
「緑の葉っぱが灯る夜」 第5章:シツボウ ③
大きな石の上に座って、アルグは心細げに周囲を見渡した。
弁当を広げていた人たちも、散策していた人たちも、そして鳩までもが、薄暗い雲と冷たい風に追われるように姿を消してしまった。
誰もいない梅林の中で彼の姿だけが、かすかにぼうっと光っている。
「おせえなあ……」
アルグはほうっと息をもらした。
そのとき、
「やあ杖はもう見つかったかい?」
いきなり頭上から声がした。驚いて顔を上げると、いつの間に来たのか、緑色のボールの中からレモテが見下ろしていた。
「なんだよ、いきなり人の頭の上に……」
そう言いかけてアルグの顔が硬直した。
「どうして知ってるんだ?」
「いやね。僕が神社で仕事をしていたらちょうどあの女の子が通りかかってそれで事情を聞いたんだ」
「また余計なことを――」
額に手をやるアルグにレモテが言った。
「そんなふうに言うのはよくないなあ。彼女はすごく心配してたんだよ。それにあそこで僕に出くわしたのも何かとてつもない意味があるはずなんだ。もしかすると君の杖を見つけることに関して僕が重要な役割を果たすかもしれないね」
「……」
アルグはぽかんと上を向いたまま、レモテの顔を眺めた。ちょうどそのとき、裕子が手を振りながら近づいてくるのが見えた。
「じゃあ、そういうことで頼むな」
「おそらく第一発見者は僕だろうけど万が一ということもあるからね」
そう言い残すと、アルグとレモテは別々の方角へと飛び去っていった。
三人で話し合った結果、裕子は梅林の中を、あとの二人はまわりの雑木林をそれぞれ探すことになった。
「もう、調子がいいんだから」
姿が見えなくなると、裕子はぶつぶつ言いながらも梅林の中を見渡した。
さっき上を飛んだときはあんなにのどかだったのに、雲が前よりも分厚く陽射しをさえぎっている。
(雨が降る前に見つかればいいんだけど……)
もし見つからなかったらどうするのだろう。やっぱり点火の仕事ができなくなるのだろうか。
(もしかすると、わたしのせいなのかな?)
緑の点火がきれいで、それが嬉しくて、楽しくて、ただそれだけだったのだが、つい深入りしてしまった。アルグもアルグで、いつしか仕事そのものより裕子に見せることを優先してしまっているように思える。彼らの世界のことはよくわからないけど、
(それって、やっぱりよくないんじゃ……)
裕子はすっかり考え込んでしまった。
梅林は相変わらずほのかな香りに包まれていた。もし目でとらえられるとしたら、紅や白に染まった空気が濃淡模様を描きながら、ゆるゆると漂っていることだろう。しかし、それを裂くように冷たく湿った風が、入り込んできている。
「いっけない、探さなきゃ」
裕子は急いで地面に目を向けた。が、
(……?)
ふと前方に気配を感じ、ゆっくりと顔を上げた。
(あれは……)
ほんの数メートル先だった。ピンク色に光る透明な球体が浮かんでいる。そして、中にいるのは――。
裕子は前かがみの姿勢のまま、じい~っと目を凝らした。
【クイズ・妖怪そらみみ】
問4)英単語を並べて音読したら妖怪の名前になりました。なんて聞こえる? ⇩ ⇩ ⇩
問3の答え:まくらがえし
使った単語: mac lugger acey
※lugger:小型帆船 acey:《俗》超すごい