『COWBOY CARTER』を読む④|「BLACKBIIRD」から「YA YA」へ
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1.はじめに――今度は、曲の中へ
前回は、『COWBOY CARTER』に登場するドリー・パートン、ウィリー・ネルソン、リンダ・マーテルの3人の声をたどりました。
なかでも気になったのが、リンダ・マーテルの言葉です。彼女は「THE LINDA MARTELL SHOW」で、次に始まる「YA YA」を、さまざまなジャンルにまたがる曲として紹介しています。
では、実際に「YA YA」の中には、どのような音楽が取り込まれているのでしょうか。
『COWBOY CARTER』には、ビートルズの「Blackbird」を歌い直した「BLACKBIIRD」も収録されています。ほかにも、ドリー・パートンの「Jolene」を歌った「JOLENE」や、チャック・ベリーの楽曲と関係する「OH LOUISIANA」があります。
いずれも過去の楽曲とつながっていますが、その取り入れ方は同じではありません。
今回は「BLACKBIIRD」「JOLENE」「YA YA」「OH LOUISIANA」の4曲を取り上げ、過去の音楽がどのように使われているのかを調べます。
原曲がいつ、誰によって作られたのか。そして、ビヨンセはその音楽を自分の作品にどのように取り込んだのか。
公式クレジットと原曲の歴史を照らし合わせながら、今度は曲そのものを調べていきます。
2.過去の曲を使うとは、どういうことなのか
過去の曲を新しい作品に取り入れるといっても、その方法はいくつかあります。『COWBOY CARTER』の公式クレジットを読むと、同じように昔の曲を使っているように聞こえても、実際には異なる方法が用いられていることがわかります。
まず、よく知られているのが「カバー」です。すでに発表された曲を、別の歌手や演奏者が新たに歌ったり演奏したりすることを指します。ビヨンセ版の「JOLENE」は、ドリー・パートンの原曲に新しい歌詞を加えたカバーです。
一方、「サンプル」は、過去に録音された音そのものを新しい作品に取り込む方法です。「BLACKBIIRD」には、ビートルズが演奏した「Blackbird」のサンプルが使われています。ビヨンセたちの新しい歌声に加えて、原曲の録音も含まれているのです。
さらに、公式クレジットには「抜粋(excerpt)」や「補間(interpolation)」という言葉も登場します。
抜粋は、既存の作品から一部分を取り出すこと。「YA YA」には、ナンシー・シナトラが歌った「These Boots Are Made for Walkin’」の録音からの抜粋が含まれています。
それに対して補間は、既存曲の旋律や歌詞などを、新たに演奏したり歌ったりして取り込む方法です。「YA YA」では、ビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」が補間としてクレジットされています。
つまり、原曲の録音を使うことと、原曲の一部を新たに演奏することは、同じではありません。また、一つの曲に複数の方法が使われることもあります。
では、こうした違いを踏まえて実際に曲を聴くと、何が見えてくるのでしょうか。
まずは、1968年にビートルズが発表した「Blackbird」からたどってみましょう。ポール・マッカートニーがこの曲を書いた背景と、2024年にビヨンセが発表した「BLACKBIIRD」。半世紀以上を隔てた二つの作品は、どのようにつながっているのでしょうか。
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ビヨンセのアルバム『COWBOY CARTER』を、制作背景から音楽の歴史、楽曲の仕掛けまで、全5回で読み解くシリーズです。 なぜビヨン…
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