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「緑の葉っぱが灯る夜」 第2章:霧雨の晩に①

    ある晩ばんのこと――。
    「すっかり遅おそくなっちゃった」
    買かい物ものをすませた裕子ゆうこは家路いえじを急いそいでいた。
    暖あたたかな風かぜが通とおりすぎるたびに、霧きりとも雨あめともつかない水煙みずけむりが、うっすらと縞模様しまもようを描えがきながら、淡あわくにじんだ街灯がいとうの前まえをいく筋すじも横切よこぎっている。
    何気なにげなく傘かさを横よこにして立たち止どまると、ほんの少すこし、まつ毛げに水滴すいてきがつくのを感かんじるだけで、街まちの灯ひを照てり返かえしているせいか雲くもがぼうっと明あかるい。
    細こまかな水みずの粒子りゅうしがやわらかく顔かおを包つつみ、裕子ゆうこは思おもわず目めを細ほそめた。
    ――が、すぐに大おおきく見開みひらいた。
    空中くうちゅうに何なにか浮うかんでいるのが見みえたのだ。
    (しゃぼん玉だま……?)
    小ちいさな光ひかりの玉ひかりが、パラシュートのようにゆらゆら揺ゆれながら降おりてきている。緑色みどりいろに透すきとおっていて中なかに何なにか入はいっているようだ。
    (人のようだけど、でも――)
    それにしては小ちいさすぎる。
    やがてそれは、すぐ真上まうえにまで降おりてきた。風船ふうせんほどの大おおきさだろうか、手てのひらにふわりと載のりそうだ。
    思おもわず手てを差さし出だし、二、三歩ぽほど歩あゆみ出でたが、
    「あ……」
    腕うでの長ながさがちょっと足たりなかった。
    緑色みどりいろの球体きゅうたいは風かぜに流ながされながら、ゆっくり移動いどうし、道路どうろわきの沈丁花じんちょうげのてっぺんにそっと止とまった。枝えだにひっかかったしゃぼん玉だまのように、今いまにもパチンとはじけそうだ。

     
     
    ◆ただ今、長編ファンタジー「緑の葉っぱが灯る夜」を連載中。各話末尾で【クイズ・妖怪そらみみ】はじめました。 ◆短編:自分の体験、人から聞いた話、曾祖母からの言い伝えなどを【音読つき】で紹介。 ◆楽曲:作詞、作曲、編曲、歌、打ち込み等をすべて一人で行うスタイルです。

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