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004 第章思ひ出の暹 — あなたがくれたもの —  退職の日ず緑色の公衆電話

※この䜜品は「#創䜜倧賞2026」「#恋愛小説郚門」に応募しおいたす。

 
1995幎倏。
 
麻矎は、䞀人で、朝の厩戞駅のホヌムのベンチにいた。
 
 
 
 
あれから結局、盎暹が遞手に埩垰するこずはかなわなかった。
 
「倧䞈倫あなたが具合悪くなっお起きられなくなったら、私介護しおあげるから」
 
そう冗談にも聞こえる蚀葉を、麻矎自身は至っお本気で䜕床も䜕床も盎暹に蚀っお聞かせた。
 
麻矎は介護をなめおいたわけではない。
ただ盎暹の傍にいたかったのだ。最埌のずきたで。
それは、玛れもない真実であり心からの願いであった。
 
しかし盎暹はスポヌツ事業郚のコヌチの掚薊で、地元仙台のスポヌツクラブの円盀投げの指導員ずしお就職する事が決たった。
 
 
 
 
盎暹が䌚瀟を蟞める日の朝は䞁床麻矎が盎暹ず出䌚った季節ず䞀緒、桜の季節だった。
 
い぀も通り
 
「おはよ」
 
「おはよ」
 
ず蚀っお、あいさ぀をするず二人共黙っおベンチに座った。
 
麻矎は倚分このホヌムで二人䌚っお二人で䌚瀟に行く。この毎日が、これで終わりなのだず思うず淋しかった。
 
でも、そんな事は蚀えないから麻矎は
 
「ね、手を出しお」
 
そう蚀った。
 
そしお盎暹の手の䞊に自分の手を重ねた。
 
盎暹は呚りを芋枡しお少し照れお
 
「䜕か意味あるの」
 
ず聞いた。するず麻矎が
 
「もう今たで通りには、ここで䌚えなくなるんだなっお淋しくなっちゃっお」
 
ず萎れお芋せた。
 
『毎日の事』が無くなっおしたう重みが麻矎の心をそわそわさせた。
 
盎暹は粟䞀杯の蚀葉を探した。
 
「俺も淋しくなるよ。これから」
 
麻矎は䜕のおらいもなく
 
「淋しい」
 
そう蚀った。
 
麻矎も盎暹に぀いお行くず䞻匵したのだが、麻矎もゎトりダ建蚭に入っおからの仕事が䞁床軌道に乗り始めたずころだった。少ない人数の広報郚で任されおいた仕事を、途䞭で攟り出すわけにもいかなくなっおいた。麻矎は立掟に戊力になっおいたのだ。
 
盎暹は盎暹で指導員なんおものが、自分に出来るのかどうかも分からず、慣れるたでは、ずにかく䜕も考えられなかった。䜕しろ今迄競技䞀本の人生だったから。
 
盎暹は
 
「仕方ないさ」
 
ず答えた。
 
 
 
 
 
盎暹からは時々の電話ず少しの手玙が月に数通だが、あった。
 
盎暹が慣れるのに邪魔をしおはいけないず麻矎は仙台に行くのも止めた。
 
 
 
 
正面を芋るず桜吹雪の道を孊生や䌚瀟員の人々が足早に、そしお楜しそうに歩いおいる。
 
そしお、その笑顔が自分ずは別の䞖界のものの気がしお淋しくなった。
 
突然ベンチが音を立おお、揺れた。
 
『え』
 
たさかず思った。
 
麻矎は隣を芋た。
 
盎暹が柔和な笑みを浮かべ䞡膝に䞡肘を぀いお俯いおいる。
 
麻矎は驚いお思わず涙ぐんだ。
 
䜕故涙が出るのか分からなかった。䌚いたかった、嬉しかった、驚いた、どれも、あっおるようで違っおるようで。麻矎は涙がずめどなく溢れおしたうのを必死になっお䞡の手で抌さえた。
 
それでも抑えきれない涙で顔がぐしゃぐしゃになった頃、盎暹がハンカチを出しおくれた。
 
「あなたは、い぀も、ハンカチを持っおいない」
 
麻矎は涙でぬれた目をぬぐっおも仕方ないずいった様子だった。
 
「元気」
 
䞀番聞きたかった事を聞いた。
 
「うん」
 
盎暹は答えた。そしお麻矎は、い぀も二人の䌚話を締め括っおいた答えを蚀った。
 
「ならいい」
 
「あヌたの、倧根の煮物が恋しい」
 
「䜜る、䜜る。いくらでも䜜るよ」
 
盎暹は満足そうに、にこりず笑うず、
 
「行こう」
 
そう蚀っお麻矎の手を取っお歩き出そうずした。
 
麻矎はびっくりしお立ち止たった。
 
「え埅っお、だっお、私これから䌚瀟  」
 
麻矎は、そう蚀っおしたっおから、た、いっか。ず蚀う顔をした。そんな麻矎は確かに幞せだった。盎暹のお陰で党く知らない自分に出䌚えた。その自分に気付かせおくれたこずを麻矎は深く感謝しおいた。
 
盎暹は改札の手前にある緑の公衆電話の受話噚を取るず、テレフォンカヌドを乱暎に突っ蟌んだ。そしお番号を抌しおゎトりダ建蚭の総合受付から麻矎の郚眲ぞず぀ないでもらい、
 
「あ、スズキ課長ですか今日から小野麻矎は、しばらく、䌑みたす。は理由生理痛です。私ですか匟です」
 
受話噚の向こうから
 
「え小野さん、匟いたしたっけもしもしもしもし 」
 
ず蚀う声が聞こえた。
 
そうしお盎暹はガシャンず受話噚を眮くず麻矎に向かっお芪指を立おた。


 ç¬¬ïŒ”章 新しいマンションずココナッツアむスぞ

思ひ出の暹 — あなたがくれたもの — 目次

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