在しました。その記録をまとめ、1707年に刊行した著作には、現地で見た楽器について次のような記述があります。

“they have several sorts of instruments in imitation of lutes, made of small gourds fitted with necks”

「彼らにはリュートに似せた数種類の楽器があり、小さなひょうたんにネックを付けて作られている」

スローンの著作には楽器の図も残されています。ただし、そこに描かれた楽器をすべて現在の「バンジョー」と呼べるわけではありません。現在の研究では、こうした史料も手がかりに、アフリカ系の弦楽器文化がカリブ海や北米でどのように変化していったのかが研究されています。

19世紀になると、バンジョーはブラックフェイス・ミンストレル・ショーにも取り入れられ、白人社会の商業的な娯楽へ広がっていきます。ミンストレル・ショーは、白人の演者が黒人を戯画化して演じる、人種差別的な表現を含んだ興行でした。

その後、バンジョーはストリングバンドやold-time、さらにブルーグラスなど、さまざまな音楽の中で演奏されていきます。

現在ではカントリーを連想させる楽器の一つですが、その歴史をたどると、一つの人種や一つのジャンルだけでは説明できません。

では、楽器だけではなく、実際に音楽を演奏していた人たちはどうだったのでしょうか。



【ここからは有料です】

ここからは、実際に音楽を演奏していた人々へ目を向けます。

黒人と白人の音楽文化はどのように交わり、それがなぜ後に別々のジャンルとして見えるようになったのでしょうか。録音に残された共演から、1920年代のレコード産業までたどっていきます。

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